「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

         70年前の東京への望郷

2009-03-01 07:52:22 | Weblog
きのう遠縁の49日法要があり、生まれ故郷へでかけた。といっても、故郷は東京の
ビルの下。昔の名残はもう何も残っていない。僅かに昔JR山手線と貨物列車が走っ
ていた土手が残っているだけだ。土手の上を今も山手線は走っているが、冬には屋
根の上に雪を積んで走っていた貨物列車はもうない。

昭和10年代、僕はこの土手の上の踏み切りを渡って通学した。踏切番のおじさんが
いつも数人詰めていて、学童を安全に見守ってくれた。でも時には貨物列車が長い列
をつくり、この間僕らは"一台、二台、三台・・・”と数えながら通過を待った。戦争末期
にはこの線路の上を大勢の出征兵士を載せた列車が通っていった。僕らに手を振って
元気に戦地へ向かっていったが、そのまま戻らぬ若者も多かったのだろう。

納骨した墓地の上の高台に、むかし「建武神社」という、出来たばかりの神社があり当
時、人一倍、神がかっていた校長の命令で、僕らは神社の掃除を強制された。その神
社は戦後いつの間にか撤去されてしまった。その石垣の一部が残っているが、戦後生
まれの世代は、だれもそれが何の跡だか知らなかった。

法要のあった天台宗のお寺の境内には、1600年代に建造された石仏が二つ残っている。
徳川時代初期のものだ。400年の風雪戦火にも耐えて残ってきた。かたや「建武神社」は
僅か半世紀で破壊された。いかに今の時代の変遷が激しいか、望郷などといった生易し
いももではない。