偶然見つけた曲である。
寡聞にして、全く知らない作曲者だった。
しかし、YouTubeだけでも3本上がっているし、あちらでは結構演奏されているようだ。
ヴェルビエ音楽祭ではプレトニョフがケント・ナガノ指揮で演奏している。
なかなか楽しい曲だ。
ウィキペディアによると、ツファスマンはソビエトジャズの重要人物となっていた。「ソビエトジャズ」というジャンルも初耳だった。官製ジャズ、みたいなものだろうか。
しかし、モスクワ音楽院を出ているし、ガーシュインやカプースチンをクラシックに入れるなら、これもクラシック音楽だろう。
なぜ、日本では演奏されないのか、何度か聞きながら考えた。
曲の内容的には、カプースチンとあまり変わらない感じがしたので。
一つには、カプースチンは全音から出版されて普及した、というところがあるだろう。
そして何よりも、このツファスマン、ピアニストが名手でないと、さまにならない感じを強く受けた。
非常に技巧的な部分が多く、そこを支える管弦楽は、わりとありきたりの和声進行をしているから、ピアノで聞かせてくれないと、つまらない部分が増える。ミヨーの《屋根の上の牛》があまり演奏されないのと似た感じだろうか。
ありきたりの和声進行は、良く言えば安心感とつながるから、排除すべきものではない。バッハだってモーツァルトだって、そういう部分はある。
でも、ちょっとつまらないと思ってしまうのは、ショパンのバラード1番のコーダから始まるようなところがあるから。
おいしいテーマの後に、このような技巧的部分は聞きたいなあ。
(ショパンに負けるとなると、相当構成力が弱いことになるが。)
視点を変えれば、ピアニストがこの曲に惚れ込むと、なかなか楽しい世界が作れるだろう。
察するに、ツファスマンもそのような名手だったのだと思う。
そして、それを楽しむソ連邦人民……。
と、そこまで想像すると、ちょっと悲しい、やりきれない思いもわいてくるが、そこはあまり深く考えずにピアノの妙技を楽しみたいところだ。