「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

亡くなったノンフィクション作家 中島みちさんの別の一面

2015-10-30 13:57:10 | 2012・1・1
ノンフィクション作家中島みちさんが84歳での亡くなられた。新聞の死亡記事は”患者の立場から医療と法律の接点の問題を長年執筆された”と紹介しているが、中島みちさんには「日中戦争いまだ終わらず マレー”虐殺”の謎」(1991年 文芸春秋)という名著がある。今年4月、僕は「大東亜戦争とマレー 昭南 英領ボルネオ虐殺の真相」(朱鳥社)を出版したが、そのまえがきで、中島さんのこの著書に教わることが大であったと紹介してる。

中島さんは4年9か月に渡って現地取材をまじえて、この本を執筆、当時”無辜(むこ)の華人虐殺”として日本の新聞にも誤って報道されていたののに対して、数々の資料から、”虐殺”ではなくて第五師団の通常の緒戦にこける”マラヤ3月作戦”であることを証明した。

中島さんの舅にあたる中島太久郎中将は、マレー作戦の一翼を担った第五師団(広島)長だったが、生前、中島さんに対して”職業軍人の家族は、あれだけの人間を不幸にした戦いには一言も語ってはいけない”と語っていたそうだが、中島さんは著書のの中でこれに背くことになったが、”なんとしても火中の栗を拾わずにはいられない気持ちが著作にさせたが、今は亡き舅も夫も、私を許してくれているのではないかと思う日もある”と書かれている。そして”この世の不条理に哭き,死んでいった彼我の人々の無念、この人々苦しみと死がせめて明日の世界の礎として生かされることを祈ります”と結んでおられる。名著である、一読をお勧めする。合掌。

中国の一人つ子政策廃止と日本の希望出生率維持

2015-10-30 06:52:45 | 2012・1・1
中国共産党の重要政策を決定する会議で1979年来、36年間続いてきた”一人っ子政策”の廃止が決まった。経済成長を支える労働人口が減少しはじめ、2050年には60歳以上の高齢者が全人口の35パーセントを占め、世界一の高齢者国家となる危機感からの政策見直しのようである。

折りも折、日本でも安倍内閣の目玉政策の一つである”1億総活躍社会実現”のための国民会議が開かれた。各界の代表から建設的な意見が出され、アベノミクスの新三本の矢の一つである「希望出生率1.8」も検討されたようである。

内閣府の人口統計([HP)によると、わが国の出生者数はは戦後の第一次ベビーブーム時には、270万人、4.3をあったが、これをピークに減り続け、1966年の「ひのえうま」年には1.53まで落ちた。それが2005年には、さらに減少1.26までになった。06年からは多少アップに転じたが、14年から再び減少、15年の推定では100万人を割り込み1899年統計を取り出して以来の最低値が予測されている。

一方、内閣府の今年の「高齢者白書」にとると、2050年には日本の総人口は1億人を割りこみ9708万人となり、さらには2060年には65歳以上の高齢者人口は39.9パーセントとなる見込みである。高齢者人口の比は中国どころではない。

人口減少による労働力不足の予兆はすでに始まっている。”介護人材確保のための外国人材の活用拡大は待ったなしだ”と榊原経団連会長が「1億総活躍会議」で発言していたそうだが、介護人材だけではない。2020年の東京五輪を前に建築業界でも人出不足が始まっていると聞く。これに対してわが国の外国人雇用は、姑息な欠陥だらけの”研修制度”に依存しているのが現状だ。

「希望出生率1.8パーセント」は、あくまで希望なのだろうが、人口予測の裏付けがないし、具体的な対策がない。「1億総活躍」会議でいくら議論が百出しても、実行に移さなければ意味がない。