個人の戦争体験を活字として後世に残そうと運動している大阪の新風書房の「孫たちへの証言」32集に応募したところ、74の入選作品の一つに選ばれた。僕の原稿は、敗戦直前の昭和20年6月から7月にかけて、中学3年生であった僕が、敵の本土上陸迫る、千葉県東葛飾郡梅郷村(流山市)の利根運河の江戸川河口で、浚渫工事に動員させられた時の体験だ。74年経った今でも当時14歳だった少年の過酷な体験は忘れられず応募した。
「孫たちへの証言」第1集が出版されたのは昭和63年だそうで、それから30年余その、新風書房が出版した個人の戦争記録は32集で2612にのぼる。戦争が年々風化しつつあるというのに大変な記録である。しかし、残念なことは、出版主で編集責任者である福山琢磨氏(85)がPR誌で書かれているが、高齢化が進み、直接戦争を体験した世代が少なくなり,他人からの伝承による作品が多くなってきたことだ。事実、最新の32集では「体験編」と「伝承編」と二つに分けて編集されている。
今や戦争を体験している世代の中心は戦争中都会から地方へ集団疎開した年代で80歳代である。そのあとの世代といえば、戦前生まれといっても、孫たちへ伝える戦争体験はない。福山氏はPR誌の中で、”(「孫たちへの証言」出版は)は、継続か終刊か迫られる選択”と書かれているが、確かに直接、戦争を伝える世代は減少してきた。しかしなんとか戦争が風化させてはならない。貴重な戦争記録として既刊の「孫たちえの証言」を例えば再編集して文庫本といて残したいものだ。
自費出版、私家本のような形で現存する戦時記録・日記など(従軍兵士、戦地での捕虜収容所、外地からの引揚者、戦災被害市民、疎開体験)などを収集して、検索可能になるように、全文書・画像・音声をデジタル保存する国立のアーカイブ文書館のような施設ができるといいのですが???
東京都には、
昭和館
https://www.showakan.go.jp/
しょうけい館
http://www.shokeikan.go.jp/
平和祈念展示資料館
https://www.heiwakinen.go.jp/
などがありますが、
「総合的デジタル集大成」には、ほど遠いかもしれません。
特に、
いまや、ほとんど実際に戦地に赴いた従軍兵士経験者は逝去されてしまい、孫世代への伝承は困難です。
また、
中学・高校の国語や歴史の副教材として、
会田雄次:「アーロン収容所」(中公新書)
小松真一:「虜人日記」(ちくま学術文庫)
山本七平:「私の中の日本軍」や「ある異常体験者の偏見」
などを使って、夏休みの課題にして、読後クラスで討議して、伝承の一助としてはどうだろうか?