「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

        東京からニイニイ蝉がいなくなった!

2011-07-26 05:53:52 | Weblog
ニイニイ蝉の鳴き声が東京(区部)から聞こえなくなって久しい。昔は7月初めから夏休みが始まる頃にかけて、あちこちでその鳴声を耳にしたものだ。松尾芭蕉が立石寺で詠んだ「閑けさや岩にしみいる蝉の声」の、あの蝉は時期場所からみて、このニイニイ蝉だったといわれている。東京では夏の到来を告げる先がけだった。

ニイニイ蝉だけではない。最近はあぶら蝉も少なくなってきた感じだ。わが家は東京でもまだ緑が多少残っている地域だが、今年はまだあぶら蝉の鳴声は一度も聞いたことがない。一説には都会のヒートランドによるものだというが、おかしな現象は、昔は住宅地にはあまりいなかったミンミン蝉やオヒーツクの鳴声を耳にするようになったことだ。

昭和10年代、少年時代僕は東京の目黒川沿いに住んでいたが、当時周囲にはニイニイ蝉やあぶら蝉はいくらでもいた。トンボも僕らが”しおから”とか”むぎわら"と呼んでいた類ならイやというほど捕れた。しかし、羽が透明に近い、、ミンミン蝉やオヒーツク、またトンボも”ぎん””ちゃん”と呼んでいた、大型のヤンマーは高台の池田山へ行かないと取れなかった。

池田山には皇后陛下の実家の正田家の邸宅(現在品川区立ねむの木公園)があった。僕ら悪童は、竹ざおの先にモチを塗りつけ、お屋敷の庭に忍び込み”高級”の蝉やトンボを取ったものだ。もう70年も前の話だが、都会から緑が失せ、小川も暗渠になって、蝉やトンボも自然界から姿を消してきた。これが人間社会にどのような影響を与えているのだろうか。