国道8号線(E66) はスロヴェニアを通ることなくオーストリア国に入ることの出来る南端の
国道である。 オーストリア山中に端を発したラーバ (Rába) 川はドナウ川に流れ込む大きな
支流でハンガリー国土を蛇行しながら流れている為、国境もリアス式海岸の如く複雑に入り込ん
でいる。 それもあってか、国8国境沿いの南側一帯はオールシェグ (Őrsegi) 国立公園が横た
わり野生の楽園となっており、中世の教会もそのままの姿で残っているものが多い。
以前にも取り上げたことがあったが、より多くの写真を残したい意図もあり、再度の投稿である。
1.オーリセント・ピーテル教会 (Őriszentpéter templom)
カトリック教会で1230年頃にロマネスク様式で創建され、14~15世紀にゴシック様式で
オスマントルコ軍の攻撃に備え補強拡張された。 17~18世紀に宗教革命で改革派(カルヴィ
ン派)の教会として使われていたこともあったが、1730年よりローマカトリックに戻り、
現在の姿は1929年に改築されたものである。
Mar. 28 2019 Jun. 09 2007
12年の時の流れは教会の長い歴史の中では、ほんの一滴か、変化は見られない。
Mar. 28 2019
教会の特徴としては、窓の真ん中で仕切った柱を持つ尖塔、縁取り模様の付いた傾斜した
スリット窓、屋根の庇の下にある半円形の紋様が典型的なロマネスク様式を示している。
門の周りにあった屋根や壁画は破壊、そして上から漆喰で塗り潰されており、歴史を感じさせる。
単身廊の内陣 Jun. 09 2007
壁に描かれていただろうフレスコ画は漆喰で塗り潰された後、改革派に所有されていた
時代の18世紀頃に上書きされた聖書の引用文が祭壇上の壁に残されている。
<ロケーション>
野生の公園 (Vadas park) には、多くの行楽客が訪れるらしい。
2.ヴェレミール (Velemér) の聖三位一体教会
12世紀の中頃にロマネスクとゴシック様式が混在する形で建てられたアルパード時代を
代表する教会。 この教会も17世紀始めの宗教革命の折りにカルヴィン派の教会となったが
1732年にカトリック教徒に戻された。 現在の姿に改築されたのは1941年であった。
Jun. 09 2007
壁に小さい四角い穴が開いているのは壁乾燥の為の通気口(多分、壁画の保存が目的)
教会自体は非常に小さいが、壁面いっぱいに描かれているフレスコ画はアクイラ・ヤーノシ
の作品(1377年)で、かつてハンガリー史で塗り潰された復元不可能な壁画の多い中で、数
少ない鮮明に残された、まさにハンガリーの貴重な宝物と云える。
単身廊で壁面に隈なく描かれているフレスコ画に圧倒される。
小さな祭壇部の壁面にも、
祭壇と礼拝席の境目にも、
礼拝席の壁にも、
3.チェストレグの聖モーリツ教会 (Csesztregi Szent Móric templom)
15世紀後半にゴシックとロマネスク様式が混在する形で創建され、18世紀にバロック様式
で再建された。 教会内部のバロック様式のフレスコ画は、1803年に献納されたもので
前出のヴェレミール教会の壁画(ロマネスク様式)ほど古くはない。 対比すると面白い。
Jun. 09 2007
祭壇側の身廊
入口側2階席と天井のフレスコ画
祭壇部天井のフレスコ画
これにて「国8沿線(3)ヴァシュ郡、中世の教会」は、お終いです。
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