「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

「イスラム国」に振り回される安倍中東政策失敗のツケ

2015-01-25 05:52:22 | Weblog
「イスラム国」が日本人人質の一人、後藤健二さんのビデオ映像を通じて、もう一人の人質、湯川遥菜さんがすでに処刑された旨示唆し、後藤さんの釈放の釈放の条件にヨルダンに拘束中の自分たちの仲間である女性死刑囚の釈放を上げてきた。日本政府にとっては最悪のシナリオである。安倍総理は深夜の国家安全保障会議の後、政府があらゆる外交ルート、手段を通じて後藤さんの釈放に取り組んでいると語った。在外邦人の安全保護は、国の法律で決まっている。是非実現して欲しい。

今回の事件は安倍内閣の中東政策の失敗である。僕のような市井の徒でさえ、安倍総理の出発の前に、あまり同地の問題にはコミットするなと小ブログで忠告していた。昨日テレビ(TBS)の報道番組をみていたら、中東問題の権威で東大名誉教授の板垣雄三氏が、僕と同じ趣旨のことをいっていた。安倍総理の中東歴訪は日程上、この時期で仕方がなかったかもしれないが、訪問国の選定が間違っていた。さらに、安倍総理のイスラエル訪問時のネタ二エフ首相との、あの親しげなテレビ画像をみれば「イスラム国」ならずとも、日本が欧米と同じような外交スタンスの国に変容したと思うに違いない。

「イスラム国」の問題を含めてアラブ諸国の政治混乱の根源はパレスチナ問題である。戦後の第一次中東戦争(1948年―49年)以降、パレスチナからヨルダン、レバノンなど隣国に逃れた避難民は400万人に上っており「イスラム国」の中にもこの難民がいるに違いない。こんなことは中東問題に関心があるものにとっては常識である。板垣教授もテレビで語っていたが、安倍総理の中東訪問時、すでに「イスラム国」に二人が拘禁されていたことは、外務省も把握していた。安倍総理の発言次第で、今回のような事件が起きることは予想されていたことだ。

同胞の人道優先の立場を貫くべきである。世界からなんと言われても「イスラム国」の提案をきちんと精査したうえで受け入れるべきである。結果的には「イスラム国」に振りまわされてしまうが、わが国の中東政策の今後を考える上でもそれのほうがよい。ヨルダンのアブドラ国王の説得に当たるべきである。高い”月謝”を払うことになるが、やはり日本は独自の中東政策を保持すべきであった。


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4 コメント

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頼りない (chobimame)
2015-01-26 09:52:25
近年の政治を見ていると日本独自のカラーのような物が失われ、欧米の顔色を見てばかりのような感じです。欧米は、日本が独自のカラーを打ち出せば軍国に走ると思うのか、はたまた日本がなにもしていないうちから白旗をあげているのか知りませんが、毅然とした姿勢と日本人としてのプライドが、完全に欠落している政治をしています。その頼りない姿勢が、全ての外交にも及んでいますし、足元を見られています。戦前の日本のようにとは思いませんが、国としての姿勢を確立して欲しいです。
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先人たちの意気ごみ (kakek)
2015-01-26 12:05:04
chobimame さん
戦前、満州の地で巨大の富を得た山下太郎氏が1960年代、サウジアラビアと直接交渉し、クウエートとの中立地帯の海底油田に成功したのはご存知の通りです。結局、この”日の丸油田”は、欧米の石油コンチェルンの反対に会い、失敗に終わってしまいましたが、先人たちには日本人としての意気がありました。わが国は、この地域には、まったく”負”の遺産がないのですから、独自の外交が展開ができるのです。欧米にはユダヤ問題があり、イスラエルの建国にも責任があります。しかし、日本は特にイスラエルに対して顔色をうかがう必要はありません。
400万とも500万ともいわれるパレスチナ難民にとって、安倍総理のイスラエルへの肩入れは、やはり十字軍の一員と映るでしょう。
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今の人命と将来の人命の比較考量 (lordyupa)
2015-01-31 00:29:52
昔はゲリラ、最近はテロとよばれている暴力行為に対して、一番大事なのは、「今とらわれている人質の生命を救う特定の方法が、今後将来行われるかもしれない人々への犠牲を増やしてならない」ことだと思います。もし、将来の犠牲が大きい手段しかとれない場合には、最悪、今とらわれている人を犠牲にすることが、「人命をもっとも尊重」することなると思います。きわめて重たい判断が問われる。


1977年のダッカでの日本赤軍によるハイジャック事件では、福田内閣が、「人の命は地球より重い」と発表して、日本赤軍というテロ組織の要求通り、犯罪者9人を釈放し、身代金16億円も満額払った。人質として捉えられていた乗客は解放されたが、この日本政府による措置はその後、この9人の多くが新たなハイジャック等のテロ事件に加わったこと、あるいは600万ドルの身代金が赤軍派の資金となって様々な非合法活動、テロに使われたことで・・・国際社会からは、日本人は自分達の血を流さず、人の血をカネで購う民族。おどせばいくらでも金を吐き出す日本人。テロなど暴力に極端に弱く何一つ手が打てない無防備な国と言う定評が世界的に広がった・・・「日本はテロへの援助、育成、テロ輸出国だ」とごうごうたる非難を浴びた。また、この事件以降、アジア、中南米などで多数の日本人に対する誘拐・殺害・工場店舗の爆破など様々なテロが続いた。

当時からイスラエルはハイジャック犯に対しては一切の妥協をせず、特殊部隊を突入させ制圧するという強硬策を徹底しており、その為に人質の中にも多くの死者が出るということもあったが、この徹底した強硬策を見たテロリスト側が「イスラエル相手に人質作戦をやっても効果なし」と判断し、イスラエルのエルアル航空は、「世界一ハイジャックの起こりにくい航空会社」と言われている。
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情勢分析の甘さ (kakek)
2015-01-31 10:13:24
lordyupa  さん
安倍総理の今回の中東訪問は、現地大使館の情勢分析の甘さからくる失敗だったと思います。その第一は、親日国のといわれるヨルダンでさえ、「イスラエル国」をテロと思わぬ人が32%もいる事実だ。「イスラム国」の宣伝ビデオは、日本を有志同盟の一員とみなし十字軍と同じだとしています。そして拘束中の日本人は殺害すると公言していました。
そんな中で誤解を呼ぶネタにエフ.イスラエル首相とのことさら親しげな会談、カイロでの2億ドル援助発言です。イスラエル訪問に際して日本から経済ミッションを連れて行っていますが、これをめぐって、おかしな話が中東で流布されています。
安倍総理は、現地情報の把握の甘さから、今回の訪問は失敗といわざるをえません。
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