金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【IMF予測】 2023年の日本の名目GDP 55年ぶりにドイツを下回る見込み!

2023-10-31 01:56:38 | 金融マーケット

 またまた、エポックメイキングなニュースが流れています。

 IMFの予測によると、2023年の日本の名目GDPが、55年ぶりにドイツを下回ることになりそうだとのこと。かつては、米国に次いで、世界NO.2の経済大国と言われていた日本ですが、中国に抜かれ、そしてまたドイツに差し返されて、世界第4位に転落するようです。

 しかし、よくよく内容を見てみると、いわゆる物価を差し引いた実質GDPの伸びという意味では、ここ15年間、ドイツと日本には殆ど差はなく差が付いたのは、物価上昇率の違いと、為替レートが変わった(大きく円安へ動いた)ことが原因のようであります。

 

 以前、このblogで何度も指摘させて頂きましたが、成長率とは物価上昇率も含めての概念であり、日本経済の没落は、ここ20年30年にわたって、物価の上昇を極端に避け続けたところに、最も大きな原因があります。いわゆるデフレ経済を容認し続けたことが原因です。

 単独経済だけでみれば、物価上昇率が0%で動かない世界は、けして悪い世界ではありませんが、これをグローバルベースに拡大してみると、大変困った状態と言わざるを得ません。毎年2%とか、3%程度の物価をアップさせていくということは、当然ながらそこで働く労働者の賃金も、物価上昇分も含めて上がっていきます。また、株価や不動産価格も、物価上昇率も加えた名目成長率に応じて、どんどん上昇していくことになります。

 もし、実質成長率は変わらないが、物価上昇率が常に2~3%程度異なる国、A国とB国があった場合、A国の株価よりも、B国の株価の方が勢いよく上昇していきますから、海外投資家から見ても、B国の方が投資対象として優れた市場と見えてしまいます。その結果、投資金額で見劣りするA国は、いずれ実質ベースの成長率でも、B国に置いていかれることになってしまいます。

 だから、物価上昇率は重要なのです。

 

 せっかく30年ぶりにデフレ脱却のチャンスが訪れている日本なのに、この機に賃金上昇と経済成長の順回転へ転換すべき時なのに、相変わらず、物価上昇率を悪者にしているのが、今の我が国の現状。もちろん、年金生活者や、値上げが実施できない個人事業主の窮地を救うことは大切な施策ではありますが、大きな枠組みについての誤解を解くように、政策説明および報道をしていかないと、またまたデフレスパイラルに飲み込まれて、もう二度と日本経済は立ち直れない状況に陥ることになります。

 

 値段を下げてシェアをアップする、あるいは維持するという戦術は、知恵のない者の戦術であり、結局はすべての市場参加者や労働者の首を絞めることになります。そうではなくて、知恵を絞って、付加価値をアップしたサービスや製品を提供できるようになったら、自信をもって値上げを敢行して適正な利潤を得る行動こそが、経済を健全に成長させることに繋がります。

 この当たり前の状況に戻すことが、日本経済復活のきっかけになります。

 もう一度、そこを共通の認識にして参りましょう。

 


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