面白草紙朝倉薫VS安達龍真

夢と現実のはざまで

僕らの夏

2008年08月14日 | Weblog
 雨上がりの虹を追いかけて
 裸足で走った
 水溜りの青い空に
 僕らは舞い上がる
 
 熱く焼けた浜辺の砂を
 駆け抜けて水しぶき
 凍りそうな水の中にも
 僕らの夏は煌いていた

 作詞・朝倉 薫
 作曲・神津裕之

 15年前に書いた「男たちの日記」の挿入歌である。田舎に帰ると何故かこの歌が口をついて出る。のどかな時代と人は語るが、大人たちはいつも生きることに必死だったはずだ。子供が子供でいられる時代を奪うのも必死で生きる大人たちである。

 酔った友人が「昔の話より、今の話をしよう」と、本音を吐いた。その通りかもしれない。たまに帰って懐かしそうに昔話をされても、生まれて今日までこの土地で生きている彼には、迷惑な話だろう。紛れもなく僕らは大人である。「君はいいよ、ずっと夢を追い続けられて」友人の言葉が、僕をさびしくさせる。「アリとキリギリスか」自嘲気味につぶやくと「幸せなキリギリスだよ」と、返された。

 来年の夏、生きていれば又会おう、と、友人たちと言葉を交わして別れた。クラスメイト同士で結婚したMくん夫妻の車で実家まで送ってもらった。日付も変わった時間だというのに、父が起きて待っていた。今日は朝から父の代理で、松橋の伯父の初盆に行く。山を越えた不知火海に面した町である。伯母の喜ぶ顔が浮かぶ。競艇選手になった従兄弟のTとは40年ぶりの再会である。僕らの夏を、彼は覚えているだろうか。