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オーディオ彷徨録~JBL4331AからALTEC620A~

今までのオーディオの改良や音楽の遍歴に、今後の改善も紹介。いい音に繋がる方法を色々模索したことや、好きな音楽を紹介する。

セロニアス・モンク・アンド・ソニー・ロリンズ

2018-03-04 15:36:57 | ジャズ
今回は、私がジャズファンになるきっかけになったアルバム、”セロニアス・モンク・アンド・ソニー・ロリンズ”についてお話します。ロリンズは、’56年6月のサキソフォン・コロッサスのような名盤も良いのですが、少し若くて、神から降臨されてきたフレーズを無心でそのままに吹いていて、それが天衣無縫のプレイになっている、そんな若さと湧き出る泉のような創造性に溢れたこの時代のロリンズが一番好きです。

 ■1)”I Want to be Happy”との出会い
 大学生時代は、FM放送を垂れ流しに聞いていました。たまには、エアー・チェック(FM放送をテープデッキで録音することで、今では死語??)等をして。その夜もFM大阪を聴いていたのですが、ある曲を聴いた瞬間、僕が今までに聴いていたロックとは全く異質の”衝撃”を受けた。何と言うか心が開放される感覚で、”私の前には困った事なんか何も起きませんよ!”と奏者が語ってくる、そんな超リラックスした演奏でした。その曲こそ、ソニー・ロリンズの吹く”I Want to be Happy”でした。これがきっかけになって、僕はジャズの世界に入って行った。

 ■2)アスペクト・ィン・ジャズ S51.1.6 AM1時~ ソニーロリンズ特集の1回目(ロリンズは2回目まで)
 ”I Want to be Happy”を流していたのは、S51.1.6夜の”アスペクト・イン・ジャズ”という番組でした。”ソニー・ロリンズの思い出”というタイトルで去年にアップした時にも書いていたが、その番組は、油井正一という方が、パーソナリティをしていて、その軽妙洒脱なお喋りで僕をジャズの世界に誘って頂いた。その時すぐさま僕は、愛用のアカイのオープンリールのテープデッキで録音した。このデッキは、今でも再生できます。

この時に流れた曲は、全てロリンズで、以下。演奏時間の後のRは、多分レコードという意味と思われます。
 ①キャピトライジング (2’42”) RT CR80241
 ②ウエイル (3’12”) R同 N R8844
 ③スロー・ボート・トゥ・チャイナ (2’39”) R同 LPR88007
 ④”I Want to be Happy” (7’38”) R同LPJ70019
 ⑤エアジン (4’59”)
 ⑥ドキシー (4’54”) R同 LPR8865
 ⑦イッツ・オール・ライト・ウィズ・ミー (6’06”) R同 LPR97010
 ⑧テナー・マッドネス (12’19”) R同 LPR8880

 油井先生の話によると、サキソフォン・コロッサス録音当時のソニー・ロリンズのハードバップのアドリブは最高レベルに完成されていたので、ジャズのテナー吹きは、猫も杓子もソニー・ロリンズのマネをしていた、それほどロリンズのプレイは凄かったようです。このアルバムにここまで凄いプレイが残っているということは、当時のライブスポットに居たら、もっと凄いロリンズの超ご機嫌なプレイが聴けたはずです。’54年~56年のN.Y.のライブスポットに行けたら、と言うのが私の夢です。

 ■3)セロニアス・モンク・アンド・ソニー・ロリンズ (セロニアス・モンク名義のアルバム)
 ジャケットは、

 裏は、

 このアルバムについては、以下のURLで、私も当にその通りだなと感じる私より玄人的な感想をアップされていますので興味のある方は訪問下さい。
 http://naotatsu-muramoto.info/jazz.album/jazz.album2.html

 パーソネル, セロニアス・モンク(p) ソニー・ロリンズ(ts) ジュリアス・ワトキンス(frh) トミー・ポッター(b) パーシー・ヒース(b) アート・テイラー(ds) アート・ブレイキー(ds) ウィリー・ジョーンズ(ds).
 1953年11月13日の金曜日、ニューヨークの WOR スタジオ、1954年9月22日、10月25日、ニュージャージーにてルディ・ヴァン・ゲルダーが録音ということはハッケンサックの自宅スタジオ.

1. 今宵の君は 1954年10月25日
 イントロの入り方からカッコいい。原曲を大胆にデフォルメしている、その崩し方がカッコいい。この崩し方を、皆さん真似ようとしたしたのですが、やはりロリンズは別格でしたね。フレーズの随所にほとばしるユーモアのセンスも思わず顔が緩んでしまいます。このアドリブは、全部覚える位聴きました。もし私が、スコアが書けたら、全部写せる位に。でもこの頃のロリンズなら、次にこの曲をプレイしたら、また全く違ったデフォルメをして皆さんを喜ばしたと思います。バードのメロディを一部盗んでいるようなとこもありますが、ロリンズ節も既にできています。上記URLでは音色に深みがないと言っておられますが、確かに後年の太いブローというより少し軽めの音色ですが、これはこの曲にばっちりフィットしてハッピー感満載で私は好きです。”吹くのが楽しくってミスリードもなんのその”とロリンズの勢いを感じます。
 最近のヴォーカルでは、Claressa Monteiroのスローで歌詞を一言一言噛み締めるようにしっとりと唄っているのが好きですね。

2. アイ・ウォント・トゥ・ビー・ハッピー 1954年10月25日
 この曲もアドリブは全部覚えている位聴きました。イントロの2回の短いフレーズも少し変化を付けていてカッコいい。そこからは一気にロリンズ節が爆発する。もう泉が溢れて飛び散るようなアドリブの嵐が炸裂。この頃のロリンズのライブを聴けたらそれ以上の人生で喜びは無いと言い切れます。随所で見せる伸ばすブローとそれの最後にブレークするその間の絶妙感。アドリブの種類の多さもあって、しびれるというかあっけにとられるという感じです。ストップ&ゴーの間も抜群に決まっており、まさに自由自在、天衣無縫、何でも来い!って感じかなあ。また、この曲のモンクのピアノソロがモンクにしては、あの独特の不協和音をメロディに使っているスタイルが影を潜めて、割りとスインギーなソロを採っており、モンクファンならロリンズに合わせていて本来のモンクじゃない、というかもしれませんが、私はこのアドリブがお気に入りです。
 このセッションの残りの1曲”モア・ザン・ユー・ノウ”は、ロリンズ名義の『ムーヴィン’・アウト』に入っていますが、ここでもモンクはロリンズに合わせています。このバラードも”シルキン’サテン”と共に超お気に入り。この日(10/25)の3曲は奇跡の宝物。『ムーヴィン’・アウト』の’54年8/18のセッションと共に神が降臨しています。
 この曲と言えば、ロリンズもカッコいいですが、”ジ・アメイジング・バド・パウエル Vol.2”の3曲目もお気に入り。

3. ワーク 1954年9月22日
 ロリンズが吹いていないので省略。

4. ナッティ 1954年9月22日
 ロリンズが吹いていないので省略。

5. 13日の金曜日  1953年11月13日
 1曲目、2曲目に比べると、ジュリアス・ワトキンスのフリューゲル・ホーンのソロが今一だったして余り聴かないというか、圧倒的に1、2曲目を聴く事が多いですね。

 ■4)You Tube
 今は、単曲で全曲上がっています。
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”フィ二アス・レインボウ”

2018-02-21 18:36:19 | ジャズ
 今回は、フィ二アス・ニューボーンJr.がRCAに残した4作の内の珠玉の2作の内の、”フィ二アス・レインボウ”についてです。もう一つの方は”ファビュラス・フィ二アス”ですが既に紹介しました。名作の”ア・ワールド・オブ・ピアノ”や”ウィ・スリー”や、”ハーレム・ブルース”も勿論良いのですが、ピアニスティックでテクニシャンな若々しいフィ二アスが聴けてお若い頃の愛聴盤です。

 ■1)”フィ二アス・レインボウ”の頃のフィ二アス・ニューボーンJr
 英語版ウィッキペディアから纏めてみたもので見ますと、
 
 このアルバムは、デビューアルバム(56年5月)の次の2作目になります。56年10月録音なので、1作目から5ヵ月後の作品になります。3は、Dennis Farnonの編曲でストリングスとの共演も入った物、4は、ハロルド・アーレンが手掛けたミュージカル「ジャマイカ」の音楽に、 フィニアス・ニューボーンが挑戦したユニークな1枚。オケとも共演。

 ■2)”フィ二アス・レインボウ”のジャケットと共演者
 このLPも78年ごろに大学のレコードショップ”セブン”で手に入れたものです。ジャケットは、

 少しベタですが、この時代で真上からの写真というのはユニークではないかと思います。写っているのも真摯なフィ二アスです。
 パーソネル:フィ二アス・ニューボーンJr.(P)
       カルヴィン・ニューボーン   (G)
        実弟。兄弟は、度々共演している。ギタリストとしては、地味な存在だがアール・ハインズ等とも共演している。
       ジョージ・レオン・ジョイナー (B)
        フィ二アスと同郷の出身。ピアニストの母から音楽を習い、16歳の時にベース習得。その後ダンス・バンドを経て兵役となりここで軍楽隊でフィ二アスと顔を合わせている。多くの名盤に参加しているが、レッド・ガーランドの”オール・モーニング・ロング”やランディ・ウェストンの”リトル・ナイルス”がある。’64年よりアーマッド・ジャマル・トリオに参加し、ジャミル・ナッサーの名で活動する。’80年代レイ・ブライアント・トリオなどで演奏する。( '32.6.21 テネシー州メンフィス生'10.2.13没77歳)
       フィリー・ジョー・ジョーンズ (Ds)
 録音   :1956年10月 残念ながらモノラル録音

 ■3)”フィ二アス・レインボウ”の各曲
 10曲中4曲がバラードでソロピアノ。78年当時のLPの佐藤秀樹さんのライナーノーツを曲情報等で、少し参照しました。私のお気に入りは、疾走系では、A1、B5、バラード系では、A2、A4、B2、B4です。

A1.オーヴァータイム 3:42 フィ二アスのオリジナル
 カルテットでの演奏。パルシブで強いタッチのイントロを経て、アップテンポのテーマが来る。スインギーで軽快に驀進していく。この頃は乗っている。続くギターソロも乗りの良いアドリブ。また、ピアノに戻って得意の華麗なフレーズを披露してお終い。
 
A2.エンジェル・アイズ 4:18 マット・デニスの名作で、バラードでソロピアノ
 イントロからスローなテーマに入る。もの哀しいやるせない鬱積したテーマをフィ二アスは力強く弾く。有り余るテクをもて余しているのが随所に見え隠れする。スローな曲も飽きさせない。彼の好調を物語っているが、タッチが強すぎるような気も・・・ この曲は、山本剛のアルバム”ミスティ”のラストが一番好きですが。

A3.カム・トゥ・ベイビー・ドゥ 4:08 デューク・エリントン作
 ドラムスが抜けたトリオでの演奏。フィ二アスのスライド的な演奏が見られるが、彼がこれまでに受けた先輩達の影響が見られる。コミカルなイントロの後、テーマを転がす。タッチは強く、スインギーでファンキーなプレイをお楽しみ下さい。

A4.星へのきざはし 5:21 バラードでソロピアノ 1935年、「ポール・ホワイトマン楽団/Paul Whiteman Orchestra」の「パーク・アベニュー・ファンタジー/Park Avenue Fantasy」が原曲のスタンダード
 コミカルでトリッキーなイントロから。フィ二アスの重厚な左手のテクを生かしたプレイは荘厳で凛々しい。バラードにも特有の味を魅せるフィ二アスが聴ける。
 
A5.ランズ・エンド 5:20 ウエスト・コースとのテナー奏者ハロルド・ランドの曲
 ドラムスが抜けたトリオでの演奏。ユニークなメロディラインの歌わせ方と爽快なプレイが聴きもの。 軽快なテンポの繰り返しのイントロからテーマへ。アドリブに入ると自由自在に色々なフレーズを繰り出す。アイデアは無限で、力強いタッチ。天才と狂気を行き来している。ベースとの短い交換の後、鋭い一撃で終わる。

B1.クラリス 4:33 フィ二アスのオリジナル
 カルテットによる演奏。装飾的なキラキラのフレーズとダイナミックな展開はこの時期の彼の特色で、スインギーな中にピアニスティックな効果が生み出されている。パルシブなイントロの後、ストップ&ゴーのリズムのテーマが流れる。アドリブは、速いフレーズで流れるようなライン。フィ二アスが何かを語っているようなピアニスティックなメロディライン。この会話に応えるようなバックが、例えばギターとかあればもっと良くなるのだがそこが残念。

B2.シー 4:19 ジョージ・シアリングの作品、バラードでソロピアノ
 ここでも、バラードに対する卓越したフィ二アスの解釈が判る。メロディックなラインも鮮やかな美しさを魅せる。この頃の彼のバラードには、バックは邪魔だったのだろう。有り余るアドリブのアイデアの泉には驚嘆する。
 
B3.ティン・ティン・ディオ 4:18 ガレスビー楽団の名コンビ奏者チャノ・ポゾの有名なアフロ・ナンバー
 トリオによる演奏。短いイントロの後、テーマが来るが、ここでも力強いタッチでグイグイとアドリブを進める。装飾的なキラキラフレーズとダイナミックな変化する展開を随所に見ることが出来る。途中からのアップテンポのアドリブが聴きもの。

B4.ニューヨークの秋 4:00 ヴァーノン・デュークの代表的な作品、バラードでソロピアノ
 荘厳なイントロの後、ソロピアノが始まる。ソロピアノでここまで聴かせる人は稀である。饒舌にプレイしつつダイナミックな変化を付けたバラードを聴かせるのは難しい。一転テンポダウンしてブレーク気味に一呼吸置いてから華麗な彼独特の少しくどい感じのするエンディングが待っている。

B5.恋とは何でしょう 6:11 コール・ポーターのヒット作の1つ。
 ソロ・ピアノによる重厚な雰囲気を持った前半の展開から、後半一転し、リズムを伴ったカルテットによるスインギーな演奏が打ち出される。ダホードで見せたような高速フレージングで縦横無尽に疾走する。カルヴィンのギターも負けずに高速パッセージを駆け上がる。このアルバムのラストを飾るにふさわしい演奏である。

 ■4)You Tube
 A1、B1、B4は現在上がっています。
 
 
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ファビュラス・フィ二アス ~フィ二アス・ニューボーンJr~

2018-01-16 17:36:24 | ジャズ
 今回は、フィ二アス・ニューボーンJr.がRCAに残した4作の内の珠玉の2作の内の”ファビュラス・フィ二アス”についてです。もう一つの方は、”フィ二アス・レインボウ”です。ブルージーでファンキーな若々しいフィ二アスが聴けてお気に入り。

 ■1)ファビュラス の意味
 これは、「寓話的な、物語に出てきそうな」で、そこから「現実離れしているほどすばらしい」という意味になります。まさに現実離れしているほど素晴らしい演奏です。

 ■2)”ファビュラス・フィ二アス”の位置付け
 まず、いつものまとめを見てみましょう。以下は、岡崎正道さんの’78年頃のLPのライナーノーツを一部参照しました。

 これから判るように、5番目にあるのが、”ファビュラス・フィ二アス”で、’56年にNYでの”ヒア・イズ・フィ二アス”で華麗なデビューを飾ってから2年後で、デビュー時、オクターブユニゾンを含めた驚異的なテクニックでどちらかというとテクニシャンとして知られた。しかし2年後のこの作品では、テクニック偏重のようなものは薄れて、むしろテクニックを抑えたピアニスティックなプレイの中に優れた音楽性を発揮するようになった。もう一つ云うと、当時のジャズシーンが持っていたファンキーなフィーリングをフィ二アスも身に着けている。フィ二アスのプレィはあくまで優美な輝きを持っていて、決してオーバーファンクになることはないが、これも彼のプレイの小さな変化であると岡崎さんは書いているが、私はメンフィスに近いところの出身の彼は元々ファンキーさを生まれながらに持っていたと思う。それがこのアルバムを出す時に、ファンキーブームに影響されて自然に発露したのでしょう。

 ■3)”ファビュラス・フィ二アス”のアルバム
 LPのジャケットは、

 若いフィ二アスは、颯爽としています。ついでに裏も

 ’78年頃に大学のレコード・ショップ”セブン”で買ったもので、相当聴き込みました。
 パーソネル:フィ二アス・ニューボーンJrカルテット
      フィ二アス・ニューボーンJr(P)
      カルヴィン・ニューボーン  (G)フィ二アスの弟でギタリスト
      ジョージ・ジョイナー    (B)
      デンジル・ベスト      (Ds)伝説のブラッシュドラマー、彼の職人技が聴けます。
 1958年3/28、4/3 NYで録音。当時のRCAのクラシック作品でもお馴染みの" LIVING STEREO "で録音。ジャズアルバムでは異例。’58年とは思えない素晴らしい録音です。エンジニアは、Ray Hall。

 ■4)”ファビュラス・フィ二アス”の各曲
 私のお気に入りは、バラード系でA2、A3,ブルース系でB1,高速系でB2、ピアニスティック系でB3です。特に、A2、B3は、無伴奏ピアノソロが聴けて至幸の一瞬が到来します!
 
A1. Sugar Ray [Take 4] - フィ二アスのオリジナル
 私の持っているLPではどういう訳か、曲名がライナーノーツの解説も含め”スイート・ロレイン”になっているが、曲を聴いた限りでは、”シュガー・レイ”である。今販売中のCDではちゃんと”シュガー・レイ”となっている。この辺りの経緯は不明ですが、もしご存知の方居られましたら、お教えください。
 先ずは、フィ二アス兄弟のイントロからギターソロへ。これはスインギーでいかにも軽快、メンフィススタイルらしいゴツゴツだけどハッピーなフィーリング。硬質なトーンがいいですね。”ウィ・スリー”の同曲よりアフター・アワーズって感じ。そっからは、ピアノソロになるが、最初のシングルトーンから始めて後はコードを多用して盛り上がる。彼のファンキースピリットが私を楽しましてくれる。

A2. What's New? [Take 3] ボブ・ハガート、ソニー・バークによる’38年の作でスタンダードとなった。
 無伴奏ピアノソロ。イントロ後原曲のメロディを大きく崩さないアドリブでロマンティックなテーマが流れてくる。カクテルピアノに近いが、フィ二アスの音楽性というか、ジャズ・フィーリングがあるのでそうは聴こえない。甘美な世界にフィ二アスと遊ぶ気分にしてくれる。エンディングもゴージャス。

A3. Pamela [Take 4] フィ二アスのオリジナル
 ギターはお休み。マイナーキーの哀調を帯びた静かでブルージーなメロディを聴くと心が癒される。リラックスした中にも超絶テクをもつ余裕や遊び心がこの曲の表情を豊かにしている。フィ二アスの弾く1音1音が美しい。

A4. 45° Angle [Take 2] デンジル・ベストの作
 兄弟のユニゾンでミディアムテンポのスインギーなテーマが流れる。ソロはギターからスインギーに。ブレイクの後は、ピアノのソロ。ここでは、ジョイナーのベースが心地よい。フィ二アスを上手にバッキングしているいぶし銀のプレイ。フィ二アスのアドリブを聴いていると心がウキウキしてくる。

B1. No Moon at All [Take ] デイブ・マンとレッド・エヴァンスによる’49年の曲
 パルス的な2音の後、軽快なイントロでスタート。フィ二アスのシングルトーンのテーマからブリッジはカルヴィンが受け持っている。ソロは、ピアノ~ギターの順でリラックスしたプレイが聴ける。ギターはメンフィスの匂いのするスインギーなソロで、ピアノもスイング感バッチリのプレイ。エンディングも風変わり。

B2. I'll Remember April [Take 3] ドン・レイ、パトリシア・ジョンストンの詞にジーン・デポールが作曲した’49年の曲
 アップテンポのピアノイントロから。アップテンポの超絶テクは、フィ二アスの真骨頂である。爽快に疾走するフィ二アス。その後フリー・テンポになり、ミディアムテンポになってからカルヴィンが登場。しばらくピアノと併走するが、いつの間にかギター主導でスインギーなソロに。最後は、ピアノに戻って熱気を帯びたソロで終わる。

B3. Cherokee [Take 2] アメリカンインディアン・チェロキー族の踊りを描写風に作曲した、'39年のレイ・ノーブルの作
 無伴奏ピアノソロ。両手のユニゾンのダイナミックなプレイが聴きもの。スリリングでピアニスティックなフィ二アスのプレイはスインギーで素晴らしい。

B4. Back Home [Take 6] フィ二アスのオリジナル
 兄弟のユニゾンで奏でられるテーマは、フィ二アスのファンキーなオリジナル・ブルースである。先ずは、ピアノソロであるが、ギターのリズムが良い感じで絡む。その次は、ジョイナーの粘っこいベースソロもフィーチャーされている。カルヴィンのアーシーなソロを経て、フィ二アスの力強いタッチのご機嫌でファンキーなソロに戻ってお仕舞い。

 ■5)You Tube
 単曲ですが、全曲上がっています。1曲目はもちろん、”シュガー・レイ”となっています。


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JAZZ AT THE PLAZA Vol.1 マイルス・デイビス

2018-01-07 10:27:58 | ジャズ
 今回は、マイルスにとっては、ビル・エバンスをグループに招聘した1年間での僅か5枚の共演の4枚目であり、カインド・オブ・ブルーの手前半年であり、トレーンにとってはプレスティッジの最後のアルバム”スターダスト”の2ヵ月後というタイミングでコロンビア主催のパーティでの演奏を記録した貴重な1枚である”JAZZ AT THE PLAZA Vol.1”についてです。

 ■1)トレーンのプレスティッジ時代からの流れ
 これは、前にも挙げた以下のまとめで見たら、

 神の啓示をトレーンが受けた1年2ヶ月後で、プレスティジと決別した直後で、半年前には”マイルストーン”に参加しモードの洗礼を受け、半年後にはカインド・オブ・ブルーで”モードの完成”に参加したという凄い変動期に当たります。トレーンは既に”シーツ・オブ・サウンド”でガンガン飛ばしているのが爽快です。

 ■2)”JAZZ AT THE PLAZA Vol.1”について 以下、’97年3月21日の藤本史昭さんのライナーノーツを一部引用
 このアルバムは、’58年に米コロンビア・レコードが主催したジャズ・パーティの模様を記録したものです。パーティには、マイルスの他にエリントン・オーケストラ、ジミー・ラッシング、ビリー・ホリディ等が参加し、このマイルス以外のライブが、"Jazz at The Plaza vol.2"というアルバムになりました。アルバムとしてリリースする予定はなかった為ちゃんとしたレコーディングの用意もされておらず、マイクが急に遠ざかって音が小さくなったり録音状態は良くない。お祭りと言う気持ちもあったのだろう、収録の4曲は第一次クインテットの十八番ばっかりで、”モード奏法”の曲は取り上げられていませんがその萌芽が見られます。リリースされたのが1973年というから15年間オクラ入りになっていたようです。
ジャケットは、
裏もついでに

 カインド・オブ・ブルーのようにスタジオでのコンセプト・アルバムという感じではなく、”’58年秋のジャズクラブではこんな感じでマイルスのグループは演奏していたんだろうなあ…”というのが聴ける貴重なアルバムです。ライブで火がついたコルトレーンとキャノンボールのド迫力の演奏をお楽しみくださいってとこです。これを聴いていると、村上春樹さんと同様、私もこの時代のNYのヴィレッジ・ヴァンガード やベイズンストリート等のジャズ・クラブにタイムスリップして入ってみたいですね。

 ■3)JAZZ AT THE PLAZA Vol.1”の各曲
 この中で、私のお気に入りは、”マイ・ファニー・ヴァレンタイン”と”IF I War A Bell”です。いや、やっぱり、”オレオ”や”ノーチェイサー”のトレーンやキャノンボールも凄いですね。マイルスの例の指のカウントも何度も聴けてご機嫌な気分になります。

 パーソネル:マイルス・デイビス(Tp)
       トレーン&キャノンボール(Ts&As)
       ビル・エバンス(P)
       ポール・チェンバース(B)
       ジミー・コブ(Ds)
 1958年9月9日 NY プラザホテルでのライブ

1.Straight, No Chaser 11:02 (T.Monk 作)
  マイルスの指のカウントを合図に、トレーンのイントロのテーマがスタート。ソロはマイルス。これは乗っている。快演だ。”聖者が町に…”も引用している時は大概乗っている。時にハーフテンポのフレーズを織り交ぜ、曲線的に自由に空間をうねっていく。次はトレーン。シーツ全開でライブならではの長尺ソロで場面を転換。続くはキャノンボール。アーシーで変化に富んだソロを回す。これもマイルスに負けず劣らずスピーディーなアドリブラインで乗っている。峠を次々にクリアーしていくバイクレーサーって感じだ。次はエバンス。この曲では、リリカルさは横に仕舞って、トリスターノ流のストイックなプレイ。最後はお約束の、マイルスのテーマでお仕舞い。

2.My Funny Valentine 10:13 (L.Hart、R.Rogers 作)
 マイルスのクールさとエバンスのリリカルさが真っ向勝負した”カインド・オブ・ブルー”の前哨戦という感じ。サックスは邪魔だ、というマイルスが思ったのだろう、Ts&Asは居ない。互いに最高のプレイで対峙している。最初は、ミュートのシックでクールなソロ。ドゥエンデな世界へ連れて行く。後年のリンカーンホール版より荒削りだが叙情的。続くエバンスは、まさにリリカル。でも少し醒めているように私は感じる。続くチェンバースのピチカートソロは、珍しく唸り声を伴って重厚なメロディを奏でる。ミュートに戻って、安らぎのあるメロディの中チェンバースも寄り添い、最後はドラムフォローで粋に終わる。

3.If I Were A Bell 8:30 (F.Loesser 作)
 この曲ではキャノンボールはお休み。マイルスの指のカウントを合図に、エバンスをバックにミュートで快調にソロをとるが、マイクが急に遠くになって音が引っ込んだりするのが唯一残念。でもマイルスのアドリブがご機嫌でリズミカルにスイングし充実している。リラキシン’より進化している。次はトレーン。マイクの不安定さはあるが、広い音域を上に下に猛スピードで駆け巡り、シーツ炸裂である。乗っている。続くエバンスは、リリカルさを少し抑えてスインギーにプレイするが、エバンス節も随所に見せる。最後はミュートに戻ってトレーンが絡んでエンド。

4.Oleo 10:45 (Sonny Rollins 作)
 メンバーの個性的なソロがせめぎ合う。 ミュートのテーマより、トレーンが少し吹いた後、マイルスの指のカウントを合図にまたトレーンが少し吹いた後、ミュートソロが軽快にアイデア豊かに始まる。お次はトレーン。ここでもシーツ爆発のプレイ。高速フレーズも随所に散りばめ快走する。音符をどこまで細かく刻めるか挑戦している。次はアダレー。トレーンとは打って変わって変化球を交えたアーシーでアップテンポでスピーディーなプレイで私を楽しましてくれる。変化に富んだアドリブラインで飽きない。この頃の彼は、自然にアドリブが湧いてくる。次に来るのはエバンス。同年の"Everybody Digs Bill Evans" の同曲からのフレーズ引用もあってスインギーでシングルトーンでのラインのアドリブを聴かせてくれる。その後はチェンバースのソロ後、ミュートが割って入ってトレーンとエバンスの交換の後エンディング。

■4)You Tube
 フル・アルバムが上がっています。”If I Were A Bell ”から始まるバージョンです。その方がライブ通りの曲順と言われておりライブでの曲順は、上記Noで言うと、3.⇒4.⇒2.⇒1.となると思う。
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ラウンド・アバウト・ミッドナイト ~マイルス・デイビス~

2017-12-05 11:22:13 | ジャズ
 前々回、モードの通過点の”マイルストーンズ”で、前回は完成点といえる『カインド・オブ・ブルー』と来たので、今回は、始点・萌芽と思われる『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』の話です。これは感動の名盤で、死ぬほど聴きました。お気に入りと言うレベルを超してます。私は、ソニー・ロリンズ・ファンですが、もし仮にこのアルバムでジャズに出会っていたら、マイルス・ファンになっていたでしょうね。

 ■1)『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』についてウイッキペディアから
 先ずは、ウイッキペディアから見てみましょう。
”マイルスは、1955年夏にニューポート・ジャズ・フェスティバルに出演した。それがコロムビアのプロデューサー、ジョージ・アヴァキャンの目に留まり、コロムビアとの契約に至った。そして同年10月26日に、同社で最初のレコーディングを行う。しかし、プレスティッジ・レコードからも残りの契約の履行を要請されたため、1956年5月11日に大がかりなレコーディング・セッションを行う。同年9月10日に本作のためのセッションを終了させた後、10月26日に再びプレスティッジのためにレコーディングした。わずか2回のセッションからの音源が、『ワーキン』『スティーミン』『リラクシン』『クッキン』というアルバム4枚として発表されたことから、このプレスティッジ用のセッションは、俗に「マラソン・セッション」と呼ばれた。
「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」はセロニアス・モンクの作曲で、アレンジは旧知の仲の編曲家ギル・エヴァンスによるものを元にしている。ギルは1983年3月のインタビューで、譜面を渡していないにもかかわらずマイルスがギルの教えたアレンジを正確に覚えていたことに驚いた、というエピソードを明かした。「アー・リュー・チャ」は、マイルスの恩師と言えるチャーリー・パーカーの曲である。「オール・オブ・ユー」は、コール・ポーターがミュージカル『絹の靴下』のために作った曲で、マイルスはしばしばライブでも取り上げ、アルバム『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』にも、1964年の演奏を収録している。
大手コロムビアとの契約により、マイルスの知名度は一気に上がった。そして、マイルスとコロムビアの関係は1985年まで続く。”

 ■2)トレーンのプレスティッジ前後の状況から見たマイルスの動き
 これは、いつものまとめで見てみましょう。

 これでも判るように、『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』は、1955年夏にニューポート・ジャズ・フェスティバルに出演しこの曲をミュートでプレイしたマイルスが、コロムビアの目に留まり、契約に至って初めて録音したものです。ジャズ専門のマイナーレーベルであるプレスティッジからメジャー・レーベルであるCBS傘下のコロンビア・レコードに契約したかったんでしょうね。ジャズ・ジャイアントは、初めプレスティッジに入って、良く周りを観察するともっと良いレーベルが見えてきて、他のレーベルに移っていく人がいます。コルトレーンもプレスティジで名作を物にしてからアトランティックに移りましたし。マイルスは、プレスティッジでジャズという範疇に留まるなんて考えは無くて、もっと普遍的なミュージシャン、いやアーティストを志向していたと思います。
 時期的には、そのプレスティッジを離れる為に、マラソンセッションを2回、4作品の全部1テイクという神業で録音した時期に重なっています。この4作品も前に紹介した時にお気に入りと言いましたが、本アルバムは、完成度では上回っていると思います。

 ■3)「マイルス・デイビス」とジャズ・ピアニスト「アーマッド・ジャマル」
 集英社新書刊の中山康樹著「マイルス・デイビス 青の時代」における分析によると、マイルスは、レスターと同様ジャマルの影響を受けている。マイルスとジャマルは一度も共演したことがないが、マイルスはアーマッド・ジャマル・トリオの演奏を聞いて、その雰囲気、テイストなどに自分の目指すものとの共通項を見出し、それをバンドメンバーに理解させたくて、「ジャマルを聞け」と言った。そしてその「アーマッド・ジャマル的なるもの」を我が第一次クインテットで再現しようとした。
具体的にはタイミングの取り方、音数の少なさ、抑えた表現などであり、よく使われる表現で言えば「卵の殻の上を歩くように」楽器を奏でるその「静謐さ」である。特にバラードにおけるその世界感というか、空気感に親近性があると思う。レスターのクールさにも通じると思う。

 ■4)ミュートへの開眼
 マイルスは、駆け出しの頃、先輩のディジー・ガレスビーのように速いフレーズが吹けないことに劣等感を持っていた。それにアドバイスをしてくれたのが、バード(チャーリーパーカー)。出来ないことにくよくよするより、自分にしか出来ないことを見つけろ!というバードのアドバイスに励まされて、マイルスは、レスター・ヤングのクールさやジャマルの「静謐さ」を身に着けていきます。その方向でたどり着いたのが、ミュートトランペット。それを、ニューポート・ジャズ・フェスティバルで『ラウンドミッドナイト』でやってみたら、もの凄く受けた。その時のマイルスの言葉は、
『オレがミュートで吹くと、みんな大騒ぎになった。あれは、すごかった。ものすごく長いスタンディング・オベーションを受けたんだ。ステージを降りると王様のように見られ、レコード契約の話を持っていろんな奴が押しかけてきた。…そのすべては、はるか昔、学ぶのに苦労したソロのおかげだった。』

 ■5)『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』のジャケットとメンバー
 以下、サングラスで、いかにもカッコつけているマイルスです。さしずめ、日本でいうと「永ちゃん」ってとこかな?

表題は、『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』ですが、曲名は、『ラウンド・ミッドナイト』とアバウトが抜けています。この理由には、2説あります。ネットで見れば、出てきます。6曲とも素晴らしいです。捨て曲はありません。アンサンブルの妙や各パートのソロ・プレイのせめぎ合いや合奏部の乗りの良さ等のアレンジを聴きたいのならこのアルバムがいいです。

 パーソネル 第一期クインテット
 Miles Davis (Tp)
 John Coltrane (Ts)
 Red Garland (P)
 Paul Chambers (B)
 Philly Joe Jones (Dr)(本名「Joseph Rudolph Jones」偉大な先輩ドラマーであるジョー・ジョーンズ(愛称パパ・ジョー)と区別するため、出身地のフィラデルフィアを付けた。尚、’85年夏フィリー・ジョーの死の4日後にパパ・ジョーは極貧の哀れな状況で逝去。悲惨な末路。合掌)

時系列に整理すると、
1955年
10月26日:コロンビアで「ラウンド・バウト・ミッドナイト」の2曲目録音
11月16日:プレスティッジで「マイルス」全6曲録音
1956年
5月11日:プレスティッジで「第1回マラソン・セッション」録音
6月 5日:コロンビアで「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」の4~6曲目録音
9月10日:コロンビアで「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」の1曲目、3曲目録音
10月26日:プレスティッジで「第2回マラソン・セッション」録音

 レコーディング・エンジニア: Ray Moore、彼の録音が凄い。スタジオで聴いている気分になる。ドンシャリでなく、F特的に平準化されておりRVGより録音が良いのではないかと思っている。クラシックなんかも手がけています。惜しむらくは、モノラル録音。ステレオだったら云うことない。"擬似ステレオ"もあるようですが、それならモノラルを選びます。。
 デジタル・マスター: テオ・マセロ、彼はマイルスのアルバムの中期から後期をプロデュースした。ダスティン・ホフマンの映画「卒業」や、角川映画の「復活の日」の音楽も担当。

 ■6)『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』の各曲
 簡単に感想をお話します。私の好きな歌物でしかも素晴らしい熱演ですので全曲お気に入りです。マイルスは、ROUND MIDNIGHTが大好きで作者のモンクにこの曲を毎晩聴いてもらって、長い間OKが出なかったがOKが出た時はもの凄く嬉しかったと云っています。又、曲の配置というか構成順序が素晴らしいです。最初と最後にバラード系のしっとりとした哀愁系の曲を持ってきて、その内側の2、5曲目に軽快な中テンポの曲を配し、更に内側の3、4曲目は中テンポの爽快なカンファタブル系を配す。この構成には参りました。リスナーを飽きさせず、且つ緊張させ過ぎない効果をも生んでいます。

 1.‘ROUND MIDNIGHT(セロニアス・モンクが19歳のときに作った曲)5:52
 イントロ後、鳥肌が立つようなミュートのテーマが入る瞬間、先ずノックアウト。テーマは、夜の都会の孤独のイメージを静かに描写し、リリカルでDUENDEの世界を演出する。コルトレーンのテナー・ソロとの間に、例の有名なブリッジが入る。ブリッジによりこの演奏は有名になったと言われているが、これの発案者はギル・エバンスではないかと言われている(上のウイッキペディアの記載事項参照。小川隆夫氏の言でイントロのトレーンのカウンター・メロディにもギルの影響はある)。ブリッジに続くは、トレーン。これもDUENDE感を漂わせる。マイルスの教えかな?この頃の未だシーツを見せないトレーンが何とも云えない味わいを出す。ミュートのテーマに戻ってトレーンの絡みで終わる。ギルを含めたアレンジの妙を感じる。

 2.AH-LEU-CHA(バードの曲)5:49
 フワフワ感のノンミュートのイントロからソロに入る。ミディアム・テンポの軽やかなテーマを、クールで乾いたムードを漂わせながらマイルスが吹いていく。続くは、トレーン。これもワクワク感満載の軽快なアドリブを自由奔放に吹いていく。お次は、ガーランド。ガーランドの本領は、3~5曲目もそうだが、こういうスインギーな曲のアイデアの豊かさにある。最後は、オープンペットのテーマに戻ってフィリージョーも絡んで、ドラムソロで盛り上げてから突然終わる。5曲目同様、リスナーを置き去りにするテクニック。

 3.ALL OF YOU(コール・ポーター)6:58
 ミディアムテンポのミュートのテーマから始まるが、この爽快感は心地よい。実はこの曲と5曲目が一番のお気に入り。カンファタブル!マイルスならではの余裕。次は、トレーン。まるでバードと思えるメローなファンタスティックなソロ。少しシーツの香りもする。この過渡期の状態は、まとまりが弱いという人もいるが、私は好きだ。その次は、ガーランドのグルービーなソロ。カクテル・ピアノと揶揄する人も居るが、”そんな奴は俺のプレイを聴いてみろ!”とでも言いたげなご機嫌なプレイ。最後はミュートのリラックスしたテーマに戻って、ピアノの1アクセントの後、粋なエンディング。

 2月12日にアップした”マイファニーバレンタイン”でも、2曲目にマイルスはこの曲を取り上げています。15分近くの長尺ですが、マイルスのミュートは互角、Tsはやはりトレーンの方がコールマンと比べるとアドリブに魅力があります。ガーランドとハンコックでは、スタイルは違いますが、どちらも甲乙付けがたいです。総合的には、本作の方が好きです。しかし、マイルスのこの曲のスタイルは、この6年半は進歩していないというか、余り変わっていないですね。少しDUENDEさは増しましたが。モードの深化のせい?

 4.BYE BYE BLACKBIRD(M.Dixon-R.Henderson)7:53
 昔(’70年代後半)、弘田 三枝子のライブをNHK FMでやっていてそれで聴いたのがこの曲との出会い。結構良かったですが、聴いた人はいないでしょうね。この曲はマイルスのこのアルバムのが一番好きです。ピアノの短いイントロの後、マイルスのミュートで始まるが、DUENDEでグルービーなソロを余裕綽綽で披露。リズムセクションとの間合いも痺れる。計算し尽されている。お次はトレーン。得意のイデオムを使ってアドリブを描いていく。崩し方が凄く心地よい。いつまでも聴いていたいほど充実している。次のガーランドも絶妙の間を持ったスインギー且つグルービーでファンキーなソロを魅せてくれる。云うことない。ミュートのテーマに戻ってトレーンがカウンターで絡んで終わる。

 5.TADD’S DELIGHT(タッド・ダメロンがビ・バップ全盛時代に書いた曲)4:26 ⇒この曲を聴くとフィ二アスのCabuと同様の疾走感・高揚感を感じます。
 オープンペットのホーンのユニゾンのミディアム・テンポのテーマでスタート。マイルスのソロは爽快にリズミックに多彩なアドリブを聴かせてくれる。次はトレーン。ゆったりとしたリラックスしたソロを聴かせてくれる。ハードバップ風に吹いているがこういうのもいい。その次は、ガーランド。ジャンピング・タッチでキラキラした光り輝くフレーズを散りばめて軽快に弾いていく。実は、トレーンとガーランドのこの曲のアドリブが一番のお気に入り。メロディラインの間にコードトーンを挟みこむ合わせ方が絶妙。弾むメロディラインと対照的なクールなコードラインのハーモニー。バックのチェンバースも地味ながらいい味出してます。欲を言えばこの乗り乗りの2人にインスパーヤーされたべースのソロがあれば言うことない。テーマに戻ってホーンのユニゾンで終わる。この突然のエンディングもカッコいい。この曲は、本アルバムとロイ・へインズのいや、フィ二アスのウィ・スリーで決まり!この2テイクにのみこの曲にフィットした浮遊感と疾走感を感じます。でもデフォルメのし方が全く違うのがオリジナリティなんですね。

 6.DEAR OLD STOCKHOLM(スウェーデンのトラディショナル・ソングが原曲、’51年にスタン・ゲッツが取り上げた)7:49
 この曲と言えば、私は、”フィル・トークス・ウィズ・クイル”での少しアップテンポでメロディを大切にしたアドリブで、ユニゾンや絡みも効果的に使用した2人のAsの会話が聴ける同曲が好きですが、ゆったりとした各メンバーのソロが楽しめるマイルスの方も大好きです。ピアノとトレーンのイントロ後、トレーンのカウンター・メロディの中をミュートでテーマをとる。哀愁を湛えたアドリブはDUENDEの世界。次は珍しく前半での長尺のチェンバースの指弾きのウォーキング・ベース。スインギーでファンキー。お次は、トレーン。この哀愁溢れるテーマを乾いたトーンで、時に哀愁の叫びも交えて奏でる。如何にも昔のストックホルムを懐かしんでいるよう。次は、ミュートで極彩色のソロを静けさの中に哀愁を湛えてプレイ。最後は、トレーンも絡んでミュートで静かに終わる。絶妙の間の採り方がセンチな気分と郷愁を呼び覚まします。

 ■7)You Tube
 単曲で、全曲上がっています。
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