有田芳生の『酔醒漫録』

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本田昇さんの『松川事件 60年の軌跡』

2009-12-15 11:16:18 | 人物

 12月14日(月)091214_182401 気が重く書く気になれなかった出来事に一言。オウム真理教「諜報省」の井上嘉浩の死刑判決が10日に確定した。16歳でオウムに囚われた井上も、いまや39歳。一審では「後方支援役」と認定され、無期懲役の判決。ところが高裁では「現場指揮役」とされ一審が破棄され死刑判決。最高裁も追認した。新しい証拠はなにもない。検察は「生きて償え」と訴え、井上は法廷で教祖と対決、地下鉄サリン事件の謀議をはじめて明らかにして、教祖を追いつめた。ところが無期判決が出ると検察は控訴。人の生命をもてあそぶとはこうした行為をいう。ほかの元信者死刑囚のなかには「早く執行を」と諦念にある者もいる。なぜ地下鉄サリン事件だったのか。その真相も明らかにならないまま、事件はどんどん風化していく。出版社時代に松川事件で死刑判決を受けた本田昇さんが総務課にいた。本田さんは判決を言い渡されたときのことを「背筋に冷たい氷がスーッと落ちていった感じだった」と教えてくれた。一審、二審が死刑判決で最高裁で無罪となった本田さんが、『松川事件 60年の軌跡』を出版した(1300円。申し込みは送料160円を加えて郵便振替で。振替番号00280ー9-130429。247ー0007横浜市栄区小菅ヶ谷3-23-21本田しのぶ)。松川事件当時23歳だった本田さんもいまでは83歳だ。横田滋、早紀江さんにお礼状を書く。拉致問題で何かを為さねばという思いが強まっている。年末に行う「意見広告7人の会」の忘年会で相談したい。新年には早紀江さんがめぐみさんの帰宅を念じてラベルに書いた「乙女乃いのり」を飲むつもりだ。根岸の鍵屋で五十嵐茂さん、Yさんと忘年会。


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1 コメント

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本田昇さんがこのほど上梓された本、私も読みまし... (五十嵐茂)
2009-12-15 19:10:21
本田昇さんがこのほど上梓された本、私も読みました。フランスのドレフュス事件とエミール・ゾラとの関わりの日本版とも言われる一大謀略えん罪事件・松川事件でいわれなき死刑判決を受けた著者の初めての本です。自費出版という枠をはるかに越えた戦後史の基本文献でしょう。単なる裁判記録ではありません。率直な肉声が満ちあふれています。死刑囚は独房で何を考えているのかこの本で知ることができました。一方では刑死の時の準備に傾くこころ、他方では晴れて出獄という日に支援者に示さなければならない生への執着。アンビヴァレントな両極に置かれた23歳の心がつづられて一気に読みました。作家の広津和郎さんは本田さんたち被告に出会いその「澄んだ眼」に無罪を直感し、この事件にのめり込み膨大なエネルギーを注ぐことになります。無罪になってよかったに留まらない裁判、裁判闘争、政治闘争のリアルにも透徹する筆致、しかも根本的にヒューマニスティックな著者の目が叙述の説得力を増しています。09年掉尾を飾るおすすめの1冊です。
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