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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第8章−4 眠眠対夢魔ヒビキム

2018-11-16 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 眠眠はドリームカリバーを青竜刀の要領で振り回すと、渦巻きを生み出した。それはだんだんチャックが立っていられないほどの大きさになった。
 勢いをつけると眠眠はドリームカリバーを切り下ろした。七色の虹が広がり、すべてが一変した。可憐な娘は、紫色の羽を広げて99のタトゥーをまとった「操るもの」である夢魔ヒビキムに戻った。
 真の姿を見て、チャックは茫然としている。
「チャック、一緒に闘って!」
 眠眠が声をかけるのと、ヒビキムがハートのタトゥーをチャックに投げるのが同時だった。タトゥーを顔面に受けたチャックは、ばったり倒れ込んだ。
「シリウスには淫夢を見ながら眠っておいてもらう。お嬢ちゃん、私のタトゥー・クオンダリーで楽しんでもらうわ」
「夢魔のお嬢ちゃん、何の用だね?」
 サマンザはここで返事をしてしまったが、ヒビキムは薔薇のタトゥーの棘を引き抜くと青龍の首に突き刺した。
 思わず青龍がうめき声を漏らす。
「おあいにく様。夢魔の意識は深層心理でつながっている。あなたのやり口は、サマンザが深層心理の底に落ちて行く時、教わっていたの」
「おじいちゃん。すぐ助けるから、ちょっと待ってて」
「大口を叩くのも、今の内。見せてやろう、タトゥー・クオンダリー!」
 ヒビキムがタトゥーを次々と実体化させていく。
 右腕のタトゥーから巨大な吸血コウモリ。
 左腕のタトゥーから巨大な毒蜘蛛タランチュラ。
 右足のタトゥーから巨大な雪男。
 左足のタトゥーから巨大な悪蛇。
 右太もものタトゥーから巨大なナメクジ。
 左太もものタトゥーから巨大な毒蛾。
 最後に、ヒップのタトゥーからフランケンシュタインの怪物。
 眠眠は無意識の内に、闘い方を身に付けていた。夢では、恐怖に囚われればより相手の力が増し、逆に闘志を持っていれば相手は矮小化される。
 吸血コウモリの周囲には、暗闇が湧き出てくる。
 毒蜘蛛タランチュラの周囲には、蜘蛛の糸がだんだんと広がっていく。
 雪男の周囲には、吹雪が吹き始める。
 悪蛇の周囲には、ヒンヤリとした空気が満ち始める。
 ナメクジの周囲には、じめじめした空気が満ち始める。
 毒蛾の周囲には、鱗粉が漂い始める。
 フランケンシュタインの怪物だけは、ただゆっくり身体を不気味に揺すりながら近づいてくる。
 これだけのモンスターに襲われたら、普通の神経の持ち主なら心臓が止まりそうになってもおかしくない。
 その時、青龍が絞り出すように言った。「うつし世は夢。よるの夢こそまこと。夢魔の世界を垣間見ることを許された、江戸川乱歩という作家の言葉じゃ。だがお前にとっては、よるの夢こそうつし世。うつし世こそまこと」

          

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