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オーディオ彷徨録~JBL4331AからALTEC620A~

今までのオーディオの改良や音楽の遍歴に、今後の改善も紹介。いい音に繋がる方法を色々模索したことや、好きな音楽を紹介する。

スタンダード・コルトレーン

2017-10-22 11:16:25 | ジャズ
 今回は、昔良く聴いていたが、最近また嵌っている、”スタンダード・コルトレーン”です。”アイル・ゲット・バイ”が今最高に気に入っています。これの浮遊感が堪りませんね。

 ■1)”スタンダード・コルトレーン”について
 これは、何と言っても、2曲目の”アイル・ゲット・バイ”が最高に良いです。テーマを奏するトレーンの少しの郷愁と未来への希望が見え隠れして何ともいえない、カンファタブルさを聴く者に感じさせます。ここでの、ウィルバー・ハーデンも秀逸です。この人、誰?と言う感じですが、トレーンは、この同い年のホーンプレイヤーと気が合ったようで、ハーディン名義の4枚のリーダー・アルバム(サヴォイ)の内2枚で共演しています。尚、トレーンをアップした1/28のトレーンのところで紹介したアルバム”スター・ダスト”の1、3曲と同じセッションになります。フィ二アスで言えば、丁度”ア・ワールド・オブ・ピアノ”のB面と同一セッションが、”ザ・グレート・ジャズ・ピアノ”になりますので、同じ関係です。ジャケットは、

 精悍な顔のトレーンですね。裏は、
 
 時々、プレスティッジが修行時代、飛翔期のアトランティック、完成~新たな挑戦期のインパルス時代とレーベル毎に分類されますが、私は、プレスティッジ時代のトレーンが一番好きです。ハードバップに収まりきらず、シーツ・オブ・サウンドに邁進している過程がまた良いんです。録音は、’58年ですが、’58年は、ハードバップの最高潮の年ですね。このアルバムには音楽をやっていることの美味しさ…トレーンたちがやっていることの幸福感…が漲っている。

 録音日:’58年7月11日
 パーソネル:トレーン (TS)
       ウィルバー・ハーデン (FLH,TP)
       レッド・ガーランド (P)
       ポール・チェンバース (B)
       ジミー・コブ (DS)   

 ■3)ウィルバー・ハーデンについて
 この人について、少しネットで調べてみました。”サックス・創意工夫・ジャズ・下学上達”というブログから引用・加筆させて頂きます。
 ”トランペットとフリューゲルホーン奏者Wilbur Harden ウィルバー・ハーデンは1924年12月31日、アラバマ州バーミンガム生まれで1969年に35歳で亡くなっています。 アート・ファーマーを思わせるやわらかく暖かい音色と端正なタンギングで淡々とフレーズを紡ぎだす、すばらしい演奏です。 マイルス・デイビスなどが受けたと同じように、1947年に31歳で亡くなったトランペット奏者 フレディー・ウェブスター(マイルスより2歳年上のマイルスの兄貴分で友人) の影響を受けているようです。マルチ奏者 ユセフ・ラティーフ、 サックス奏者 ジョン・コルトレーン、トロンボーン奏者 カーティス・フラーなどと演奏活動を行っていましたが精神的な病を抱えていたらしく録音を行った期間としては1957年から60年のわずか3年間しかないようです。 サヴォイにアルバム7枚(リーダーとして4枚、サイドマンとして3枚) プレスティッジにアルバム3枚(すべてサイドマンとして)の合計アルバム10枚分の録音しか残していません。代表作は唯一のワン・ホーン録音で同名ミュージカルを題材にしたアルバム"The King And I 王様と私"です。よく知られた曲としては"Shall We Dance?"や"Hello, Young Lovers"などが収録されています。ハーデン特有の端正で美しく、暖かいトランペットの音色を堪能できるすばらしいアルバムです。”
 ”HOUSE OF JAZZ”というブログで、『ジャズ・ウェイ・アウト』というアルバムの紹介ページからも一部借用させて頂きます。
 ”66年の某日、精神病院からサヴォイ宛に手紙を出していることが確認されています。主な内容は「ギャラの支払いについて」、そして「カムバックの準備完了。録音されたし」というものでした。しかしハーデンは再びレコーディングすることなく、70年代の到来を迎える前に亡くなったとききます。
 『ジャズ・ウェイ・アウト』というアルバムは、ハーデンが音楽家生活で唯一輝いた1年であったろう58年に吹き込まれた作品。彼はロータリー式のラッパを愛用していたので(通常、ジャズで使われるのはヴァルヴ式)、ここでもそれを吹いているのでしょう。モッサリした音、訥々としたプレイは、聴きようによっては初期のマイルス・デイヴィス的にも感じられます。が、やはり、当盤の真の主役は、急成長をとげていたコルトレーンやトミー・フラナガンといえるでしょう。”

 ■4))”スタンダード・コルトレーン”の各曲について
 アマゾンのレビューを見ていたら、このアルバムの人気曲は、1番が“invitation”次に“spring is here”のようですが、私は“アイル・ゲット・バイ”が断トツ好きです。次は、バラードの”Don't Take Your Love from Me ”です。勿論他の曲も好きです。

 1.Don't Take Your Love from Me 9:13 ヘンリー・ネモ作
 先ずは、トレーンのしなやかなスローテーマですが、スローテンポの曲のアドリブは実は大変難しいのですが、彼は色々と試行錯誤のトライを繰り返し様々なフレーズと言うか音を工夫して挟み後半はシーツにトライしいるのが判る。その労作を聴いて、続くは、ハーデンのペット、これが良い味を出しているんです。マイルス風にも聴こえますが、言葉少なく、又不足も無く、この頃のハードバップの良いバラードという感じで落ち着いてプレイしています。その次は、ガーランド。美しいフレーズをゆっくり情感を込めて爪弾く。この頃のガーランドは、何をプレイしても乗っています。トレーンに戻って、テーマに戻ってしっとりとエンディング。この頃のプレイは、既にロリンズと対等になっています。

 2.I'll Get By (As Long As I Have You) 8:09 フレッド・アーラード作
 これが、今最高に気に入っています。この浮遊感、何とも言えません。ミディアム・ファーストなのに、超速の例えば、”ロシアン・ララバイ”より躍動感を感じます。心がウキウキしてきます。そうだ、フィ二アスで云うと、”ア・ワールド・オブ・ピアノ”の”CABU”や、”ウィ・スリー”の”アワー・デライト”が、超速の”ダホード”より浮遊感を感じるのに当たる。次に来るのは、ハーデンのペットで、ここでも最高のプレイ。マイルスのコピーとかも云われるが、決してそのようなことはなく、違った良さを持っている。ジャストタイミングのブローに加え、ジャストの間を持っている。マイルスはディジー、バード、セロニアスから間の大切さを学んだということですが、ハーデンは誰からなんですかね。次は、ガーランド。彼の躍動感のある曲でのジャンピング・タッチは心に響く。トレーンに戻って、テーマをお浚いするが、このテーマの心地よさも群を抜いている。トレーンに感謝!エンディングでのハーデンのペットの奥ゆかしい絡みも秀逸。

 3.Spring Is Here 6:53 リチャード・ロジャース作
 ミディアム・ファーストのユニゾンのテーマから。トレーンのテーマは、ここでも快調。シーツ・オブ・サウンドの香りもプンプンする。ここでは、トレーンは、本当に軽くブローすることを念頭に置いているように軽い。次は、ハーデンのペット。このソロもマイルス張りの緊張感を持った、間を有効に使ったブリリアントなプレイ。何と云うか、静の”ケニー・ドーハム”を奥底にひそめ、輝きは、”リー・モーガン”に貰って、全体の構成は、”マイルス”に倣う、そんな感じを受ける。次に来るガーランドは、絶好調。何も云うことはない。スイング感の神がピアノをプレイしている。但し、マイルスのグループではヘロインと遅刻でマイルスを困らせたようだが。続くチェンバースもお約束の快速ウォーキング・ベースのソロを聴かせてくれる。最後は、ユニゾンのテーマでストレートに終わる。

 4.Invitation 10:20  ブロニスラウ・ケイパー作
 スローなバラードのイントロから、うねるような、”夜の都会の孤独”を漂わせたムードのテーマをしっとりとトレーンがプレイして始まる。過去の追憶と、少しの後悔を伴って重厚なテーマを吹いていく。孤独への招待なんですかね。ムードで云うとマリガンの”ナイト・ライツ”というところですが、ナイト・ライツより重厚な闇を抱いている。このテーマをじっくり奏する。ここでのアドリブ・パターンの多様さも聴き所。トレーンが人間離れした練習を自らに課しているということが如実に判るプレイ。また、シーツの香りもします。お次は、ハーデンのペット。ここでも短いが心に響いてくる。又、直ぐトレーンに戻って重厚なテーマをアドリブしていく。トレーンのアドリブを堪能するにはベストと思う。エンディングでのハーデンの控え目の絡みがここでも素晴らしい。

 ■5.You Tube
 今は、単曲では、全曲上がっています。
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”ソロ・ピアノ” ~フィニアス・ニューボーン・Jr~

2017-10-19 12:35:17 | ジャズ
 今回は、前回のリストで16番目にあたる’74年録音のフィニアスの”ソロ・ピアノ”についてです。このLPは、’75年頃購入したのですが、曲によっては、後半に力強いストロークで激しい感情をぶつけています。この頃のフィニアスのどこか不安定な精神状態ー今までの受けてきたストレスに押しつぶされそうな自分の鬱積した感情の吐露”叫び”ーが聴こえます。アート・パッパーで言えば、晩年のロード・ゲームの”エヴりシング・ハプン・トゥー・ミー”の叫びに何か通づるものを感じるのは当方だけでしょうか?

 ■1)フィニアスのテクニック及びその変化について  ~以降は、’75年当時のこのLPの藤井英一氏のライナー・ノーツから一部引用しています。~
 フィニアスのピアノに初めて接する人は、その特異なテクニックに驚くに違いない。”ジャズ・ピアニストの中で指が最もよく動くピアニストを上げよ”と言われたら、迷わずテイタムとフィニアスと答える。例えば”ヒア・イズ・フィニアス”を聴いてみると、彼は普通の4ビートを普通に演奏するにはテクニックが余ってしまって、もてあましていると言うか、困っていると言って良いのか、とにかく面白い。例えて言うならば、リストでもプロコイエフでも完璧に弾き熟せるピアニストが小学生のアンサンブルに加わって戸惑っているような風である。このテクニックが最も冴えているのは、”ヒア・イズ・フィニアス”である。右手のフレーズは、チャーリー・パーカー、バド・パウエル直系であり、パウエルの曲”セリア”1曲だけを聴いても、その驚嘆すべきテクニックとフレーズ作りを知るには十分である。但し、この”セリア”もコンテンポラリー盤に入っている方になると大分感じが違ってきている。倍テンポの”乗り”になることも多いがフィニアスの場合はそれが”エキサイティング”ということには繋がらないで寧ろ軽いものになってしまう。テイタムやフィニアスのよな名人になると、”必死になって一生懸命演奏する部分”と”人に感銘を与える部分”とは一致しない。これは他の楽器にも言える事で、我々にジャズの演奏の姿勢・鑑賞態度についての再検討を無言の内に要求しているように思われる。テイタムが古今を通じての最高のジャズ・ピアニストであることは間違いないが、テイタムは、4ビートのリズムをベースとドラムスに任せきって演奏した訳ではないので、そこにもフィニアスのテクニックに対する尽きない興味がわくのである。左手はもちろんテンス・バスなどのリズム・サポートをしない訳ではないが、それよりも注目すべきは、カウンター・ポイント的な要素や修飾的なフレーズを自由に織り交ぜ、しかもそれを曲の流れやテンポを乱さずにやってのけていることである。ジャズ・ピアノでは、クラシックのフーガのように、左手と右手の均一性を要求されることはほとんどないので、鈍いタッチになり易いのだが、フィニアスの左手のタッチは素晴らしいものである。これは余興だがフィニアスは、ハンプトン・ホーズの曲”サーモン”を左手だけで演奏している。また、左手と右手をオクターブまたは2オクターブ離して弾く奏法も多くロックト・ハンドのテクニックも”バルバドス”にあるように非常に優れている。コードの感覚や、ブルースのフィーリングは、テイタムによく似ている。模倣した部分もあるかもしれないが、それよりもこの2人の間には、本来共通した何かが存在するように思われる。
 パウエルの弾き方が、何度か変化したように、フィニアスのスタイルも病気療養の関係もあってか、少しずつ変わっているようである。レコードの数はあまり多くは無いが、一作毎にあの異常なまでのデリカシーは薄められ、がっしりと力強くなって、ビートに対する”乗り”も”謙譲の美徳”的な感じから”自己主張”的なものに変わってきている。そのような変化が良いのか悪いのかは判らない。

 当方も変化については感じています。冒頭に書いたような状況になってきているとこのLPでは思ったのですが、それが藤井さんが書いている上のことと同じなのか違うのかは判りません。

 ■2)”ソロ・ピアノ” について
 これも少し藤井さんのライナー・ノーツから引用します。
 ”このアルバムは、フィニアスがソロで演奏した貴重な作品である。バップ以降のピアニストでもソロの曲を吹き込んでいる人達も多い。パウエルの”オーバー・ザ・レインボー”や”イット・クッド・ハプン・トゥー・ユー”に始まって、ジョージ・シアリング、セロニアス・モンク、オスカー・ピーターソン、キース・ジャレット、ローランド・ハナ、スタンリー・カウエル、など、それぞれ個性のあるプレイをしているが、フィニアスのソロ・アルバムが加わることは大変嬉しいことである。”
 確かに、貴重なソロアルバムで、これを聴くと何故だか涙ぐみます。
 ジャケットは、下記ですが、スフインクスになったフィニアスがピアノに乗っています。少し違和感が・・・

 裏は、


 ■3)”ソロ・ピアノ” の各曲について
 ライナー・ノーツの藤井さんの解説を前半に、私の感想を後半に載せます。フィニアスの曲は全部好きですが、私のお気に入りは、このLPでは、A-4. ”ニカの夢” と、B-2. ”真夜中の太陽は沈まず” の2曲です。

 A-1. トゥゲザー・アゲイン
 ”速いテンポでブギウギのようなイントロで始まる。CLEFレコードの”バド・パウエル・ムーズ”を思わせるようなヴァイタリティ溢れた演奏。短いがこれだけでも完全に魅了されてしまう。”

 アップテンポのイントロより快調に飛ばすフィニアス。流れるようなフレーズを強いタッチで弾いていく。アドリブは、止め処なく。最後は一瞬テンポを落として、また戻った後華麗に終わる。

 A-2. セレナード・イン・ブルー/ホエア・イズ・ザ・ラヴ 恋人は何処に
 ”セレナードの方は自由なテンポで、パウエル風のサウンドで聴かせる。”ホエア・イズ・ザ・ラヴ”は、フィニアスのお気に入りの曲らしい。シンコペーションの多いリズムで楽しげに弾いている。”
 
 非常に強いタッチでミディアム・テンポのテーマから始まる。後半は、メロディアスなテーマを楽しそうにプレイしている。エンディングはキラキラと色を輝かせながら流れるように。

 A-3. ローレインズ・ウォーク/ウィロー・ウィープ・フォー・ミー
 ”左手と右手をオクターブ違いで弾く奏法で速いテンポで弾きまくる。”ウイロー”の方はテイタムのウイローのコード・ワークとそっくりなところがあり、影響が顕著のように思われる。”

 アップテンポのイントロより。コミカルなテーマを多彩なアドリブで崩していく。”ウイロー”の方はスローテンポに変わり、アドリブに入ると自由奔放に弾きまくる。キラキラのフレーズも力強いストロークも随所に交えて。どこで何が来るのか判らないようなアドリブライン。何かに衝かれているような、あがいているような姿を見る。これを聴くと何かを叫んでいるように感じる。

 A-4. ニカズ・ドリーム ニカの夢 
 ”ホレス・シルバー”の曲であるが、素晴らしい演奏である。このような曲を、ベースもドラムスもなしで演奏する狂気はパウエルに一脈通じるものがある。”

 テンポの良いイントロより。速いグレーズを弾きつつ多彩なアドリブもこなす。この流れるようなアドリブラインはベース無しでもスインギー。エンディングは、3回のバーンという得意技の前触の後に、バーンで終わる。

 A-5. グッドバイ/フラミンゴ
 ”2曲とも、左手のアルペジオにのせて自由なテンポで弾いている。フラミンゴで、黒鍵のグリッサンドをうまく使っているところは面白い。グッドバイに戻った後に終わっている。”

 スローなバラード。イントロより物悲しいフレーズを弾く。玉を転がすようなパッセージを交えて、時に力強く、時にナイーブな切ないメロディを織り交ぜて。何かを悔いるような、別れを惜しむような。でもタッチは次第に強くなっていく。

 A-6. リヴ・アンド・ラヴ/ワン・フォー・ホレス
 ”これも、バラードのメドレーである。アルペジオが美しい。”

 リリカルなイントロより。ゴージャスな流れるようなアドリブを暫し楽しむ。流暢なメロディの中に時々強いストロークを交えて色を重ねていく。夢見るもののファンタジー。

 A-7. バウンシング・ウイズ・バッド
 ”サヴォイ・レコードやブルーノート・レコードのセッションでファッツ・ナバロやパウエルが演奏していた懐かしい曲。激しく入る左手のアクセントが全体を引き締めている。”

 打って変わって、速いパッセージで流れるような指捌き・超絶テクニックを魅せる。最後は力強いタッチでクライマックスを見せて終わる、ゴージャスなエンディング。

 B-1. メンフィス・ブルース
 フィニアスのブルース・フィーリングは聴くものの心を捉えずにはおかない。伝統的なジャズの良さを感じさせる演奏である。”

 ミディアム・テンポのイントロより。ブルース・フィーリングたっぷりのブルースを楽しく弾いている。ご機嫌なムードを漂わせてブルージーに余韻も漂わせて終わる。

 B-2. ザ・ミッドナイト・サン・ウイル・ネバー・セット 真夜中の太陽は沈まず
 ”クインシー・ジョーンズが書いた美しいバラード。超スローの自由なテンポでたっぷりと演奏している。”

 これが一番お気に入り。イントロは何かを回顧しているような哀愁を帯びたもの。超スローなテンポでこのバラードを美しく華麗に弾くフィニアス。以前の”アイ・ラブ・ア・ピアノ”でもこの曲を弾いているが、ここではよりスローでピアノ本来の音の美しさを際立たせてエモーショナルにまた色を混ぜて。ここまでスローになると、凡庸なピアニストでは間延びするところだが、どっこい、フィニアスは、きっちり間を埋めている。彼のこれまでの来し方を振り返り感慨深く感じているフィニアスを感じる。年齢を経て初めて出る味わいがある。”アイ・ラブ・ア・ピアノ”の同曲と勝るとも劣らない名演である。これを聴いていると思わず涙が出てくる。ペッパーの”エヴりシング・ハプン・トゥー・ミー”の叫びに何か通づるものを感じる。

 B-3. アウト・オブ・ジス・ワールド 浮世はなれて
 ”ハロルド・アーレン、ジョニー・マーサーのコンビによる不思議な魅力を持った小品で、フィニアスは、左手のリズム・パターンに超絶技巧の一端を窺わせている。”

 速いパッセージで始まる。自由自在なアドリブ・パターンを披露する。スインギーに流れるようなアドリブ・ラインを走っている。突然バーンでエンディング。

 B-4. ジャイアント・ステップス/エヴリシング・アイ・ハヴ・イズ・ユアーズ/ホエア・イズ・ザ・ラヴ (リプリーズ)
 ”フィニアスのレパートリーは、非常に興味あるものである。以前は、オーネット・コールマンの”ザ・ブレッシング”を録音しているが、ここではコルトレーンの演奏で知られる”ジャイアント・ステップス”を弾いている。バラード風に美しく演奏していて、気負ったところはない。”エヴリシング”も原曲の味を生かしていて美しい。”

 トレーンは、速いパッセージで走り過ぎるが、フィニアスはスローで内省的なバラードに仕上げている。”エヴリシング”もゆったりとした美しいメロディでアドリブも感傷的な装飾をきらめかせて美しい。”ホエア・イズ・”は少しアップテンポになって軽快に進むが、途中テンポダウンしてまた戻る。テンポチェンジを交えてアドリブは多彩に展開する。

 ■4)You Tube
 今の所は、A-4. ”ニカの夢” と、B-2. ”真夜中の太陽は沈まず” の2曲が上がっています。
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”ザ・グレート・ジャズ・ピアノ” ~フィニアス・ニューボーンJr~

2017-10-15 14:50:59 | ジャズ
 今回は、フィ二アスの最高作と思う”ア・ワールド・オブ・ピアノ”の続編である”ザ・グレート・ジャズ・ピアノ”についてお話します。これも大学生時代に散々聴きました。以下は’75年の本LPの小西啓一さんのライナーノーツを一部参照しました。

 ■1)フィ二アスと”ザ・グレート・ジャズ・ピアノ”について  これまでに大抵のことは記載していますので簡単に。フィ二アスは、アート・テイタムの流れを汲む希代のテクニシャンであると共に、”60年代を通じて彼と公平な意味で肩を並べることのできたジャズ・ピアニストは、そうざらにはいない”(レスター・ケーニッヒ、S/J誌’75年8月号)と迄言われる真の意味でピアニスティックな天才ピアニストである。デビュー作の”ヒア・イズ・フィ二アス”に聴かれる、NYに上がった当時の彼は、その驚異的なテクニックに任せて、一気呵成に弾きまくるきらいがあり、テクニックだけが浮き上がってしまい、いささかエモーションやエキスプレッションの面で欠けているところもあったが、’60年代に入り、コンテンポラリーに移籍してからは、ケーニッヒという名伯楽を得て、彼本来の持ち味である、両手をフルに用い見事にバランスの取れた卓越したプレイを展開するトゥー・ハンズ・ピアノ・スタイルに円熟味を窺がわせるエモーショナルな感情表現も加味し、大変に深みのある充実したプレイを繰り広げてくれた。
 本アルバムもコンテンポラリーの2作目としてケーニッヒのプロデュースで吹き込まれたもので、最初に書いたようにB面はフィ二アスの最高作と思う”ア・ワールド・オブ・ピアノ”のB面と同一セッションであるので、悪ろうはずがない名作である。LPリストを再掲載。全23リーダーアルバム中の12番目。


 ■2)”ザ・グレート・ジャズ・ピアノ”について 
 まずは、LPの表は、

 この絵は彼の特徴を捉えています。裏も、

 ’75年の暮れに買っていますので、2回生の時です。
 A面 ’62年 9月12日
 ルロイ・ヴィネガー (b) ミルト・ターナー(Ds)
 B面 ’61年 11月21日 (”ア・ワールド・オブ・ピアノ”のB面と同一セッション)
 サム・ジョーンズ  (b) ルイズ・ヘイズ (Ds)
 レスター・ケーニッヒがプロデュースするLPは録音が素晴らしいので定評があるが、ミキサーは、名手”ロイ・デュナン”で、フィ二アスの快適にバランスする、そして時にはブルージーに気だるく歌い上げる(B-2のように)微妙なタッチの一音一音をクリアーに捉えている。しかし私にはシンバルが少しきつ過ぎるように感じますし、彼の強烈なタッチにダイナミックレンジが追いついてない所も偶にあるように聴こえる。彼はよくテイタム・ピーターソンの流れを引いた驚異的なテクニシャンと言われるが、元々彼がアイドルとしていたのは、バド・パウエルであり、テイタムを知ったのはその後ということだ。それだけに、パウエルには、常に尊敬の念を持っており、A-1のセリアなどは、デビューLPとこのLPで2回も取り上げている。この2人は、精神を病むというその悲劇的な経歴において、どことなく似たところもある。同時代の多くのピアニストがパウエル派のピアニストとして成長していったのに対し、圧倒的なテクニックと音楽性を持つ彼は、テイタム等の一世代前の巨匠からダイレクトな影響を受け、そのスタイルを完成させたのだが、根底にはパウエルがあるといった側面も決して見落としてはいけない。

 ■3)”ザ・グレート・ジャズ・ピアノ”の各曲について
 私が気にいっているのは、バラード系では、A-4と、ブルースフィーリング溢れるB-2、アップテンポ系では、A-3,B-1,B-4です。フィ二アスのアルバムの最後は軽快な曲を持ってくることが多く、”ア・ワールド・オブ・ピアノ”のCABU、”ウィ・スリー”のタッズ・デライト、このLPのFour共にウキウキするタッチで大のお気に入りです。
 小西啓一さんの解説を前半に、私の感想をその後に載せます。

 A-1. セリア (バド・パウエルのオリジナル)
 ”デビューLPでは、早いパッセージをバリバリ弾きまくる若さと覇気があり本作品では余裕のある態度で、リラックスした好フレーズを綴っているといった具合に、夫々違ったアプローチで特色を出しており、どちらも言いがたい良さがある。”
 快活なテーマからスタート。最初からご機嫌にスイングする。アドリブも玉を転がすように軽快に進む。フィ二アスの好調さが判るような弾むプレイ。無限にアドリブの種が湧いてくる。

 A-2. ジス・ヒア (ファンキー・ジャズ全盛期に一世を風靡した夭折のピアニスト”ボビー・ティモンズ”(’35-’74)の”モーニン”と並ぶ代表作)
 ”ミルト・ターナーの切れの良いシンバルワーク、ヴィネガーのステディーなウオーキング・ベースにサポートされ、彼は力強くテクニカルに、斬新なファンキーの香り漂うフレーズを紡いでくれる。”
 弾むようなミディアムテンポのファンキーなイントロから。アドリブに入ると縦横無尽に弾きまくる。バラエティーの多さは数知れず。単純なテーマを見事に料理している。最後はお約束のバーンと思いきや、またバーンと2回用意している。

 A-3. ドミンゴ (ジャズ・メッセンジャーズでの活躍で有名な”ベニー・ゴルソン”のオリジナルになる佳曲。ティモンズやゴルソンの作品が並ぶあたりに、本作品の録音時が窺われて興味深い。)
 ”フィ二アスは、アップテンポに乗って、魅力的なフレーズを少しの淀みもなく、スムーズに滑らせて行き、少しもつっぱったところの無いナチュラルな感情表現に、彼の成熟振りをはっきりと聞き取ることが出来る。”
 特徴的なテーマから始まる。直ぐにアドリブに入るが、テーマを元に崩していく。そこからは、正にフィ二アスの真骨頂の湧いてくるようなメロディーのオンパレード。煌びやかなメロディーやスインギーなフレーズを随所に散りばめていく。最後はテーマを何回か繰り返ししめやかに終わる。

 A-4. プレリュード・トゥ・ア・キッス (エリントンと、彼の良き片腕”ビリー・ストレイホーン”の作った、有名なジャズ・スタンダード)
 ”彼は、エロール・ガーナー”を思わせる華麗なブロック・コード・ソロを展開し、一種独特のレイジーな雰囲気を盛り上げている。途中、シングル・トーンによる珠玉のソロをはさみ込み、再びコーダルなパターンで締めくくるあたりつぼを心得た心憎いまでの演出だ。
 ”スロー・テンポのイントロから、ゴージャスなバラードテーマが流れてくる。フィ二アスのバラードは本当にゴージャスな香りがする。途中から流れるような奏法が入ってくるが、またゴージャスなムードに戻って、華麗にエンディング。

 A-5. ウェル,ユー・ニードント (セロニアス・モンクの有名なオリジナル。)
 ”彼の対極に位置するように思える、この鬼才のナンバーを、自分なりの軽快なバウンズ・ナンバーに仕立てて、小気味良いメロディーラインを聞かせてくれている。スタイルは違えども、独自のものを有している偉大なピアニスト達には深い関心を払っている彼ならではの選曲だ。ヴィネガーのソロも地味ながら堅実で印象的なものである。”
 コミカルな調子のイントロより、テーマが流れてくる。アドリブに入ると、快調にミディアム・テンポで飛ばしていく。多彩なアドリブで、シンバルのリズムの中を泳ぐフィ二アス。自由自在なアドリブを披露。いかにも好調だ、と言うことをアピールしているよう。途中、ベース・ソロもスインギーに乗っている。最後は、ピアノのテーマに戻って、少し余韻を残してエンディング。

 B-1. シーム・フォー・ベイシー (フィ二アスのオリジナル)
 ”彼はお得意の速いパッセージや、コーダル・パターン等、多彩なテクニックを披瀝しており、サム・ジョーンズのダイナミックなソロも魅力的だ。全体にブルージーな味わいを見事に醸し出した作品で、曲の盛り上げや、纏め方にも感心させられる。”
 ミディアム・テンポのイントロより、ドラムのリードよろしくアドリブに入るとご機嫌にスイングするフィ二アス。アドリブも余裕綽綽。ベースとの4バースや、それがドラムスに代わったりのバリエーションも楽しくエンジョイ。ピアノに戻ってハッピーにエンディング。

 B-2. ニュー・ブルース (フィ二アスのオリジナル・ブルース・ナンバー)
 ”彼は、アーシーな感覚で、ゆったりとソウルフルに唄い上げており、テクニカルな面だけなく、エモーショナルな表現にも卓越した才を持っていることを印象づけてくれる。バックアップする2人のきめ細かいサポート振りも、聴き所となっている。”
 これと次のFourが一番のお気に入り。いかにもブルージーなイントロからブルース・フィーリングたっぷりのテーマが小技も随所に入って、心に染み入るバラードを聴かせてくれる。メンフィス仕込の本物のブルース・フィーリング。アドリブも、”エー、こう来るの?!”という所もあって楽しい。乗っているキラキラのメロディも鏤めて、この頃がフィ二アスの心の状態が安定していたんだろうと窺わせるプレイ。

 B-3. ウェイ・アウト・ウエスト (言わずと知れた、ソニー・ロリンズのオリジナル。レイ・ブラウンとシェリー・マンを従え、コンテンポラリーに吹き込まれた傑作”ウエイ・アウト・ウエスト”のタイトル・チューン)
 ”ロリンズらしい明るいユーモアを持ったテーマを、フィ二アスは軽やかな指さばきで、爽快に奏でている。彼の両手は、自由に変幻なラインを綴り、又そのラインが微妙に交差し、彼独自のユニークなジャズ世界を浮き彫りにしてくれる。彼の素質が良く出た好演だ。”
 ミディアムスローのイントロからコミカルなテーマが来る。スロー・テンポだが、きっちりスイングしている。又、ドラムのリズムとアクセントが良い味をだしている。その中をフィ二アスがジグザグに縫っていく。華麗に、又多彩なフレーズを繰り出す。全く聴くものを飽きさせない所は見事。

 B-4. フォア (マイルスのオリジナル)
 ”彼は、アップ・テンポで熱っぽく弾きまくっており、スケールの大きい風格のある表現は、アルバムのラストを飾るに相応しいものと言えよう。天来の才能にこうしたスケールを感じさせるようになったあたりに、このアルバムや”ア・ワールド・オブ・ピアノ”等、一連のコンテンポラリーの作品の魅力がありこの頃が彼の最も充実した時期であったことを、如実に物語っている。”
 アップ・テンポのイントロの後、アドリブに入ると、絶好調の色取り取りのアドリブの嵐になる。ここでも彼特有の止め処ないパターンが繰り出される。でもスインギーで流れるように。ドラムとの4バースもお約束ながら、アップ・テンポの曲には、スーツする。ドラムも頑張っているし、フィ二アスもそれに応戦。最後はテーマに戻って弾むリズムで鮮やかに、コミカルにエンディング。

 ■4)You Tube
 今は、フルアルバムで上がっています。
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”ハーレム・ブルース” ~フィ二アス・ニューボーンJr~

2017-09-26 22:53:59 | ジャズ
 今回は、前回の続きというか、同一セッションから後でアルバム化された”ハーレム・ブルース”についてお話します。これも学生時代、一時、嵌っていました。

 ■1)これが、日本で最初に発売された経緯
 これは、’75年の発売時に、本LPのライナーノーツを、コンテンポラリーレコードの社長のレスター・ケーニッヒ自身が書いていて、その中で説明している文章を引用します。
 ”この”ハーレム・ブルース”と題されたアルバムは、どの一曲もこれまで外に出したことのない、完全な未発表作品であり全世界に先駆けて、特に日本のジャズ・ファンのために発表を先行するレコードであるということだ。
 この未発表セッションを、私の倉庫から見つけ出してきてアルバム化したイキサツや録音当時の模様について、これから書くことの一部は私が先にスイングジャーナル誌に寄稿した文章と、重複せざるを得ないことを予めおことわりしておくが、私がアメリカのジャズ・ファン、いや世界中のジャズ・ファンを差し置いて、日本の皆さんに何にも先駆けて聴いていただきたいという理由はお世辞抜きに、日本のジャズ・ファンは世界一のジャズ・ファンだという事実を知っているからなのだ。日本に居る私の幾人かの友人、日本へ渡ったことのあるミュージシャン達から、口伝えにしか聞いてはいなくとも、私の制作したアルバムに対する反応を海の彼方で聞くしかなくとも、その熱心で、真剣な鑑賞ぶりは手に取るように判っている。
 そんな良質なジャズ・ファンに、まずこのアルバムを聴いて貰えるということは、プロデューサーである私にとっても、プレイヤーであるフィ二アス・ニューボーンJrにとっても、誠に喜ばしい、有意義なことと考えているのだ。”

 ケーニッヒの日本のジャズ・ファンに対する評価というか世界一とまで言ってくれる心に、大学時代 心の底から嬉しくなったのを思い出す。
 尚、日本側ではキングレコードの岡山ディレクターの尽力により、本アルバムが我が国で世界初で日の目をみることになったことを付記しておきます。

 ■2)”ハーレム・ブルース” が誕生した経緯とその選曲について (2つのアルバムの曲順・録音の様子・サイドメン人選等は昨日アップ分参照)
 これについても、ライナーノーツに、ケーニッヒが書いているのを端折って引用させて頂く。
 ”ハーレム・ブルースのセッションが行われたのは、’69年2月12日と13日の2日間で、場所は私のLAのスタジオ。サイドメンは、ベースのレイ・ブラウンとエルビン・ジョーンズのドラムスである。
 こう書くだけで、フィ二アスの熱心なファンなら、このセッションは、先に私が”プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥー・ラブ”(邦タイトル<ブラック・コーヒー>)として発売されたアルバムと同じセッションだと気がつくかもしれない。実に、両者は同じセッションなのだが、両者の間には一曲のダブりもない。このセッションを企画した時に、予め2、3枚のアルバムを作るつもりで、録音時間も十分にとり、曲数も多く採っているのだ。更に、最初からそのつもりなので、このセッションから、出来の良いものばかりを”プリーズ・センド・ミー・ー”に選んでしまって、残りはクズばかりという、所謂”残りテープ”ではない。この事は、このアルバムに一曲でも針を下ろしてみれば明らかになる筈である。”

 ■3)”ハーレム・ブルース”
 前回載せたリストで言うと、全23作の15番目の作品。表は、

 いいですね。SJゴールドディスクのシールも付いています。ついでに裏も、

 ”プリーズ・センド・ミー・ー”の表の写真のモノクロ版です。 ”プリーズ・センド・ミー・ー”は少し構えたところがあるが、”ハーレム・ブルース”は、アフター・アワーズ的な乗りの曲が多く、こちらの方が良く聴きます。

 ■4)”ハーレム・ブルース”の各曲
 残念ながら、各曲の紹介は、ライナーノーツにはありません。まあ、社長であるケーニッヒにそんなことをさせてはいけません。簡単に感想を記載します。

A-1.ハーレム・ブルース (フィ二アスのオリジナルですが、’58のビリー・グラマーのカントリーの代表作”GOTTA TRAVEL ON ”を元歌にしたアドリブ曲のように思います。)
 イントロから彼特有の力強いタッチでブギウギ風のテーマを弾く。いかにも、教会のゴスペル風の、天使にラブソング、に出て来るようなフィーリングを感じる。ゴツゴツだけど、ハッピー。きっと、フィ二アスも子供の頃は、ゴスペルの流れる教会へ行ったんだろうなと思わせる曲。和音のカッコ良さ、最後のバーンもお約束的だが、カッコいい。

A-2. スウィート・アンド・ラヴリー
 こういうバラードも、実は超絶テクだけではなく、彼は上手い。心に深く突き刺さるフレーズを重ねて聴くものに迫ってくる。色を重ねて、深い味わいを出す。エルビンのバックのブラシが小気味良く踊る。ドラムとポリリズムを対比させながら。

A-3. リトル・ガール・ブルー
 これと、B-2がお気に入り。ゆったりとしたゴージャスなバラード。華麗で繊細でセンシティブなアドリブ、リラックスした中にも余裕綽綽のフレーズを弾く。色んなカラーでキラキラ輝くアドリブの数々、ゆっくり、また、さりげなく。レイのベースが渋いです。超絶テクだけがフィ二アスではないと判るナンバー。

B-1. レイズ・アイディア (レイ・ブラウンのオリジナル)
 名手3人が渾然一体となったインタープレイ。アグレッシブなテーマをアドリブしていくフィ二アスに対して、バックも対等にバトルしていく。まさにインタープレイ。フィ二アスも楽しくて仕方がないという感じで乗っている。

B-2. ステラ・バイ・スターライト
 これが一番好きかな。ソロ・イントロの導入部から独特の崩し方、美しいだけではなく、力強さと絶妙の味がある。超絶のソロプレイ、この部分だけでも十分。途中、エルビンのドラム、レイのベースも、絶頂期の二人なので、入った瞬間に、ゾクッとする。また、解れる。フィ二アスのアドリブアイデアは多彩で、決めるところでのリズムセクションの寄り添い方も絶妙。

B-3. テンダリー
 珍しく、ベースの重厚なソロからスタート。非常にパワフルで、歌心溢れる長めのアドリブ。途中からフィ二アスが華麗なアドリブで加わり、曲はアグレッシブに変化する。重厚なレイのベースに支えられて、フィ二アスは自由に飛翔する。

B-4. クッキン・アット・ザ・コンチネンタル
 速いテーマでスタートする。エルビンが、シンバルを強調したドラムワークを見せ、レイは堅実にそれに応える。その中をフィ二アスが疾走する。

 ■5)You Tube
 今は、 A-2.とB-3.以外は、上がっています。

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プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥー・ラブ ~フィニアス・ニューボーンJr~

2017-09-25 22:13:10 | ジャズ
 今回は、フィニアス・ニューボーンJrの中後半の作品になります、”プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥー・ラブ”を紹介します。

 ■1)”プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥー・ラブ” のできる迄の状況
 これは、今まで何度も説明していますので、今回は簡単に記載します。
 フィニアスは、’56年にデビューLP”ヒア・イズ・フィニアス”を録音した後、RCAやルーレットにLPを残した。コンテンポラリーレコードの社長のレスター・ケーニッヒは、’61年にフィニアスに会い、彼のピアノが気に入って契約し、ハワード・マギーの2作にサイドメンとして起用した後、’61年10月に”ア・ワールド・オブ・ピアノ”を、コンテンポラリーの第一作として録音した。第二作は、’62年の”グレート・ジャズ・ピアノ”で第三作はザ・ニューボーン・タッチになる。
 彼は’64年にザ・ニューボーン・タッチを録音した以降精神病院への入退院を繰り返し、ケーニッヒとの友情はその後も続き、’69年にフィニアスが精神的にも立ち直ったのを見届け、’69年2月についにその頃は、幻のピアニストと思われていたフィニアスの久方ぶりのレコーディングを実現させ、本作を吹き込んだ。彼のアルバムのリストは、下記。全23作中、14番目。


 ■2)”プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥー・ラブ”のジャケット
 まず、LPの表は、

 精悍で凛々しい顔つきです。帯には、副題でーブラックコーヒーーが載っていますね。ケーニッヒ自身は、”ハーレム・ブルース”のライナーノーツで邦タイトル<ブラック・コーヒー>と書いています。裏もついでに

 レイと、エルビンも写っています。’77年に大学のレコードショップセブンで購入していますので4回生時代ですね。この頃フィニアスに夢中で集中的にフィニアスのLPを集めています。

 ■3)本作のレコーディングの状況 ~本作の野口久光氏のライナーノーツを参照し、加筆~
 吹込みが行われたのは、’59年2月12日13日の2日、LP記載に名エンジニア”ロイ・デュナン”の名は無く、何と社長のケーニッヒ自身がレコーディング・ディレクターを務めたようであるが、音質の良さ、トリオのバランスは、最新録音のものに少しも負けない素晴らしい音である。
 フィ二アスは、スタジオに入るや、自由に弾きまくり15曲がテープに収められた。内8曲が、本LP”プリーズ・センド・ミー・サムワン・ツー・ラブ”に収められ、残りの7曲は’75年になって日本向けに”ハーレム・ブルース”(SJゴールドディスク)としてLP化された。
 フィニアスのようなピアニストのLPには録音の良し悪しが非常に大切だが、彼の”コンテンポラリー”に吹き込んだ他のLP同様これは最上のモノといってよく、このLPの価値を一段と高めている。

 ■4)ケーニッヒの本LP吹き込み時の回想 ~ハーレム・ブルースのケーニッヒ自身のライナーノーツ('75年時点)を引用~
 ”録音日を2日用意した。
 バックに誰を使おうと考えたが、病み上がりの彼のことなので、彼の立場を十分に理解し、細心の注意と最高の技術で、彼に余計な負担をかけさせないですむようなプレイのできる人、こういう条件で、まずベースにはレイ・ブラウンを決めた。彼ならまず問題はない。当時でも、今でも最高のベーシストであり、どんなタイプのミージシャンのバックにも、最高のバッキングを果たすことの出来るプレイヤーだからだ。
 そして、ドラマーはと考えていたら、丁度その時にロスにエルビン・ジョーンズが来ているのを思い出した。何日か前に、エルビンにバディ・コレットのセッションに付き合ってくれないかと誘うと、きわめて好意的にOKの返事をくれたていたので急遽フィニアスのセッションにも加わってもらうことにした。
 この二人なら強力無比なリズム・コンビが出来上がるに違いない、こう思うと私は録音の当日が待ち遠しくてならなかった。
’69年の2月12日のAM11;30、録音は一切打ち合わせ無しに、きわめてスポンテーニアスに始められた。というより、フィニアスがスタジオに現れて、一方的にピアノを弾き始めたことからスタートした、という方が良いだろう。
 この日、スタジオに現れたフィニアスは、それまでの長い入院生活からやっと開放され、ずっと夢見続けていたピアノ(私のスタジオにあるのはスタンウェイの6フィートのコンサート用だ)を眼の前に見て、すっかり興奮してしまったのだ。もう彼の頭の中には、ピアノのことしかないようで次から次へと鍵盤の上に指を走らせる、これを、レイとエルビンがぴったりとフォローしてゆく、こんな風に始まった。
 初日のレコーディングは、2セッションで夕方の5時半まで、2日目は、1セッションで午前10時から、午後の1時まで、この間に我々は15曲のチューンを採り終えたのだが、そのオーダーは下記。
録音は終始フィニアスのペースで行われたのであるが、私に言わせればピアノに対して欲求不満に置かれていた、彼の頭の中の何者かが、このセッションで一気に爆発し、その思いのたけを全てピアノに叩き込んだ、そんな感じの凄じいプレイぶりだったと記憶している。これは、今回のアルバム化にあたって、マスターテープをあらためて聴いてみて、その感をよりいっそう深めたものだ。
 このレコーディングの後、フィニアスは再び彼の持病に陥ってしまい、思うような活躍ができずに今日に至っているが、状態の良いときに彼に会ったり、電話で話をするにつけ、一日も早く、あの華麗でスリルに富んだピアノ・プレイが、”完全に健康な状態”で聴くことのできる日を、私としても待ち焦がれているのが現状である。

 ■5)”プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥー・ラブ”の録音オーダー
 第一日 2月12日  AM11:30-PM5:30

○1.スイート・アンド・ラブリー
2.ステイ・オン・イット
3.ブラック・コーヒー
4.ヒーズ・ア・リアル・ゴーン・ガイ
○5.テンダリー
6.ラフ・ライディン
○7.クッキン・アット・ザ・コンチネンタル
8.ブレントウッド・ブルース
9.リトル・ナイルス
○10.ステラ・バイ・スターライト

第二日 2月13日  AM10:00-PM1:00

○11.レイズ・アイデア
12.プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥ・ラブ
○13.ハーレム・ブルース
14.カム・サムディ
○15.リトル・ガール・ブルー

○:ハーレム・ブルースに収録

プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥ・ラブは以下。
234689、12、14

 ■6)”プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥー・ラブ”の曲目
 本LPのライナー・ノーツの野口久光さんの解説を最初に””内に記載し、私の感想もその後に記載。

A-1. Please Send Me Someone To Love (パーシー・メイフィールドの’49年の作詞・作曲)
 ”曲は、32小節型式で書かれているが音列、メロディーにブルース的なところのある曲で、フィ二アスのプレイは、スロウ・バラード・テンポでブルース風に歌い上げている。クリアーな一音・一音の美しさが録音の良さと相まって遺憾なく生きている。華麗なテキニックが駆使されているのだが決して派手がましくなく、知的で渋い光を放っている。ベースとドラムスの控えめなサポートも申し分ない。”

 とにかく、有り余るテクを隠して、只管唄うフィ二アスを聴いてください。ブルースフィーリングたっぷりのバラードです。彼特有の力強いタッチが堪能できる。

A-2. Rough Ridin' (エラ・フィッツジェラルドとハンク・ジョーンズとビル・テニソンの合作のスインギーで明るい曲で、その時伴奏はレイ・ブラウンが指揮するオケで、ピアノがハンクだった)
 ”フィ二アスは、ミディアム・アップテンポでメロディックに歌い、ブロック・コードが多用される。ここでも驚異的なテクニックが駆使されているのだが、それがテクニックの誇示にならず、音楽的に昇華されており、軽快な小品とはいえ、気品を感じさせるのは流石である。”
 
 軽快なイントロより、繰り返しのテーマ・フレーズが楽しい。そこからのアドリブの入り方が素晴らしい。アイデアが止め処なく湧いてくる。とんでもないテクを持っているが、それを思わせないさらりとした表現が粋である。

A-3. Come Sunday (D・エリントンが、’43年カーネギー・ホール・コンサートで初演した大作戯曲”ブラック・ブラウン・アンド・ペイジ”の中で歌曲として歌われた一種の賛美歌で、後々歌曲としてよく歌われている。)
 ”フィ二アスは、まずエリントンの原曲に忠実に単独ソロで演奏、第二コーラスでベース、ドラムスを伴って美しいヴァリエーションを繰り広げる。全体にフィ二アスはエリントンへの敬意を込め、曲の持つムードを大切にしている。”

 イントロは、スローなセンチメンタルなテーマから。繊細で哀愁のあるアドリブを切切と弾く。ほぼソロでスタートしリズムが知らない内に入る。玉を転がすようなフレーズが美しい。バラードもフィ二アスは素晴らしい。心にしみます。エンディングはしめやかに。バックのシンバルワークが光る。

A-4. Brentwood Blues (フィ二アスのオリジナル・ブルースで6分を超える長い演奏)
 ”レイのベースとエルビンのベース?による控えめなイントロからフィ二アスのソロ・テーマとなりコードを強調したプレイで形をかえたヴァリエーションが繰り広げられる。中間にレイのベース・ソロを挟んで三者による力強いグルーヴィーなぷれいで演奏は更に盛り上がっていく。フィ二アスの演奏には構成力と気品、風格があり、この6分は全く長さを感じさせない。”

 この曲が一番お気に入り。レイのイントロから直ぐにピアノがついてくる。ブルースフィーリングに溢れたメロディがやってくる。途中、盛り上がるところでのエルビンのシンバルのサポートもいいし、レイは、渋いが重厚なリズムを刻む。これぞ、ブルース、身体が自然に揺れてくる。レイのソロも入ってくるが、チェンバースとは又違ったあっさりとしたソロ。ピアノに戻って、またキラキラプレイを決めて終わる。エルビンの纏わりが少しうざいが。

B-1. He's A Real Gone Guy (ルイジアナ州出身の女性黒人シンガー”ピアースト・ネリー・ラッチャー”が’47年に作詞作曲、自ら歌ってミリオン・セラーとなったノヴェルティ・ソング。ラッチャーがニューヨークのカフェ・ソサエティに出演した時の人気は大変なものだった)
 ”ラテン・フレイバーのエルビンのイントロからフィ二アスは原曲のメロディを残して軽快に歌い、通俗的な曲をいつの間にかジャズ・ナンバーにしてしまう。”

 フィ二アスは、本当に止め処ないアドリブが出てくる。また、速いフレーズをいとも簡単に弾きまくる。スイング感もバリ\バリ。しばしの、ドラムソロもあり、これがまた凄い。そりゃー、エルビンの絶頂期である。また、ピアノに戻ってテーマをやって力強いストロークを披露してエンド。

B-2. Black Coffee (ソニー・パーク(作曲)とフランシス・ウェブスター(作詞)が、’48年に合作した粋な小唄で、サラ・ボーンが”ミュージクラフト”に吹き込んで評判となり、続いて、エラや、ペギー・リーの吹き込みも評判になったお馴染みの曲)
 ”フィ二アスは、バラード・プレイの素材として取り上げ、これをスケールの大きい一つのピアノ曲のような演奏に仕上げている。Brentwood Bluesに次ぐ長い演奏で、6分を超えるが、このアルバム中、白眉の名演と言えよう。”

 この曲を聴くと、何故か中本マリの同曲を思い出します。少し気だるく、少し悲しい。フィ二アスは、ガンガーンとゴリゴリのスタート。スローなテーマがゴージャスに迫る。これは、ゴージャスの一言で〆よう。エンディングも凝ってます。

B-3. Little Niles (’55年に異色のピアニスト”ランディ・ウエストン”が書き、リバーサイドに吹き込み、アルバムタイトルとしたエキゾティックな旋律を持ったジャズ・ワルツ小曲で、ランディが愛児ナイルスに贈って書いたもの。)
 ”中近東の民族音楽的なそのメロディの美しさがフィ二アスによって、さらに印象的なものになっている。”

 シンバルとベースのイントロ。ピアノテーマが静かに入ってくる。リズムとピアノが渾然一体。エルビンのシンバルとドラムが効果的になっている。その中をフィ二アスのアドリブがジグザグに這っていく。時に煌びやかな色々を発し、時に幻想的になりながら、切ないアバンギャルドなメロディを綴る。最後のガーンもお約束だがカッコいい。

B-4. Stay On It (’47年にディジー・ガレスビーのビッグ・バンドが吹き込んでいるスインギーなバップナンバーで、作曲者は何とカウント・ベイシーと、タッド・ダメロンという珍しいコンビ。)
 ”スインギーなレイとエルビンのバック・ビートに乗ってフィ二アスは奔放なアドリブを展開している。”
 
 力強いピアノのイントロから、快活なテーマが始まる。アドリブに入ると実に楽しそう。エルビンのジャン・ジャンに乗って自由に弾きまくる。超絶テクの片鱗も少し出しつつ溢れ出るアイデアのアドリブが展開される。

 
 ■7)【バラード好きの私の感想】
 フィ二アスをはじめ、天才は、バラードでも力強い。ソニー・ロリンズのど太いブローでのバラード(*1)然り、コルトレーンの切れた強いトーンのバラード(*2)然り。

 (*1)サキソフォン・コロッサスの”恋を知らない貴方”や、ワークタイムの”ゼア・アー・サッチ・シングス”とか
 (*2)コルトレーン(1stアルバム)の”コートに菫を”や、ソウル・トレインの”アイ・ウォント・ツ-・トーク・アバウト・ユー”とか

 ■8)You Tube
 フル・アルバムで上がっています。
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