2月17日(土)バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第1番などを聴きながら、終日原稿書きと読書。外出せず酒も飲まずの1日。ある知人から昨夜電話で意外な話を聞いていた。その確認をする。民主党が都知事候補に吉永小百合さんを擁立しようとしていたというのだ。何人かに聞けば、たしかにそのような動きはあったようだ。小沢一郎代表が2回会ったという情報もあれば、いや構想段階で終ったとの情報もある。いずれにしても政策で選考するよりも先に知名度で有権者を投票に導こうという発想そのものが間違っている。民主党に限らず、ほとんどの政党、政治家は言葉が貧困だ。ハンナ・アーレントは「理解と政治」(『アーレント政治思想集成』、みすず書房)という論文のなかで常套句(クリシエ)の問題点を指摘している。「世論の質を向上させる」ためには言葉に敏感でなければならない。認識と理解の相互関係だ。訳者の理解でいうならば「いま生じている出来事に対する驚きを旧い言葉で封じるのではなく、それにふさわしい言葉の探求へとつなげてゆくこと」である。何か悪政があればすぐに「ファシズム」という言葉を使うことは、知的怠慢であるだけでなく、画一主義(コンフォーミズ厶)へ陥ることだ。日本の政党は「マニフェスト」などを強調しながら、そこに政治哲学がない。いつまでも是正されない最大の欠陥だろう。アーレントはフランツ?カフカが述べたことを引用している。
真理を語ることは難しい。真理はなるほど一つしかない。だがそれは生きており、それゆえ生き生きと変化する表情を持っているからだ。
気晴らしに「酒とつまみ」を読む。昨日のブログで「先客万来」コーナーのことに触れたところ、作家の重松清さんからメールが届いた。重松さんは第6号に登場。ご本人の承諾を得たので、ここに紹介する。「重松清です。本日の貴日記の『酒とつまみ』にかんして、ご参考までに。シゲマツが『押しかけインタビュー』に登場した際、いつもの流儀として飲み代を出そうとしたのです。『酒とつまみ』がビンボーだというのは、よくわかっていたので。すると、大竹さんは「それだけは困る」と。「ここでゲストに払ってもらったら、この雑誌のすべてが終わってしまう」と……べろんべろんになりながら訴えたのでした。それを聞いて、ああ、このひとと、この雑誌は信じられるな、と。ですから、『中央線ホッピーマラソン』でゲストに出た際は、最初から気分良くタダ酒を飲ませてもらいました。これほど美味しいタダ酒はありませんでした。そういう雑誌なんですよね。で、そういう大竹さんなんですよね。では、また」。ここで触れられている『中央線ホッピーマラソン』とは大竹聡さんの著作のこと。その出版を記念しての催しがジュンク堂書店新宿店で行われたとき、重松さんがゲストで招かれた。そのときのことを指している。「酒とつまみ」が規則正しく発行できるよう、購読をお願いしたい。