「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

           ガイガー管と”死の灰”

2011-04-20 05:45:48 | Weblog
福島原発事故をめぐっておかしな風評被害が出ている。川崎市長が被災地への復興支援のため善意から瓦礫の処理を引き受けたところ、何を間違えたのか、市民から放射能汚染ゴミを処理するとは何事かと4千件も苦情が舞い込んだという。一方、つくば市では福島県からの転入者に対して、放射能検査証明書を要求したとのこと。信じられない。

これに類しているかもしれない。ネット情報によると、放射能を測定する器具が飛ぶように売れているようだ。器具の中に使い捨てのカード形式のものもあって、4千円で入手できるという。果たして正確に測定できるのだろうか。放射能測定器のことをガイガー管というが、僕はこの事を半世紀ぶりに思い出した。

昭和29年(1954年)3月、マーシャル群島で操業中の焼津のマグロ漁船「第五福竜丸」が米国の水爆実験の危険水域で被爆した。放射能を大量に浴びていて機関長はその後死亡、捕獲したマグロはすべて放棄された。この事件は当時、日本の社会を震駭させる大事件で、放射能チリは”死の灰”と恐れられ、科学知識のない一般の国民でも放射能を測定する器具のことをガイガー管と知っていた。

僕も老妻もガイガー管を知っていたが、昭和30年代生まれの娘は知らなかった。当然であろう。「第五福竜丸」事件後、日本では放射能の被爆はないし、原発についての「安全神話」の時代に入った。ガイガー管の名前も”死の灰”の恐怖も日本人の頭の中から消えてしまっていた。だから、放射能をめぐる変な風評が生まれるのも無理ないのかもしれないが、福島原発が一段落した時点で、もう一度わが国のエネルギー政策は見直さなければならない。