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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第10章—9 アストロラーベの決断

2019-02-18 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「我はお前が造ったワンダーランズが最終決戦地となると確信していた。だからありとあらゆるシミュレーションをしておいた。我が血を半分吸い尽くせ! そうすれば記憶をお前に与えることができる。半分くらい血を吸われても我は死なぬ。だが、三魔性と使い魔たちのことは想定外の部分も多い。そこは、お前の予知能力と才覚で埋め合わせろ。半分の残った血で、我はこれから冥界最大のタブー2つを犯すことになる。
 よいか、マクミラ。元神官のお前は、人間界で悪の側に立とうとしても悪い波動の連中と一緒にいると耐えられなかったはずだ。それでよいのだ。悪は定義できても善は定義できぬ。善きことは善き者のすることとしか言えぬ。なぜなら自らを守るために何かを奪うことも、敵を倒すことさえ時として善となる」
「なぜ、いまさらそんなことを・・・・・・」
「お前たちは才能と修行によって神の力を磨き上げた。それはマクミラが冥界と繋がる一族だったからだし、ナオミが海神界と繋がる一族だったからだ」アストロラーベは一息ついた。「闇の力は違う。どんな一族でも、人間でさえ、怒りと怨みに己を任せてしまえば闇と繋がるし、最終的には虜囚となる。もし『神々の血を引くもの』が闇と繋がれば、その力はまさにおそるべきものとなる。究極の選択をお前たちに迫る時が来た」
「究極の選択?」
「このまま闘っても、魔性と魔獣たちを倒すことは不可能だ。万が一勝ち目があるとしたら、無理やりお前たちの力を完全に戻すことだ。人間界に来てからの経験が、お前たちを成長させていれば、さらに可能性は高まるかもしれぬ」
「わたしの覚悟はできている」マクミラが答えた。
「アストロラーベ、私も望むところ」ナオミも続く。
「冥界最高のネクロマンサーと呼ばれた私だ。お前たちを目覚めさせる秘術も心得ている。だが、それをすればお前たちは今のままではいられない」
「それは、いったい?」ナオミが言った。
「究極の秘技、最後の瞬間までその結果を伝えるのはやめておこう。後悔するかも知れぬぞ」
「後悔は絶対しない。可能性がありながら試さずに魔性のものたちの思い通りさせたら、それこそ後悔する」マクミラが言う。
「善き人間たちを助けるはずだったのに、これまで何もできなかった。だが、これこそ私の究極の使命の気がする」ナオミも言う。
「よいか、魔性たちもあれだけ強大になってはもう消滅させるのはムリだ。強い闇の力に守られているからな。万が一勝ち目があると言ったのは、もう一つの秘技を行い魔界との扉を開ける」
「魔界との扉を開ける!? いったいどうやって?」
 青白いマクミラの顔面が、さらに蒼白になった。
「ヤヌスの鏡を使う」
「そんな・・・・・・それはヤヌス神以外には禁じられた行為」

     

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