面白草紙朝倉薫VS安達龍真

夢と現実のはざまで

幸運を信じる。

2008年08月06日 | Weblog
 30代の始め、江ノ島の海水浴場の昼下がり、その日の全財産と運転免許証をいれたパスケースを紛失した。同行した仲間7人で芋を洗うような海水浴場の海岸を捜した。誰もが見つかるとは思わなかった。落胆してビーチに腰を下ろした時、スピーカーからアナウンス、「杉並区のAさん、本部までお越し下さい」

 駈け付けると、50メートルほど沖に浮かんでいたケースを見つけた人が届けてくれていた。勿論、正当なお礼を差し上げてパスケースを受け取った。「現金だけ抜いて沖へ放り投げ様かと思ったが、」と、拾ってくれたひとが冗談を言った。奇跡だと係員は驚嘆していた。その日の昼食の旨かったことこの上なかった。

 40代後半、川崎の焼き肉屋で深夜、ツアー中の移動費を入れた財布を紛失した。しかも、ホテルに帰ってから気付いた。翌朝、近くの交番に紛失届けを出しにいったら、それらしい財布が届いていると言われた。カードも金額も僕の申し出と一致して受け取る事が出来た。

 いずれも、その後、僕はビッグチャンスに恵まれ、天狗になり、すべてを失った。

 そして、60歳になりたての昨夜、22時過ぎに帰宅すると、ポケットにあるはずの鍵を紛失していた。眠っている管理人をたたき起こしてマンションの玄関を明けてもらったが、僕の部屋の鍵は預かっていないという。僕もスペアキーを作っていなかった。今日の1日を思い起こしてみた。一番可能性があるのは降り出した雨に濡れ御苑から靖国通りのトップスまで乗ったタクシーに思え、領収書にあるタクシー会社に電話した。車輛番号から運転手を呼び出して連絡をくれるという。御苑の弁護士事務所から、トップスへ、そして、電車で中野新橋、コンビニで新聞を買ったことなどを思い出しながら、最悪のことを考え、稽古場へ向かった。11時半過ぎ、タクシー会社から電話「ありました。今、沼袋を走っていますので、20分でそちらへ向かうそうです。済みませんが、迎車代を頂きます」勿論、異存はない。何しろ、合い鍵を持っているオーナーは秋川に住んで居られるのだ。

 マンションの玄関キー、部屋の玄関キー、そして郵便受けのキーと、紛れもない僕の鍵が戻って来た。タクシーに乗ったのは16時前だった。運転手曰く「次に乗ったお客が自転車の鍵にしては大きい」と渡したのだそうだ。親切な運転手にお礼をして、日付けも変わった24時過ぎ、無事帰宅。

 こうしてブログを書きながら、ついに3度目の大きな波が来る予感に武者震いしている。今度の波はとてつもなく大きそうだ。もう、天狗になることはあるまい。1日1日を今までにまして大切に生きてゆこう。この幸運に感謝しながら。