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オーディオ彷徨録~JBL4331AからALTEC620A~

今までのオーディオの改良や音楽の遍歴に、今後の改善も紹介。いい音に繋がる方法を色々模索したことや、好きな音楽を紹介する。

サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード

2018-06-27 14:22:20 | ジャズ
 今回は、最近アップした2405の同相化の試聴で”サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード”のマスターとボーナス・テイクの差に触れたので、その話です。

 ■1)”サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード”の背景(「ビル・エヴァンスについてのいくつかの事柄」中山康樹著より)
 ’59年末にポール・モチアン、スコット・ラファロと出会い「ポートレイト・イン・ジャズ」がリリースされる。しかし、このトリオはレギュラー・トリオとして活動するには経済的にも難しく、エヴァンスにもその力はなかった。そのため、各々が他のグループとの演奏活動を並行的に続ける中で、「あの日曜日」が来ることになる。

 ’61年6月25日、二週間のヴレッジ・ヴァンガード出演の最終日にライブ・レコーディングが急遽行われた。日曜日だったのでマチネーがあり、本来、対グループとして出演していたランバート・ヘンドリックス & ロスが入る部分も全てエヴァンス・トリオが演奏し、マチネーで2ステージ、本セッションで3ステージの23曲が収録された。そしてこの11日後にラファロは交通事故で急逝してしまう。この録音から「サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」が発売される。

「このアルバムには次の6曲が収録されている。グロリアズ・ステップ、ジェイド・ヴィジョンズ、マイ・マンズ・ゴーン・ナウ、ソラー、不思議の国のアリス、オール・オブ・ユー。・・この6曲にはエヴァンスの明確な意思が反映されており、エヴァンスにとってはこのライブから2枚目のアルバムを作成するつもりは無かったことを逆説的に物語る。・・・選曲の基準は二つあった。まずはラファロ追悼の視点。ラファロのガールフレンドであったダンサーのグロリア・ゲイブリエルにちなんだ「グロリアズ・ステップ」と「ジエイド・ヴィジョンズ」はラファロの作曲であり、6曲中の2曲をあてた。・・・何よりもラファロに対する強い追悼の念があった。・・もちろんその背景にはラファロの書いた曲を収録することによって発生する印税を遺族が受け取れるようらとの配慮があった。一曲を温存せず、二曲とも収録したことでエヴァンスはこの録音から2枚目のアルバムは想定していなかった。・・・トリオとしての視点から見ると、エヴァンスは残りの4曲を過去のトリオとしての2アルバム、それ以外の2アルバムに収録していない曲を選択している。つまり、このライブ・アルバムをトリオとしての3枚目のアルバムと認識し、追悼盤であると同時に純然たる新作として捉えていた。・・・」

だが、10ケ月後にこのライブ・レコーディングからエヴァンスの当初の意図に反し、もう一枚のアルバムがつくられる。「ワルツ・フォー・デビー」である。結果的に「サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」はあまり芳しい売れ行きを示さなかったが、グラミー賞にノミネートされた。こうしたことから続編というコンセプトを一切出さず、エヴァンスの選曲でなくアルバムはつくられた。6曲中3曲は過去エヴァンスがリバーサイドで録音したものと同曲を収録した。結果、著名な曲を加えたと同時に、ジャズ・アルバムらしからぬジャケット・デザインで好セールスをあげたといわれている。

 やはり、レコード会社としては、売れるものを発売したいしたいという意思が働くので、「ワルツ・フォー・デビー」が売れたのはポピュラーな曲を並べてセールスを狙うということなんでしょうが、兎に角「ワルツ・フォー・デビー」は、エヴァンスの意思に反していたとはいえ、「サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」も含めこの日の録音はお気に入りです。この2つのアルバムは、私を’61年のあの日の夜のヴィレッジ・ヴァンガードに連れて行ってくれます。

 ■2)”サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード”のジャケットとパーソネルと録音
 これは以下。

 ラファロに対する強い追悼の念があったのでしょう、エヴァンスの右肩にラファロの名前がフィーチャーされています。手が若干むくんでいますが、多分ドラッグのせいなんでしょう。私が楽屋で握手した時の大きな手も、女の子のように柔らかかったのを違和感と共に記憶しています。

〈パーソネル〉ビル・エヴァンス(piano) スコット・ラファロ(bass) ポール・モチアン(drums)
 *1961年6月25日、ニューヨークにてライヴ録音。この時は、関係者の休暇と重なり、無名のデイヴ・ジョーンズが録音を担当していますが、ちゃんとリバーサイドの音で録れています。因みに使用機材はSONYの真空管コンデンサーマイクC-37、AMPEX/351-2に自作の真空管ミキサーです。その後の作品でもビル・エヴァンスは違う数名のエンジニアが担当し、デイヴ・ジョーンズはこのライブのみ。

 ■3)”サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード”の各曲
 私がお気に入りなのは、不思議の国のアリスですが、ラファロのグロリアズ・ステップや、オール・オブ・ユーも派手さは無いですが好きですね。何と言っても、この11日後にラファロは交通事故で急逝してしまうということを考えると、彼のベースが際立った曲が中心になっていてこの人が卓越したべーシストなのだ、ということを実感します。時にクールでシャープ、時に優しく絶妙の間で、エヴァンスとインタープレイするのが気持ち良い。フィ二アスの”ア・ワールド・オブ・ピアノ”と同じくピアノトリオの完成の域を見ます。ラファロとエヴァンスのインタープレイと言う意味では、”ワルツ・フォー・デヴィ”を超える。

 1.グロリアズ・ステップ(テイク2)ラファロの作曲
 ミディアムテンポの静かなバラードが始まると、エヴァンスはラファロとの絶妙なアンサンブルを聴かせてくれる。シンバルが上手く隠し味を利かせる。途中のラファロのソロは屑々として、唄い、この直後に事故で亡くなる事を予感しているように壮絶なソロを聴かせる。

 2.同曲 (テイク3)■ボーナス・トラック

 3.マイ・マンズ・ゴーン・ナウ ジョージ&アイラ・ガーシュイン作曲
 ラファロのイントロから、重厚なスローなテーマが。エヴァンスとラファロのインタープレイは本当に美しい。この2人の息を呑むようなインタープレイにモチアンのドラムスが絡んで何ともいえないムードを醸し出す。次に控えるラファロのソロも重厚なムードで咽び泣くようなメロディを唄う。

 4.ソーラー マイルス・デイビスの曲
 このマイルスの曲を軽やかに飛ばしていくエヴァンスとラファロの会話の鬩ぎ合い・バトルが楽しい。ラファロのソロが傑出している。スインギーに良く唄い又ブルージーに。単なるリズムキーパーの概念を外したエバンスとの絡み方、広い音域を縦横無尽に駆け巡る高速のソロは圧巻。ラファロはベースの神に憑依している。しかし、哀愁も感じるのは死の予感?その後はモチアンとの緊張感に溢れる度迫力のバースの交換を経て、ラファロのリードのアンサンブルでエンド。

 5.不思議の国のアリス(テイク2) Fain.Hillard 作曲
 エヴァンスのゆっくりとしたテーマでスタート。ラファロとモチアンのリズムが割って入ってテンポアップする瞬間がゾクッとする。ここでのエヴァンスもラファロのカウンターリズムに乗って美しく力強いアンサンブルを聴かせる。良くスイングしたアドリブとインタープレイを楽しむ。

 6.不思議の国のアリス(テイク1)■ボーナス・トラック

 7.オール・オブ・ユー(テイク2) コール・ポーター作曲
 エヴァンスのソロはここでも良く唄っていてラファロとのアンサンブルもぴったりの呼吸で絶妙の間でやり取りされている。心地よいインタープレイを味わう。その後のラファロの爽快な素晴らしいソロも味わえる。最後、モチアンとの軽妙なバース交換も楽しんでエヴァンスのテーマに戻ってエンド。

 8.オール・オブ・ユー(テイク3)
 
 9.ジェイド・ヴィジョンズ(テイク2) ラファロの作曲 
 重苦しいラファロのイントロより、エヴァンスが入って静かなバラードが始まる。エヴァンスのソロは重苦しいラファロのリズムに伴われて静寂の内に終わる。いかにも自身のレクイエムを予感するように。

 10.ジェイド・ヴィジョンズ(テイク1) ■ボーナス・トラック

 ■4)”サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード”と”ワルツ・フォー・デヴィ”の音場について
 これは、”続・エヴァンスを聴け!”というサイトに各ヴァージョン対応での音場について興味ある詳細な記事が載っていますので参照させて頂き、私の持っているCDがどうなっているかを調べてみました。私の持っているヴァージョンは、

 ”サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード” 1987年海外盤 Total Time 69分 中央の輪にある印字:DIDX-010264  ラベル印字:OJCCD-140-2

 ”ワルツ・フォー・デヴィ” 2007年国内盤 Total Time 65分23秒 中央の輪にある印字:無し ラベル印字:UCCO-90001

 音場の広がりチェック結果は以下。

 上段は、”サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード”のマスター・テイクで音場が狭いと云われているものです。 1、3、4、5、7、9曲目がそれに当たります。左側にあるB(ベース:緑色)とDs(ドラムス:青色)が大体620Aの右側のBは上の方でDsは、620Aの右端で20~30cm上に聴こえます。P(ピアノ:赤色)は、右の2405の上少し右に聴こえます。尚、4、5曲目は、B、Dsが更に内側に聴こえます。
 下段は、サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガードのボーナス・テイク2,6,8,10曲目と、ワルツ・フォー・デヴィの全テイクでこれは上より音場が広がって聴こえます。Bは、Bが2つありますが曲により違います。6、8曲目はBは上の方のB位置ですが、2、10曲目では下の方のBです。Dsは左の2405の上の方に聴こえます。2つDsが書いていますが2曲目はその間を左右にバラツキます。スネア・ハイハット・ラウドシンバルが少し間隔を置いて聴こえるし中央からシンバルが聴こえる所もあるのでバラツキが出る。又10曲目のシンバルは中央左に聴こえます。P(ピアノ:赤色)は、右の620Aの右端の上に聴こえます。
 元々、このアルバムはライブ録音なので、きっちりとした定位を再現するようには考えられていなかったと思われますが、マスターとボーナス・テイクの差がどうして出来たかは気になります。また上記サイトによると、マスター・テイクも広い音場のヴァージョンのCDもあるようです。
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CHET BAKER IN NEW YORK

2018-06-10 14:18:22 | ジャズ
 昨年2/9にチェット・ベイカーのシングスの話をした時に、これもお気に入りと云っていましたので少し紹介しておきます。

 ■1)その頃のチェット・ベイカーとメンバー
  ロスでパシフィック・ジャズに最後の吹き込みをした後チェットは衰退していきつつあるウエストコーストジャズと麻薬(ヘロインとマリファナ)から逃れる為と云われていますがニューヨークに移り住みます。そこでリバーサイドに吹き込みを始めます。その第2作が今回紹介する「CHET BAKER IN NEW YORK」です。
 第1作はチェット・ベイカー・シングスの再演ともいえるアルバムで、この第2作はジョニー・グリフィンの参加やマイルスのリズム隊のチェンバースとフィリージョーの起用などパシフィック・ジャズ時代とは違ってハードなチェットが聴けます。ジョーニー・グリフィンは、当時ブルーノートからリバーサイドへ移った頃で看板アーティストの一人です。一度聴けばすぐわかる独特のトーンと節回し、このアルバムでも彼の特徴が良く出ています。ジョーニー・グリフィンは時としてオーバー・ブロウ気味になることがあるのですが、ここでは共演者として押さえたやや控え目なプレイですが奥底に秘めた熱いソウルも垣間見えます。ピアノのアル・ヘイグの優雅な美しいプレイとグリフィンのよくスイングするプレイもチェットのイマジネーションをかき立てているように思えます。
 リバーサイドの当時の方針もあったのでしょうが、マイルスの”SOLAR”が収録されていることからも、当時のチェットが、マイルスのオリジナル・クインテット的なプレイに心引かれていたということは容易に想像されますが、この次の作からはパシフィック・ジャズ時代の耽美な雰囲気のアルバム作りに戻ってしまうので、チェットがハードバップの洗礼を受け、最もハードにプレイしているのがこのアルバムです。逃げのハードバップかもしれませんが、ポルカドッツで魅せる繊細で深みのあるアドリブが聴き物です。

 ■3)”CHET BAKER IN NEW YORK”
 ジャケットは、

 チェット・ベイカー・シングスで”バット・ノット・フォー・ミー”にノックアウトされたが、”同じチェット・ベイカーのトランペットも聴きたくなって、菅野邦彦のフィンガーポッピングでお気に入りになった、また、京都ブルーノートの店じまいの直前にスガチンがライブに来た時にリクエストした”ポルカドッツ・アンド・ムーンビームス”の入っている”イン・ニューヨーク”が欲しくなってを手に入れた。この曲はビル・エバンスも良いですね。
 チェットのアドリブは、リー・モーガンのような一瞬の閃光でもなく、ブラウニーのような全てを照らす陽光でもない、春の縁側にさす日光のように暖かく人を包み込む優しさを感じます。実際の彼は女性マネージャーがウンザリする程の自己中心的で嫌な性格だったようですが、人間性と芸術性は必ずしも一致しまないのかもしれません。またハードバップに最も傾いている彼の充実した熱演が聴けます。

 ■4)”CHET BAKER IN NEW YORK”の各曲とメンバー
 この中では、やはり、”ポルカドッツ・アンド・ムーンビームス”が一番です。歌詞はハッピーエンドですが、人生の楽しさ、辛さ、悲しみを全て知ったような哀感溢れるアドリブが聴けます。しかし”HOTEL49"や、”SOLAR”や、”FAIR WEATHER”もなかなかいいです。

パーソネル :Tp Chet Baker   Ts  Johnny  Griffin(1.3.5.のみ) P  Al Haig
        B Paul Chambers  Ds  Philly Joe Jones リズムセクションなのにちょっとやり過ぎというご意見もありますが彼としては普通。
録音日  :1958年9月?日 Reeves Sound Studios, New York City・・・・やはり1958年はハードバップの全盛期ですね

1.Fair Weather   (Benny Golson) 06:55
 アップテンポの軽快な曲。飄々とした感じのチェットのトランペットが心地よい。アップゴーイングな気分に誘ってくれる。ソロは、ベイカー~チェンバース~グリフィン~ヘイグ と続くが、皆さん良くスイングして唄っている。

2.Polka Dots And Moonbeams (Burk-Van Heusen) 07:57
 これが一番のお気に入り。チェットのアドリブは、凄いシンプルなのに何故か奥深いものを感じる。星の中を漂い、彷徨うようなアドリブが何とも趣きがある。ベイカーの人生がにじみ出ている。ソロは、ベイカー~ヘイグ~チェンバース と続くが、ヘイグのソロは格調高く美しいし、チェンバースのソロも良く唄っている。

3.Hotel 49  (Owen Marshall) 09:52
 これも結構お気に入り。ユニゾンのイントロより、ソロは、グリフィン~ヘイグ~ベイカー~チェンバース~フィリージョー と続く。グリフィンの良くスイングするホットなソロ、ヘイグも流れるようにホットで変化もあって飽きない。ベイカーは適度な緊張感を伴った素直でシンプルなお気に入りのアドリブを聴かせてくれ、チェンバースの弓弾きも良くスイングして唄っている。

4.Solar (Miles Davis) 05:49
 Miles は ミュートでしたが、チェットはオープン。ミディアムテンポのテーマからアドリブに入る。ソロ順は、ベイカー~ヘイグ~ベイカーとなる。ヘイグのソロは軽く流しているように聴こえるが適度なリラックス感もあって良い。最後はフィリージョーとの交換の後、ヘイグでエンディング。

5.Blue Thoughts (Benny Golson)  07:35
 ホーンのアンサンブルのイントロのテーマから入る。ソロは、ベイカー~ヘイグ~グリフィン~チェンバースと続く、ベイカーは心情を吐露するかのようなバラードを聴かせ、ヘイグのソロも美しい。グリフィンは、クールさの中に時折熱いものも魅せる。チェンバースのソロは落ち着いた心にさせてくれる。アンサンブルで厳粛にエンディング。

6.When Lights Are Low (Williams-Carter)  06:54
 ベイカーのテーマから入るが、この軽快な曲をベイカーは実にハッピーな素直なアドリブでプレイしていく。こっちの心もリラックスしてしまう。続くヘイグやチェンバースも流れるようなタッチでスインギー。チェンバースのピチカートも乗り乗りでユーモアたっぷりに唄ってくれる。

7.Soft Winds [Bonus] (Benny Goodman) 06:29
 重厚なイメージのイントロより。ソロは、ベイカー~ヘイグ ~チェンバース。ベイカーはスローテンポのこのバラードをアンニュイなムードで適度の緊張感も伴って美しくアドリブする。続くヘイグはファンキーでスインギー。チェンバースのソロも重厚で静かに重く唄う。少し重厚な16小節のブルースをウォーキング系のファンキータッチでコミカルに料理してプレイしている。

 ■5)You Tube
 今は全曲上がっています。
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ソニー・ロリンズ Vol.1

2018-05-04 18:44:44 | ジャズ
 今回は、ソニー・ロリンズがブルー・ノートに残した4枚のアルバムで最初に録音したソニー・ロリンズ Vol.1についてです。77年頃に購入し、丁度彼女が去っていった時に聴いた”グロッカ・モラの出来事”が僕の心を癒してくれました。この曲が一番のお気に入りです。この曲のみ、ほぼ1ホーンですしロリンズがたっぷり聴けます。”サキソフォン・コロッサス”のような名盤の華やかさはないですが、地味目な中にも、メロディアスなロリンズのアドリブが聴けて大好きです。

 ■1)この頃のロリンズ
 ロリンズのアルバムを通して彼の状況を見て見ましょう。

 レーベルを色で識別してみました。マイルスや、トレーン同様ロリンズも最初はプレスティッジに録音をしていますね。そこで名盤”サキソフォン・コロッサス”を物にします。しかしプレスティッジという会社は、スタジオの時間目一杯録音してリハなしで曲数を稼ぎ、LPの収録時間を30分台にして枚数も稼ぎ、余りのテープから超適当に曲を繋いでアルバムを後からでも乱造する等評判が今一ですが、ちゃっかりいい所は持っていきますね。正に玉石混合。しかし56年のプレスティッジの専属契約が切れる頃に最初の妻と離婚し、べらぼうな大金が必要となって、手当たり次第に各社に録音をしだします。上では5社しか書いていませんが、8社にもなります。どこの国でも離婚はつらいですね。その中のブルーノートに吹き込んだ4枚の内の最初の2枚(Vol.1/2)はマックス・ローチのコンボに在籍時、3番目の”ナイト・アット・ザ・ビレッジバンガード”は、’57年夏にローチの許を去り、フリーとなりクインテットやカルテットを組んだ後ピアノレストリオを作った直後のライブ、4枚目の”ニュークス・タイム”は更に1年後のスタジオ・セッションです。Vol.1は、サキソフォン・コロッサスの半年後で、すぐ後にこれまた傑作の”ウェイ・アウト・ウェスト”が録音されたという云わばテナーマンとしては脂の乗り切った時期になる。しかし、個人的には、つらい時期だったろう。

 ■2)2度目の妻、最愛のルシール(Lucille Pearson)について (ソニー・ロリンズ・ブリッジ・プロジェクトのインスタを翻訳しました)
 ロリンズとは、シカゴで出会う。ロリンズが橋で練習をしていた当時は彼女は着実に給料でロリンズを支えた。彼らは1957年にカップルになり、1965年に結婚した。ソニーの第3回目(英語の原文では2となっている)の雲隠れが1971年に終了した後、ルシールは彼のフルタイムのマネージャーとなった。そして、長年ロリンズのアルバムをプロデュースした。1975年、ロリンズはアルバム『Nucleus.』に彼女の名前をタイトルにした曲「ルシール」を書いて録音し、ルシールも ' Reel Life '(1982) と ' Sunny Days, Starry Nights ' (1984) の2つのアルバムの数曲でカウベルを演奏している。ルシールは2004年11月27日、76歳で死去した。ソニーは、アルバム のタイトルを' Sonny, Please' (2006) としたが、それはルシールが口癖のようにその言葉を使っていたためです。彼女の死の後の本アルバムの録音に際し、ソニーは言った。"アルバムは彼女へのオマージュです。彼女は今でもまだ私の成すべきことのすべての一部です。" ルシールは、ロリンズにとっての人生の愛と光でした。

 以下のインスタから翻訳、もし訪問されたら、いいね をポチって下さい。ロリンズとルシールさんの写真も載っています。

 インスタのURL:https://www.instagram.com/p/BfLrbqlnscp/?utm_source=ig_embed

 ■3)サイドメン
 Tp:ドナルド・バード:’32年生まれ。正式な音楽教育を受けた知的なバップトランペッターで、ディジー・ガレスビー・マイルス・ラインの逸材。
 P:ウィントン・ケリー:’31年生まれ。39歳で夭折。ディジー・ガレスビー・マイルス・ラインで演奏する一方、自身のトリオで明快なタッチ、よくスイングする知的なピアニスト。
 B:ジーン・ラミー:’13年生まれの戦前派。ジェイ・マクシャン、ベイシー等のビッグバンドでも働いたヴェテランで一流モダニストとの共演も多い隠れた名手。
 Ds:マックス・ローチ:’25年生まれ。モダン・ドラミングの最初のスタイル完成者とされているビッグ・プレーヤーで当時はロリンズの親分格。

 ■4)ソニー・ロリンズ Vol.1
 ジャケットは、以下。左がLPで、右はCD。

 LP(文字が横)とCD(文字が縦)は、文字が90度回転しています。私の持っている東芝EMIの77年のLPは横文字ですが、オリジナルは縦文字とか。今のCDは、両方売っています。裏は、

 上記にも書いたように、Vol.1は、ロリンズがローチのコンボにいた時のもので、ドナルド・バードも短期ではあるがローチの許にいたし、ロリンズがローチの許を去った後も一時一緒に演奏していた。そのメンバーであるから、ローチ・ブラウンコンボを踏襲したものかといえば、そうでもなく、5曲中4曲がロリンズのオリジナルであることからも判るようにロリンズの個性が強く通っている。
 しかし、ブルーノートは、プレスティッジとは違ってリハーサルにも2日も掛けて支払うような真面目なレーベルで、1曲目ではテーマのアンサンブルがブルースの定形12小節に1つ加えた13小節という変形となっているが、リハーサルで作りこまれたのかもしれない。レコードは芸術なんだからちゃんとしたものを残したいというブルーノートの真摯な姿勢から提案されたのかもしれないが、パーカーのような閃きを重視するロリンズにとっては枠を嵌められるようなことは有り難くなかったのかも。
 しかし、気の合ったミュージシャンばかりの息のあった演奏で、お互いが出しゃばらず、とはいえ激しいエモーションや強烈なドライブ感も感じるし、それでいて3曲目を聴けば判るように何ともいえない寛ぎと安らぎ、なごやかさが感じられる。
 このLPには、’56年というハードバップの勃興期ーハードバップが全盛を風靡する直前ーの何とも云えない”さあ、これからだ!”というジャズジャイアンツ達の熱気・勢いが発散している。

 ■5)ソニー・ロリンズ Vol.1の各曲
 私のお気に入りは、最初に書いたように3曲目の”グロッカ・モラの出来事”です。ブルーノートがリハで気合を入れたと思われる1曲目の”ディシジョン”や4曲目の”プレイン・ジェーン”も好きです。

1. デシジョン ロリンズのオリジナル
 ユニゾンによるテーマから、ロリンズ・バード、ケリー・ローチの順にソロを回す。ロリンズのソロはスケールが大きく、個性的。ブルージーにアドリブを歌う。そこがカッコいい。マイルス風のバードのソロもゆったりとスインギーでブルージー、その後のケリーも美しいシングルトーンで歌う。 ローチも見事なブラッシュワークを魅せる。ケリーのバッキングが上手く効いたエンディングで終わる。

2. ブルースノート ロリンズのオリジナル 勿論初レコーディングなのでブルーノートをモジッテイル。
 ミディアムテンポの快活な曲。ソロは、バード、ロリンズ、ケリー・ローチ・ラミーの順。その後、8~4バースがあり、アンサンブルで終わる。ロリンズのソロは軽快でウィットも効いているが、リラックスして歌っている。くだけたプレイでも駄作になっていないところが流石ロリンズ。ケリーも良く歌っている。

3. ”グロッカ・モラの出来事”(”グロッカ・モラを思う”の訳のほうが良いと思う)ラーナー&ロウのミュージカル”フィニアンの夢”1947の中で最も美しい主題歌。いかにもロリンズ好みの曲。
 イントロとコーダは、バードがミュートで受け持っているが、これが秀逸で良い味を出している。バードはこれのみ。ロリンズのソロはゆったりと揺蕩う川の流れのように優しく心に響く。ロリンズの大らかさ、人間性の大きさを感じる。中間のケリーのさわやかな、美しいソロが心にしっとりと。昔住んでいた懐かしい街は今どうなっているんだろう?何て心は誰しも持っている。そんな郷愁を呼び覚ます。遠い昔を思いながら全ては過ぎ行く。そんな気分にさせてくれる。テーマに戻ってからのアドリブもお気に入り。

4. プレイン・ジェーン ロリンズのオリジナル
 ミディアムテンポの演奏で、ロリンズの知的でコントロールされているアドリブも如何にもハードバップって感じで余裕ブッカましで素晴らしいが、その後のバード・ケリーのアドリブも見事。バードはゆったりとしたトーンでアドリブをするが、少し丸くなったリー・モーガンって感じがする。ケリーのソロもリラックスしておりスインギーでファンキー。テーマに戻って、8~4バースがありアンサンブルでエンド。

5. ソニースフィア ロリンズのオリジナル ガーシュインの”Got Rhythm”のコード進行を借り、ブリッジは、ウォーラーの”ハニーサックル・ローズ”のそれを組み合わせたもの
 アップテンポのハッピーな演奏。ロリンズ・バード、ケリーが長いソロを採りその後、ロリンズとローチの4バースが行われ、それが更に2バースになって細かくなる毎に緊張感が高まっていく。”イッツ・オール・ライト・ウィズ・ミー”と同じようであるが、こちらは緊張感の中にも寛ぎと和やかさが失われていないところが素晴らしい。

 ■6)You Tube
 今は、フル・アルバムが上がっています。
 
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”WORK TIME” SONNY ROLLINS

2018-04-10 18:20:02 | ジャズ
 私がジャズファンになるきっかけになったアルバム、”モンク・アンド・ロリンズ”について3/4のアップでお話しましたが、当時はそのLPと”ワークタイム”ばかりを聴いていました。実は、サキソフォン・コロッサスより聴いた回数は多いでしょうね。

 ■1)”ワークタイム”との出会い
 ’76年1月6日の”アスペクト・イン・ジャズ”のソニー・ロリンズの第一回でロリンズにノックアウトされた私は、”モンク・モンク・アンド・ロリンズ”の”I Want to be Happy”に魅了されたと同時に7曲目に紹介された”イッツ・オール・ライト・ウィズ・ミー”にも圧倒された。まあ、トレーンで言えば、”ロシアン・ララバイ”並の速さでハード・バップのアドリブをかまされたのである。これを聴いて直ぐに”ワークタイム”というLPを入手しました。尚、3/4に”アスペクト・イン・ジャズ”のソニー・ロリンズ特集は2回目までと記載したが、別のオープン・リールのテープが後から出てきて、4回目まであったことが判った。

 ■2)SONNY ROLLINSの絶頂期
 これについては、彼の関係するアルバムを纏めてみました。3回も雲隠れをしていますね。

 以前紹介した、”MOVIG OUT”や”モンク・アンド・ロリンズ”で神の宿ったようなアドリブを披露し評論家は腐したがプロの間では認められた。直後に薬を抜くために、1年間シカゴに雲隠れし、55年11月にローチ&ブラウンのバンドがシカゴに来た時に、シカゴだけハロルド・ランドが父親の急病で帰郷してしまった代役でテナーを吹く約束でプレイしてそのままNYに付いて行ってプレスティッジに吹き込んだのが、黄色でハッチングした”ワークタイム”です。付いて行った理由は、ブラウニーの純粋で素直な人間性に魅了されたから。ここから怒涛の快進撃が開始。このLPの前後の2年間がロリンズの絶頂期と思います。20歳代後半で頂点を極めたんですね。その後は、悠々自適の水平飛行になります。これは、変化を恐れて守りに入ったというわけではありません。『アワ・マン・イン・ジャズ』では、フリー・ジャズのドン・チェリーなどと組み、前衛的なアプローチをトライしたり、3回目の雲隠れ後の復活作『ネクスト・アルバム』では、’60年代末から流行しつつあったエレクトリック・ジャズの分野に挑戦。’73年から’76年にかけては、日本人ギタリストの増尾好秋をバンドに参加させていたしフュージョン全盛期の’75年になるとリー ・リトナー、パトリース・ラッシェンらをバックにフュージョン路線とも言える作品「ザ・ウェイ・アイ・フィール」を発表したりしました。81年にはローリング・ストーンズの”刺青の男”のレコーディングに参加したりもしましたが、結局彼の帰ってくる所は、ハードバップのアドリブ、例えて言うと、コロッサスで登ったハードバップの山がエベレスト級で余人が登れない位に高かったので、それ以上の山も探したけれども、結局は無かったということになるのでしょう。

 ■3)”WORK TIME”
 強力無類の豪快なテナープレイが聴けるソニー・ロリンズの快作。世紀の傑作「サキソフォン・コロッサス」を吹き込む半年前のこの作品で、カルテットで持ち前の豪胆なブローをスタンダード曲中心に披露。神が光臨しています。”WORK TIME”と名付けたのは、”精神的な迷いも薬もシカゴの1年で抜けた。さあ、これから仕事をせねば!”と思ったんでしょうね、きっと。このアルバムには音楽をやっていることの美味しさ…ロリンズたちがやっていることの幸福感…が漲っている。

 ジャケットは、以下。

 ’86年6月5日に京都でのライブの後、京都会館の楽屋突撃でロリンズから貰ったサインが表に入っています。この時は、サキソフォン・コロッサス等にもサインを書いてもらいました。右はCDです。CDの上にあるのは、当日の券です。第一ホール1階の32列36番で、演奏曲を書き留めています。アイムオールドファッションで始まり、3曲目にはモリタート次にマイワン、ドントストップザカーニバルを経て、ソロインプロから、テナーマッドネス~アイルビーシーイングユーでアンコールはアルフィでした。ファンへの大サービスの選曲ですね。裏は、

 パーソネル ソニー・ロリンズ(ts)
      レイ・ブライアント(p)
      ジョージ・モロウ(b)
      マックス・ローチ(ds)
 1955年12月2日 NYにて録音 MONO ステレオで無いのが残念。

 ■4)”WORK TIME”の各曲
 私の好きなのは、と書こうとしましたが、全曲夫々の魅力があり、捨て曲はありません。1曲目のようなミディアム・ファーストのテンポの曲も爽快に、4曲目のスロー・バラードも流れるように、また5曲目のアップテンポの曲はスピード感+叙情性を持って自由自在に吹き分ける、ユーモアを含め色取り取りのアドリブをひらめきのままに吹いているように聴こえるが、聴き終わってみると全体的に構成が完結している、そんな当時のロリンズの神業アドリブが聴けるご機嫌な1枚です

1 ショウほど素敵な商売はない [アーヴィング・バーリングの作曲でミュージカル”アニーよ銃を取れ”のナンバーで後にこの曲名の映画も作られた] 6:20
 OK THOSE(多分、行こうぜ!皆!と言っていると思っているが)というロリンズの賭け声の後、ローチの軽快なイントロに先導され、満を持してという感じでロリンズが一気に吹きまくる。この頃はローチにインスパーヤーされ自由自在・変幻無比にアドリブが湧いてくる。ロリンズ得意の歌物をバップス素材で料理している。途中のローチのソロもブライアントのサポートでまるでメロディを奏でているようなドラムスで面白い。ローチのドラミングは、フィリージョーのように野生的というよりは、端整で正確無比、相手を鼓舞するような情熱も感じます。最後のロリンズのアドリブやエンディングにも25歳にして余裕というか風格を感じます。このアルバムで一番の出来でしょう。

2 パラドックス [ロリンズのオリジナル] 4:57
 ロリンズのイントロでミディアムテンポで始まる。いかにも逆説、奇言、背理の論という意味の言葉のような曲。 メロディが良いですね、作曲家としてのロリンズの才能も大したものです。続くブライアントのソロもファンキー、ローチのソロからの4バースもお約束ですが、ユーモアのセンスもありますね。テーマに戻ってエンディング。

3 レインチェック 「ビリー・ストレイホーン」作曲の古典的な名曲] 5:59
 洒落たイントロフレーズの後、ここでも一気にアドリブに入るが、古典的な名曲を新鮮な解釈でプレイしている。ローチのソロもメロディアスに決まり、ブライアントのスインギーなソロの後のローチとロリンズの8バースも一回一回が変化に富んでアイデア豊かである。

4 ゼア・アー・サッチ・シングス [トミー・ドーシー楽団でシナトラが歌ってヒットした] 9:28
 バラード好きの私のお気に入り。”シンルキン’・サテン”で見せたゴージャスタッチでもなく、”恋を知らない貴方”で魅せた漆黒の夜のイメージでもなく、ここでは、リラックスの行き着く先のような落ち着いた、そう遥か昔のシャングリラに皆さんを誘ってくれているように私には聴こえますし、バラードを変幻自在に吹き分けれるんですね。こういう歌物をロリンズに吹かせると格別な味わいを持っている。このバラードには、彼の人間性の大らかさ、暖かい包容力を感じる。ブライアントのハイキーの一撃を含めたタッチも美しいが、ラストのカデンツァを含め、ロリンズのバラードの歌心の真骨頂が楽しめる一曲。

5 イッツ・オールライト・ウィズ・ミー [コール・ポーターがミュージカル”カンカン”の為に書いた曲] 6:08
 最初のロリンズのイントロからゾクゾクするような疾走感が迫ってきます。その原動力は、追い立てるような超アップテンポのローチの躍動感に溢れたドラミングにあります。それにしても、ここでのロリンズの高速ブローの豪快なこと。圧巻の一語。ユーモアのセンスも交えた彼一流の表現が味わえます。まさに手に汗握る熱演。最後の4バースもお約束とは言うものの、一回一回なんでこんなに変えれるのと言う位のバラエティがありますし、躍動感の塊。

 ■5)You Tube
 今はフルアルバムが上がっています。
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MOVIG OUT Sonny Rollins

2018-03-12 17:45:38 | ジャズ
 前回、”モンク・アンド・ロリンズ”を紹介した時に、その時、神が乗り移ったようなアドリブを見せた2曲と同一セッションの曲”モア・ザン・ユー・ノウ”が、”MOVIG OUT”に収録されていると述べましたので、”MOVIG OUT”についてお話します。これも私が最初にジャズにのめり込んだ嵌ったアルバムです。いやー、ハードバップの名盤です。サキソフォン・コロッサスのようにスタイルを完成してしまったロリンズより、僕は若い頃・有名になる前の何者も恐れない怖いもの知らずの直球勝負のロリンズにより魅力を感じます。

 ■1)ケニー・ドーハムの熱いペット
 去年の3/17にアップした”静かなるケニー”のところでも引用したのですが、'54年にソニーロリンズと2管を組んだ、”ムービン・アウト”のケニーは火の出るような熱いケニーの早いパッセージを聴く事ができ、これが、”同じケニーなの?”と驚いたものですが、このプレイはご機嫌です。私が大ファンであるロリンズのアルバムで最も好きなアルバムの一つになります。まだパーカーの影も少し残っていますが、モダンさと技量においてこの時期のロリンズは向うところ敵無しです。これと同じロリンズとの2管で'57年5月の” Jazz Contrasts ”がありますが、'54年の”ムービン・アウト”の方が、若い頃の恐れを知らない神の宿ったようなロリンズが聴けるし、ケニーもそのロリンズにインスパイアーされたのか、いつもより熱い演奏をしています。動のケニーが本当のケニーだという人も偶にいますが、私は、動のケニーも静のケニーも大好きです。

 ■2)MOVIG OUT のジャケット・メンバー、録音、その頃のロリンズ
 ジャケットは、

 メンバーは、
 1曲目~4曲目  1954年8月18日、ニュージャジーのハッケンサックのRVG*の自宅居間のスタジオ
 ケニー・ドーハム(Tp)
 エルモ・ホープ (P)
 パーシー・ヒース(B)
 アート・ブレイキー(Ds)解説によると、この日ハイハットを忘れてきたらしい。

 5曲目      1954年10月25日、ニュージャジーのハッケンサックのRVG*の自宅居間のスタジオ
 セロニアス・モンク(P)
 トミー・ポッター(B)
 アート・テイラー(Ds)

 *RVG:ルディ・ヴァン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)
 この後、ロリンズは、生涯3回の雲隠れの1回目を行う。1回目は約1年間で麻薬を止めるためと油井先生は見ていた。その1年間は、シカゴで医者にかかり治療をした後、工場の守衛をしていた。といっても仕事は主に掃除であるが辞める時、掃除の腕を気に入っていた社長がとても惜しがった。次に手がけたのは、トラックの荷積みであるが、これは腕を何度も傷つけたため辞めてしまった。丁度55年にマイルスが、クインテットのテナーにロリンズを招聘したが、このような状況でロリンズは断ったので、その話は、トレーンに回ってきてトレーンが起用されることになったのは皮肉な話である。55年の11月にシカゴにクリフォード・ブラウン&マックス・ローチクインテットの公演が来て、テナーのハロルド・ランドがカリフォルニアに帰ることになったのでシカゴだけの助っ人という条件でロリンズが出ることになった。しかしロリンズは、結局NYに付いて行くことに変更し1回目の雲隠れは終わるのである。

 ■3)MOVIG OUT の英語版ライナーノーツの訳(ByFK、少し改変)
 この 1曲目~4曲目が初めて10インチLPで発売された時、評論家の多くはロリンズの偉大な才能の萌芽に気がつかず、あら捜しをして難癖をつけることに終始したという。でも同輩のミュージシャン達は早くからロリンズの非凡さを見抜いており、新しく登場した天才として高く評価していた。このセッションでは、アート・ブレイキーをリズムの要に、アップテンポのナンバーを中心にエネルギッシュなプレイが繰り広げられる。ケニー・ドーハムとエルモ・ホープのプレイも聴きものだ。妖艶な女優ヒルデガルドを思わせる”シルキン’サテン”では、ロリンズの温かみを帯びたバラード奏法を披露する。一方、1954年10月のモンクと共演したカルテット・セッションからの5曲目”モア・ザン・ユー・ノウ”は、長尺でロリンズのリリシズムが際立っており、モンクの簡潔だが充分に詰まったプレイと好対照をなしている。2人の音楽性が見事に溶け合ったプレイであり、彼らの共演レコーディングがもっと残されていたらと思わずにはいられない。

 ■4)MOVIG OUT の各曲
 私が好きなのは、と書こうとしましたが、好不調の激しいロリンズの好調時のアルバムだけに全曲お気に入りです。時期的には、まだバードの影響もありますが、5曲目なんかは、ロリンズ流のハードバップが既に確立されています。また、5曲中4曲がロリンズのオリジナルであり、作曲の才能もSilkn' Satinを作ったと思うと、中々のものです。

 1.Moving Out (4:27)(ソニー・ロリンズのオリジナル)
 出だしから、アップテンポのアドリブでぐいぐい吹きまくるロリンズ。この頃彼は全く怖いものは無かったはずだ。只管、神が宿ったようなアドリブをストレートに吐き出すロリンズが何とも豪快。対するケニーもロリンズにインスパーヤーされてハイノートを風のように軽やかに吹き抜ける。続くエルモのピアノも乗りに乗って流れるように絶好調。ミスタースインギーって名づけよう。最後に戻ってのロリンズのソロも自由自在。エンディングも鮮やかに突然のエンド。

2.Swingin' For Bumsy (5:45)(ソニー・ロリンズのオリジナル)
 ドラムスの短いイントロから、ケニーが絡むが一気にロリンズのソロがうねる。ここでもロリンズのうねるアドリブは冴えわたる。天才特有の直感とひらめきに頼る嫌いはあるが、天衣無縫。続くケニーもまたまた熱いが変化に富んだアドリブを展開。次に出るエルモもアイデア溢れるアドリブを披露。その後のブレイキーのドラムスもハイハットは無いが気合充分。ロリンズに戻るが最後のエンディングは、ケニーに任せて高らかにフィニッシュ。

3.Silkn' Satin (3:58)(ソニー・ロリンズのオリジナル)
 この頃のロリンズは既にバラードの名手である。後の、コロッサスの”恋を知らない貴方”のバラードセンスを既に匂わせる。”恋を・・”の時は、最初から構成から何から全て考え作り込んだ感がある。しかし、この”Silkn' Satin”ではその時の感情の趣くままに歌心一杯にバラードを楽しんでいるように感じる。これが真のロリンズなんだろうと思う。僕のお気に入り。コルトレーンもバラードの名手であると思うが、ロリンズのこの天性のバラードフィーリングには適わない。

4.Solid (6:24)(ソニー・ロリンズのオリジナル)
 これぞ、ハードバップという感じかな。ロリンズのアドリブにも直球ながらある種の余裕を感じる。ケニーのソロは、ここでは少し落ち着いて余裕綽々のプレイを聴かせる。このアドリブは好きだ。続くエルモも絶好調で軽快に。その後のブレイキーのドラムスもリラックスしたもの。最後のテーマも、ロリンズとケニーが4バースを楽しそうに交換して、ロリンズにケニーが寄り添って終わる。

5.More Than You Know (10:48)(William Rose-Edward Eliscu-Vincent Yourmans)
 最初から、ロリンズのテーマでスローバラードをゆったりと余裕たっぷりにスタート。ここからは、アドリブが泉のように溢れてくる。ここまで長尺のバラードを飽きさせずに歌心たっぷりに吹き抜けるのはロリンズ位だろう。やはりこの頃は神が降臨しているに違いない。ロリンズに身を委ねて心地よいリリシズムのフィーリングに包まれる。続くモンクも彼特有のメロディに不協和音を持ち込むことはここでは抑えてロリンズに合わせている。このソロが又良いのである。モンクファンは不満であろうが。

 ■5)You Tube
 ソリッド以外は、今は上がっています。

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