華氏451度

我々は自らの感性と思想の砦である言葉を権力に奪われ続けている。言葉を奪い返そう!! コメント・TB大歓迎。

安倍政権の正体見たり――厚労相発言

2007-01-30 23:42:08 | 現政権を忌避する/政治家・政党

〈最低の政治家による、最低の発言〉

 喜八さんや、dr.stoneflyさんluxemburgさん も怒っている。喜八さんは「正気の沙汰ではない」、dr.stoneflyさんは「心底頭悪いというか感性悪いというか」「真面目にコメントするのもアホらしい」、luxemburgさんは「いずれにしても政界から消えてくれ」と吐き捨てる。どちらのエントリからも、あきれてモノが言えないという思いがストレートに伝わってきた。そう……柳沢伯夫厚生労働大臣の、「女性は産む機械、装置」発言の話である。

(他の大勢のブロガーも怒りの記事を書いておられると思うが、ここ3日ほどドタバタしていたためブログを読んでいない。ついさっき、TBいただいたブログや普段よく読むブログなどを覗き始めたところなのである)

 私もこの発言について知った瞬間、最低だなと思った。今の内閣、今の国政を牛耳っている政治家の最低ぶりを証明する発言だと言ってもいい。

〈ゴメンですむ話ではない〉

 安倍首相は「不適切な発言であるから、厳重に注意した」そうだし、柳沢厚労相も記者団に対して「不適切な発言だったことをお詫びする」と述べたというが、同時に野党や市民団体からの辞任要求に対して、辞める気はないと明言している。「ただちに発言を撤回してお詫びもした」から――だそうだが、ほとんど開き直りとしか聞こえない。何でも謝ればチャラになる、と思っているのだろうか。そりゃ甘いんでないの。

 人間誰でも失敗するし、失言することもある。だが失敗にも失言にも、ゴメンですむものとすまないものがあるのだ。たとえば結婚式のスピーチで「新郎の勤め先は今、業績が悪化して大変だと聞きますが」などと言ってヒンシュクを買う類の失言(私の親戚に、これをやって後で周囲から叱られたオッサンがいる)。友人の新しいカノジョの前で、うっかり(友人がまだナイショにしていた)昔のカノジョの話をしてしまうとか。まあ、よほどのことがない限り謝れば許してもらえる。

 ゴメンですまないのは、その発言が本人のトンデモナイ価値観や感性に由来している場合。厚労相の発言は、まさしくそれにあたる。女性は生む機械・装置であるの、男性は種馬であるのといった発言は、その人間の深層にそういう意識がない限り決して出てこない。(ちなみに我らが都知事も、その種の失言の多いヒトである)

〈言葉が不適切?!〉

 首相も厚労相も、そして新聞等も、「不適切な発言」という。まるで「言葉の選び方を間違っただけだ」と言わんばかりに。

 そうではないのだ。たとえ「生む機械・装置」を「生む性」とか、あるいはキレイげに「人類を未来へつなぐ存在」とか言い換えたとしても、同じことである。言葉そのものの問題ではない。

 やっぱりね、というのが私の素朴な感想だった。あんたらは、国民を――というか「その他大勢の庶民」を、いくらでも取り替えのきく道具、部品だと(心の底で)思っているんだよね。半世紀以上も前、兵士は一銭五厘(※)で集められる道具であったそうだ。その意識が、今の為政者にも脈々と受け継がれている。

※当時のハガキ代。この値段でいくらでも徴兵できた。余談だが、知り合いに戦争中に「馬の軍医」だったという老獣医がいた(もう故人であるが)。彼によると、人間の兵士は一銭五厘で集められるが、馬はそれよりはるかに金がかかるということで、馬の軍医は人間の軍医よりはるかに大事にされたそうである……。

〈まったく……あんたら正気か〉

「美しい国」の実現のために、庶民は黙々と道具にならねばならないらしい。今は本当に21世紀か。まさか私は、タイムマシンで8世紀に連れて来られたわけじゃあないでしょうね? ルシャナ仏建立のために――それが国創り(たぶん美しい国創り)の一歩だと言われ、おまえ達も幸せになるのだと言われて、庶民が絞り上げられた時代に。

 女性は生む機械・装置などという目の飛び出るような発言をする政治家達は、同じ口で国民は国を守る機械・装置と言いかねない。いくら何でもそこまで露骨な言い方は控えるかも知れないが(もっとも頭の程度を見ると、本当に言うかも知れん)、もうちょっとオブラートに包んだ言い方でしゃあしゃあと言うだろう。ちょっと目くじら立てられれば(という感覚のはずだ)、形だけはゴメンと謝り、舌の根も乾かぬうちに似たようなことを言うだろう。先頃「法案上程断念」されたホワイトカラー・エグゼンプションも、国民を(国を富ませるために! 国際競争力とやらをつけるために!)働く機械・装置としか見ていないものだった。

 少子化が問題だというなら、国民が子供を生み育てたくなる、そして生み育てたくなる環境を整えるのが政治家の仕事。「公僕」たる政治家は、それ以上のことはしなくたってよろしい。それなのに勘違いして、自分達がご主人様だと思っている連中が多すぎる。自分達は命令する側であり、おまえたちが「自己責任で」もっと頑張れと。喜八さんではないけれど、ほんと「あんたら正気か」。

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13 コメント

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ある意味正直。 (dr.stonefly)
2007-01-31 03:47:31
ご紹介ありがとうございます。
さすがに今回は擁護の声は聞こえませんね。アパ壷内閣は、なんともバカ正直で、「失言しない」ずる賢さがある政治家よりいいかもしれません。
この内閣がやろうとしている教育改革や改憲も、「国民を人間と思ってない」というベースがあるということでしょうね。
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赤紙で (×第二迷信)
2007-01-31 21:55:43
こまかいことをいえば、
徴兵は、「はがき」でなく、近所の役員さんが「赤紙」を持ってきて、「おめでとうございます!」と、直接手渡してたはずです。(硫黄島・・の映画では愛国婦人会のオバサンがくっついてきてた)

ちなみに、従軍看護婦や馬などの徴用は「白紙」だったそうな。

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一銭五厘の旗 (まつむし)
2007-01-31 23:40:13
はじめまして。時々拝見しています。

一銭五厘と言えば、花森安治の「一銭五厘の旗」を思い出します。

日本ペンクラブ 「見よぼくら一銭五厘の旗」
http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/guest/publication/hanamoriyasuji.html

花森は戦時中は大政翼賛会の宣伝部員として「欲しがりません勝つまでは」などの、戦争協力標語の普及などを進めた人でしたが、戦後は一転して、一切の企業広告を排した雑誌『暮らしの手帳』の編集者として、厳格な商品テストや一般女性の意識向上に生涯を捧げました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B1%E6%A3%AE%E5%AE%89%E6%B2%BB

「見よぼくら一銭五厘の旗」は昭和45年に発表されたものだそうですが、特に後半の部分を読みますと、あの頃からずっと、私たち庶民が置かれている立場も抱えている問題も、結局は同じことであったのかと、しみじみ思い知らされます。
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打倒長州政治 (あくつ真矢)
2007-02-01 01:50:17
自分達がご主人様ーそうそうあの感覚どうにかならないんでしょうかねえ。
勝てば官軍、何をしてもいいんだって言う彼らに、日本を語る資格などない!
打倒!長州政治を目指して、会津藩いざ出陣。
というわけにはいかないんですよね。会津藩は国(故郷)を守るために戦うことはしますが、外に出向いて戦うことはしませんから。
元祖武士道とはそういうことだ!愛国心とはそういうことだ!
誰に向かって言ってるんだか。。。
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擁護するつもりはさらさらないのですが。 (セコバイのトゥッティ)
2007-02-01 03:44:21
>さすがに今回は擁護の声は聞こえませんね。

さて、それは私のことでしょうか?
前回も別に何かを擁護したつもりはありませんし、今回も柳沢大臣を擁護するつもりなんてさらさらないのですが、「生む機械」発言で鬼の首を取ったかのように騒ぎ立ててる人々にはやはり一言言わしていただきたくなります。

柳沢大臣の「産む機械」発言、確かにひどい発言です。しかし、本気で柳沢発言を糾弾するならば「少子化対策」自体にNOと言うべきではないでしょうか。

なぜなら、まず柳沢大臣が失言しなかった場合のことを考えてみてください。つまり、「15~50歳の女性の数は決まっている。産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人頭で頑張ってもらうしかない」とは発言せず、「15~50歳の女性の数は決まっている。少子化に歯止めをかけるためには女性ひとり当たりが産む子供の数が増えるようにしなければなりません」とか何とか発言したと考えてみるのです。

おそらく、わりと多くの人が「確かに少子化に歯止めをかけるためには女性ひとり当たりが産む子供の数が増えることを考えなくては…」と、納得するのではないでしょうか。だとしたら、それはひどい発言だと糾弾されている柳沢大臣の考え方と何が違うのでしょうか。

報道されている柳沢大臣の弁解からもわかるとおり、彼は話をわかりやすく表現しようと思って「産む機械」なんて言葉を使ってしまったわけですね。ということは「少子化対策」それ自体に今回の柳沢発言と同様の思想が盛り込まれているということではないですか。
そういう本質的なところに切り込まないで、まともに取り合う価値もないほどの失言だけを取り上げてぎゃあぎゃあ騒ぎ立てることに何の意味があるのかと私は思います。

エントリーを読めば華氏451度さんもこの件は単に「産む機械」という発言=言葉を批判するだけではダメだという認識をお持ちだということがわかります。dr.stoneflyさんのページも読ませていただきましたが、やはりこの発言が実は重要な問題をかかえているという認識をお持ちのようです。

皆さん認識はされているようです。しかし、どうも柳沢大臣(もしくは安倍内閣ですか?)を責めることばかりに頭が一杯で本質に迫れていないような気がします。

>少子化が問題だというなら、国民が子供を生み育てたくなる、そして生み育てたくなる環境を整えるのが政治家の仕事。

と書かれていますが、この『国民が子供を生み育てたくなる環境を整える』ということだって「生む機械・装置」という言葉を使って説明できてしまうわけです。悪趣味なのでここでわざわざ言葉にはしませんが。
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Unknown (あくつ真矢)
2007-02-01 10:35:23
セコバイさんのお話、私には難しいところがあります。
国会で、まともな議論がされていないことは、もう誰もが認めるところです。
自民党の一党独裁で、それもごく僅かな者の考えだけでごり押しされてこの国の方向が決まっていく。
社民党も共産党も、もちろん民主党もそんな与党に対して反論できるだけの根拠を持たずに質問に立っているわけです。
そもそも、国会で論ずるべきテーマを話し合う時間を奪うかのように、いつも新たな問題が噴出するのです。
この国の人々は納豆事件からも分かるように、メディアに簡単に操られます。
未履修問題、いじめ問題、自殺予告手紙、教育が乱れているから教育基本法改正。まんまと世論は騙されます。
セコバイさんのおっしゃる意味はこう解釈していいのでしょうか。
ごく僅かな者の意見がいくらでも国民の意見にすり替わる危険性がある。だからこそ、野党は根拠となるもの、代案になるものをしっかり準備して「議論」をしろということでしょうか。
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安倍氏イエローカード三枚で退場か? (布引洋)
2007-02-01 17:15:44
4ヶ月で3人も辞職では安倍首相の任命権責任を嫌でも問われます。
それで今回の柳沢大臣は形だけ謝って何としても留任させる腹づもりのようです。
自民党内部でも選挙を控えている議員は『此れでは選挙が戦えない』と辞職を求めていますが空気が読めない安倍晋三はあくまで自分の責任になるので拒むでしょう。
エリート官僚出身で一般常識に欠けるために一発退場のレッドカード発言だと気が付かない柳沢伯夫大臣と、生まれが良すぎて正しい判断が出来ない安倍首相とは良いコンビです。
超党派の有識者に間違いを正すように勧告されても反省せずに最初の筋書どうりの戦いを続けるつもりのブッシュ大統領とどちらが先に転ぶのでしょう。
此処はもう少し柳沢氏や安倍氏には頑張ってもらいましょうか。(海外でも報道されているので国辱モノですが)
そういう意味では、言語明瞭意味不明のセコバイ氏のコメントも役立ちます。
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Unknown (華氏451度)
2007-02-01 21:35:10
皆さん、いつもコメントありがとうございます。私は「産む機械、装置」という言葉自体が悪いとは言っておりません(いや、むろん悪いのですが)。後で「産む役目の人」と言い換えたそうですが、それだって同じ。

布引さんではありませんが、もう少し頑張ってもらって、もっともっと失言していただいたほうがよろしいかも、などと思ってもいます。
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見えちゃったんですね~。 (こば☆ふみ)
2007-02-01 21:56:09
華氏さま こんばんは(^^
柳沢氏の「機械発言」は政府が考えている「国民のあり方」を端的に表現してくれたんですね・・・ですから、いくら消臭・脱色・言替え、否定しても人の心を摑んで不快な気分にさせるんでしょうね。
大臣がいくら留任して頑張っても国民には本質が見えちゃったんだから・・・今の政治の本質がザックリと見えちゃったんです。
これからもじっくり見守りましょう。
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同じ穴の狢なのです。 (セコバイのトゥッティ)
2007-02-02 19:04:23
あくつ真矢さん

>セコバイさんのおっしゃる意味はこう解釈していいのでしょうか。
ごく僅かな者の意見がいくらでも国民の意見にすり替わる危険性がある。だからこそ、野党は根拠となるもの、代案になるものをしっかり準備して「議論」をしろということでしょうか。

私の先のコメントですが、文面以上のことを何か示唆したつもりはありません。(意味不明瞭と指摘されていますが、文面そのままで意味通じませんかね?)

ですから“野党はどうするべき”というようなメッセージは全然意図していなかったのですが、あくつ真矢さんの文脈にそって言うならば、以下のようになるかと思います。

『ごく僅かな者の意見なのではなく、実は多くの国民も同じように考えている。だから野党は国民(マジョリティ)の本質をしっかり理解してから「議論」をしろ』。

華氏さんも『後で「産む役目の人」と言い換えたそうですが、それだって同じ。』と言っていますが、その通りなんですよ。

つまり、柳沢発言を生み出した思想というのは少子化対策そのものの思想なんです。
「機械・装置」という言葉の語感があまりにセンセーショナルなので国民全部を敵に回したような状況になっていますが、実は多くの国民は少子化対策そのものは必要だと考えている。つまり、柳沢氏と同じ穴の狢なのです。

そういう意味ではこのエントリーにトラックバックしている「とほほブログ」さんという方の考えはこの問題の本質を突いていると思います。(ただ、人口が減っても一人当たりのGDPを保持するというのは不可能だと思うので私は支持しませんが。)
http://t-t-japan.com/blog/tohoho.cgi/permalink/20070131204420

私は、ここで柳沢氏を辞任に追い込めなければ、今回の騒動の揺れ戻しが野党を襲うと見立てています。
実は本質的に柳沢氏と同様の思想を持っている多くの国民は「機械・装置」というセンセーショナルな言葉が喉元を通り過ぎた途端、「大した問題でもないのに国会までボイコットして何やってんだ野党は?」「やっぱり野党ってのは意味のないこと騒ぎ立てるだけで何にも出来そうにないな」という印象を抱くことでしょう。
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