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オーディオ彷徨録~JBL4331AからALTEC620A~

今までのオーディオの改良や音楽の遍歴に、今後の改善も紹介。いい音に繋がる方法を色々模索したことや、好きな音楽を紹介する。

ラッシュ・ライフ ~ジョン・コルトレーン~

2017-10-28 18:23:08 | ジャズ
 前々回の中速の浮遊感のある”アイル・ゲット・バイ”、前回高速の疾走の”ラバー・カムバック・トゥー・ミー”ときたら、今度は、スロー・バラードと来るのが良いと思い、今回は、私の大好きな”ラッシュ・ライフ”が入っている同名のアルバムです。

 ■1)ラッシュライフと作者について
 これは、ジャズのスタンダード曲。作詞・曲:ビリー・ストレイホーン。原題《Lush Life》。1930年代の作品。ストレイホーンが18歳(か19歳)の時に作曲したと言われ、所属していたデューク・エリントン楽団のバージョンのほか、ナット・キング・コールやジョン・コルトレーンによるバージョンが知られる。歌詞の内容は、最後の所に凝縮されていますが、18歳でこの歌詞が書けるとは、早熟だったんですね。

「私は、どこかの小さな場末の酒場で、やけくそで飲んだくれの人生を送ろう。 同じように寂しい人生を送っている飲んだくれどもと一緒に、そこで酔いつぶれて朽(く)ち果てながら」

 好きな女に無視されて、やけくそになって酒におぼれる男の末路を「飲んだくれ人生」と表現されています。

 Lushには、豊富な、ぜいたくな、ぜいを凝らした、豪勢な、というリッチな意味と、酒びたり、酔っ払いのという正反対の負の意味があるが、どうもこの歌詞を見ると、後者のようですね。ストレイホーン自身もエリントンの影武者のような存在で、終生、名声を得られなかった。ナット・キング・コールが1949年にヒットさせた"ラッシュ・ライフ"には、そんな彼の行き場のない思いが感じられます。キングに電話で抗議したこともあるとか。しかし、一方ではビリーはエリントンの庇護の元、自由気ままな生活をエンジョイしていました。 兵役を免れ、偽装結婚をする必要もなく、ボーイフレンド(ゲイだったので)と豪華なアパート暮らし、高価な美術品を集め、創作活動に没頭出来たということから考えると、エリントンの庇護の下では、ラッシュライフの前者の意味、豪勢な生活もエンジョイした。しかし、最後は、52歳で食道がんで亡くなったということですので、最後は後者の意味での生活になったのかもしれませんね。彼が18歳の時に、両方の意味を込めて作曲したのかは判りませんが・・・

 私の好きなラッシュ・ライフは、本アルバムとフィ二アスの”ア・ワールド・オブ・ピアノ”の3曲目と、トレーン&ハートマンの甘い声が聴けるの4曲目とJUJUさんのDELICIOUSの1stDishの12曲目です。


 ■2)ラッシュ・ライフについて
 ジャケットは、

 憂いを含んだ顔をしています。過去のマイルスのグループの第一次在籍時は、後者のラッシュ・ライフだったなあ、何て思っていたかも。
 パーソネル:■John Coltrane(ts), Donald Byrd(tp-#4), Red Garland(p-#4,5), Earl May(b-#1~3), Paul Chambers(b-#4,5), Art Taylor(ds-#1~3), Louis Haynes(ds-#4), Albert Heath(ds-#5)
   録音日:■#5:1957/05/31(NJ), #1~3:1957/08/16(NJ), #4:1958/01/10(NJ)
 #1~#3は、Ts+B+Dsのピアノレス・トリオ。
 ⇒ロリンズも、ピアノレスを時々採っていました。マイルスもハービー・ハンコックに「3度と7度はバターノートだから弾くな」なんて言っていましたから、ホーン奏者はピアノに神経質になるんですかね。
 #4がTS+Tp+Pf+B+Dsのクインテット。
 #5がTS+Pf+B+Dsのカルテット。

 ■3)ラッシュ・ライフの各曲について
 ネットのブログを出すような通の方は、ピアノレスの3曲目までを高評価されているようですが、私は、ラッシュ・ライフが一番のお気に入りです。次の”I Hear A Rhapsody” も”アイル・ゲット・バイ”のような浮遊感と哀愁が合わさってお気に入りです。

 #1.Like Someone In Love (5:00)
 トレーンのスローなイントロよりテーマに入る。ここでは、原曲のメロディがほとんど判らない位デフォルメのきついアドリブである。愛する人を唄っている歌なので、トレーンはきっと当時の妻ナイーマのことを思って吹いているのでしょう。初リーダーアルバムのコートに菫を、では、ストレートなメロディに昔の恋人のことでも思って吹いていると思っているのですが。アドリブラインが、いつものストレートラインではなく、抑揚を抑えたアドリブになっていますが、私は原曲のメロディを元にしたストレートなアドリブをトレーンのバラードには最適と思っているのですが・・・・

 #2.I Love You (5:33)
 ドラムのイントロよりトレーンのイントロが来て、原曲の判るアドリブに入る。アドリブが入ると、トレーンのシーツが快調に展開される。アドリブの多彩さもこの頃のトレーンの充実振りを示している。1曲目のアドリブ手法とは異なり、こちらの方がトレーン本来のアドリブと思う。マイディアライフで昔聴いた渡辺貞夫さんのAsの同曲は、どちらかというとパーカー寄りのスピード感のあるアップテンポのアドリブでしたが、トレーンのこのアルバムでは、シーツに近い、音を短く刻んでいる。フェードアウト気味でエンディング。

#3.Trane’s Slo Blues (6:04)
 ベースのミディアム・テンポのイントロ後、只管トレーンのアドリブが続く。1曲目と同様の抑揚を抑えた訥々とした言葉少ないもの。その後のドラムソロも饒舌ではない、どちらかと言うとコントロールされたもの。そこから、またトレーンのソロに戻るがここでは、トレーン本来の縦横無尽なアドリブを展開する。テーマに戻って静かにエンディング。

 #4.Lush Life (13:56)
 ピアノのガーンというイントロと、トレーンの情感の篭ったイントロから始まるが、トレーンのこのソロは全く淀みのない。”神の啓示”を受けた半年後は、実に充実していたということか。1曲目とは様変わりして堂々とバラードを吹いている。もう、ロリンズの名バラード”恋を知らない貴方”に勝るとも劣らない。ここでのアドリブは原曲のメロディを上手く生かしたものである。こういうアドリブが好きです。次は、ガーランドの美しいソロ、これは秀逸。言葉は要らない。秀逸の一言。フィ二アスのラッシュ・ライフとはまた、違った趣を持つ。ガーランドの方が、リラックスした演奏で、ゴージャス系ではあるが、カクテル・ピアノにはなる寸前にとどまる。最後に出てくる、バードがまた良い。そのソロの最後でアドリブからテーマに戻るところの移り方が良い。そこからトレーンに代わって、バードとの掛け合いの時のバードのブリリアントさが何とも云えない。トレーンが畳み掛けて、バードがそれに返して2人の会話で終わる。

#5.I Hear A Rhapsody (5:59)
 これは、マウスピースの調子が悪かったのか、そういう音を狙っていたのか判りませんが、アドリブラインが素晴らしいのに音がくすんでいるのが残念。RVGのNJの自宅スタジオでの録音ですが、シンバルの音も少し歪んでいるので録音も何かミスっているような気がする。トレーンのミディアム・ファーストのイントロよりアドリブへ。このアドリブはお気に入り。キースで言えば、このエレジー感は、スタンダーズ・ライブの”オールド・カントリー”の哀感を漂わせながらも感情に溺れないクールな演奏を思い出します。その後は、ガーランドの哀愁に満ちたアドリブ。速めのジャンピング系というかキャットウォーク系のスインギーなアドリブを堪能し、トレーンに戻ってまた切ないアドリブの後、あっさりと終わる。このアドリブは、シーツも加えてもう少し長く聴きたかったのであるが・・・このあっさり終わる所に、聴衆を盛り上げて置いて、置き去りにする少し意地悪なテクニックが隠されている。

 ■4)You Tube
 今は、全曲上がっています。

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