もう一つの怪は別の駅に現れた。
そこはJRとの乗り換え改札口が直結していて、その便利さをあたりまえのように感じるまでになっている。
だが、便利なのは乗り換えのときだけ、これが憎い。
久しぶりに東京に出て行ったので、帰りに昔懐かしい薩摩屋敷のほの暗い炉辺に座り、薩摩揚げで一杯と思って、京急ストアでちょっとした買い物をしてから品川駅の階段を登る。
コンコースにその店はない。
そうだ、駅の中だったのだと思い出し、改札を pasmo で通って入る。
なぜか改札の中のほうが店が多い。
確かこの辺だった、入り口のはっきりわかる店だったから見つからないはずはないと、ぐるぐる隈なく歩いたが、ない。
あらためて案内図を見ても、なかった。
立ち飲み看板を見つけたのでそこに入り、きびなごをむしゃむしゃやりながら聞いてみると、屋敷は去年なくなったという。
しっかり容量のある銚子だったので、ほどほどのよい気分になった。
乗り換え改札口に pasmo をかざして通ろうとしたら、真っ赤なランプが点いてパタパタ扉が閉まった。
改札機の故障かと思って隣に行ったがダメ。
駅員を呼ぶ。 pasmo をチェックする装置で調べ「○○時に入場なさいましたね、精算窓口で入場料をお支払いください」
仕方なく窓口に並び「150円です」に「その pasmo で」と言ったら、立ち上がって別の装置のところに行き何か操作をしている。
待ち時間はマックの60秒より長かった。
黙って渡された pasmo と切符を受けとって改札口へ。
また赤ランプ。駅員を呼ぶ。「精算券を入れてください」
精算券と pasmo のどちらを先に入れたか覚えていないが扉は開いた。
せっかくのほろ酔いもどこかへ飛んでしまったが、また戻るには赤ランプが待っている。
乗り越しでなくても精算が必要なのは覚えたが、精算券と pasmo をどう入れるかは学習効果ゼロ。
通行人に近い入場者から出店の利用料をとるのもどうかと思うが、それなら黙って pasmo から引き落としておけばよいのに。
そんな簡単なことをしてはいけないのか。
「いけませ~~ん」
亡霊の声が聞こえてくる。