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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第10章—10 最大のタブー

2019-02-22 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「そうだ。冥界最大の禁忌を犯す。扉を開けただけでは魔界の住人たちが精神世界を通じて押し寄せてきてしまう。だから、こちら側からあちら側へ一方通行の裂け目を作る。そして一時的にダメージを与えた魔性と魔獣たちを一匹ずつ魔界へ送り返す」
「そんなことしたら、奴らが魔界で大暴れするわ」
「知ったことかと言いたいところだが、最高神と魔王たちの約束事を破ることになるな。さぞかしきびしい刑罰が待っているだろうな。だが、それが唯一の精神世界に下りてきてしまった奴らを追い払う手段だ」アストロラーベがマクミラの方を向いた。
「だから、今度の闘いではお前が指揮を執れ。我はヤヌスの鏡の禁断の扉を開き続けるために戦いに参加するわけにはいかぬ。もう用意はできている。ここにいる中から夢魔の夢の中に入り込むメンバーを選出する」
「夢魔の夢?」全員が、何のことかと聞き返した。
 夢魔の夢での戦い。
 深海でマーメイドと闘うこと、炎の中でサラマンダーと戦うことさえ、生ぬるく思えるほどの、それこそまさに最悪の悪夢。
 なぜなら夢魔が自由自在に舞台や戦闘相手を変えることができるのに対して、夢の中では自分自身も気が付かなかった潜在的恐怖が敵に回るからだ。夢魔が創り出した悪夢の中で死ぬことは、現実の死を意味する。心が死んでしまえば、身体だけが生き残っても何の意味もない。
「だが、心配するな。心強い援軍が向かっている」
「援軍?」
「蛇姫ライム、氷天使メギリヌ、唄姫リギスが、夢魔の夢に殴り込みをかけると聞いて、『そんな楽しそうなこと、いままで聞いたことがありませぬ。お楽しみを独り占めしようとしても、そうは行きませぬぞ』と言って現地で集合することになっている」
眠眠は、悪魔姫ドルガも援軍に加わっているよと言いたかったが、青龍から口止めされていた。
「さあ、時間がない。分担を決めておいた。軍師のマクミラは、すべての闘いで指揮を執ってもらう。まず、ゾンビーランドで待ち構えているのは、ビザード軍団とドラゴムだ。ここには、将軍殿とライム、そしてミスティラに行ってもらう。
 次に、ノーマンズランドで待ち構えているのは、ジェノサイダス軍団だ。ここには、メギリヌとリギスに行ってもらう。
 次に、ナイトメアランドで待ち構えているのは、“ジル”・シュリリス軍団とフェルミナだ。ここには、眠眠に行ってもらう。
 最後に、アポロノミカンランドで待ち構えているのは、・・・・・・夢魔に操られた孔明だ。ここにはナオミに行ってもらうが、秘密の助っ人を考えている。
 我とスカルラーベは降臨した神だからよいが、夢の中でも戦えるようにマクミラとナオミには後で秘術を施す。あとの連中にもフロイトの指輪を手に入れてある」
「フロイトの指輪?」
皆が不思議そうに、アルトロラーベの顔を見た。
「フロイトは、実は、神の血筋を引く者だったのだ。夜な夜な無意識の底に降りていっては学んだことを、昼間に精神分析の理論として執筆していたのだ。彼が精神分析学の秘密結社を結成した際、えり抜きの弟子たちに授けた印章指輪『フロイト・オブ・ザ・リングス』こそ、精神世界に入り込む鍵なのだ」

     

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