「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

壱銭五厘時代!

2006-09-23 05:55:25 | Weblog
父の遺品の整理をしていたら壱銭五厘の未使用の葉書と次のように
僕宛に投函された葉書が出てきた。
「懐かしい壱銭五厘君よ,随分長い間御活躍になりました。いよいよ
今日でお別れです。壱枚買うと剰銭の代わりに五厘切手を押付けられ
たのも、もう過去の語り草です。「葉書は二銭、切手は四銭」の時代が
きました。サラバ壱銭五厘君!」 昭和十二年三月三十一日
父が当時六歳だった僕に葉書壱銭五厘時代の終焉の想いをこの葉書に書き、
ポストに入れたものだ。

「一銭五厘」というと戦時中徴兵された若者が自分の生命の安さを自嘲的に
喩えた言葉として使われている。一部では徴兵令状が「一銭五厘」で届いた
ように誤解されているが誤りだ。戦後アメリカ兵が自分のことをGI
(Government Issue=官給品)と自嘲したのと同じである。僕は一銭五厘の
葉書が値上げになった時期が昭和十二年四月なのに注目した。まだこの頃は
日支事変の前で国民の間で戦争気分はなかったし徴兵数も少なかった。

父が残した葉書によると「壱銭五厘」は別な”押付け”という理由で評判が
悪かったようだ。後世の人間が自分の知らない時代を推測するのは難しい。
今回の東京地裁の国旗・国家判決を見て、つくづくそう思った。判決前に
その時代を一方的な角度だけでなく総合的な角度からみてもらいたかった。
裁判官は時には歴史家でなくてはならない。