漢字の「音(おん)」には、「呉音」と「漢音」があります。
まだほかにもありますが、主な「音」はこの二種類です。
日本語でいま使っている漢字の音読みは「漢音」のほうなのですが、その例外をこれまであまり気にしていませんでした。
最近、あるところで呉音を指して間違いだとする説に出会ったので、忘れないうちに書いておくことにしました。
捏造という、近ごろよく見かけることではあっても、あまりたちのよくない言葉があります。
捏ねて造る、土や粉を捏ねて何かを作ることなのですが、この過程を経ると、思ってもいない形のものが出来上がります。
この「捏」の字の音は「デツ」で、「ねつぞう」は誤読だという説を聞いておやと思いました。
これは間違って読んでいたのかというと、そうではなく呉音が「ネツ」だったのです。
「でつぞう」ではどうも感じが出ません。
「ねつぞう」と言うと、なにかねちねちと捏ねて造る感じが出ているように聞こえます。
捏造とは、元に何もない、まったくゼロの話を作り上げることではなさそうで、話を捏ねあげて、似ても似つかぬことにしてしまう、そういうやりかたを言うのでしょうか。
犯罪の証拠品に似せたものを、手軽にぽいと作って間に合わせるのは、捏造とは言いにくいのですが、報道がそれを捏造と呼ぶのは、偽造と言ったのでは、いかにもウソくさく気の毒だからでしょうか。