金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【Well-being ⁉ ④】 Financial Well-being とは⁉ 資産形成は、重要な Well-being ‼

2023-01-17 04:24:15 | 人的資本

 本日は『Well-being』の最終回です。

(先週の水・木・金と、このテーマを論じてきましたが、本日が最終回)

 

 Well-being とは「(社員が)身体的・精神的・社会的に良好な状態であること」と定義されています。これだけ聞くと何か綺麗ごとに見えますし、勘違いしている人からすると、Well-being を推進する活動とは「ユルイ会社に変える活動」と誤解するかもしれません。しかし、その実態は「会社をユルくする」のではなく、むしろ、全ての社員が後顧の憂いなく、シャカリキに働ける状態にして、バリバリ稼ぐ会社にするための活動」と言う方が実態に近いと思います。

 ここで言う「後顧の憂いなく」という意味では、働く女性が将来の出産・育児というイベントに対しても、大きな不安なくキャリアを積めるように各種のサポート制度や、周囲の十分な理解も確保されていなければなりませんので、これも「Well-being」の守備範囲に入ることになります。そして、LGBTへの理解や各種制度グローバル人材への理解や各種制度も、同じように「Well-being」の守備範囲となります。

 

 さらに、もう1点。「後顧の憂いなく」という意味では、老後の生活設計や、万一の際の補償という意味からも、社員の「資産形成」や「補償制度」、すなわち「定時定額投資による資産形成」「万一の際の補償のための保険契約」を促す、会社からの支援活動についても、「Well-being」の守備範囲と言ってよいと考えています。したがって、企業が自らの社員のために行う「資産形成サポート」「保険契約サポート」というのも、「Well-being」活動の立派な範囲だということ。

 すでに企業型DC制度を導入して、社員に対して資産形成の器を用意して、定期的に『投資教育機会を提供』している会社は「もうやっているわい!」と考えていると思いますが、ここへきて国は、個人型DC制度=iDeCoと企業型DCの併用が出来るように法律改正をしたこと、またNISA・積立NISAの限度額の引上げと期間の無制限化についても決定済なので、これらの新制度においても、各社員が十分に非課税枠を活用しながら老後のための資産形成が出来るよう、サポートすることは企業側の大きな責任になるということ。

 

 ぜひ、企業経営者の方々。そして人事担当役員の方。「Financial Well-being」についても、お忘れなきよう、お願い致します!

(終わり)


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【Well-being ⁉ ③】 多様な才能を生かす! ジェンダー・グローバル・LGBT・・

2023-01-13 05:18:15 | 人的資本

 1995年に日本の労働人口はピークを迎え、その後は有能な人材の取り合いと、新たな才能の発掘に、各企業が苦しみ始める時代に突入することとなりました。

 前回テーマにした『健康経営』は、昭和の時代からの基本動作である「働く者同士がお互いの変化を見逃さないように、密なコミュニケーションと先回りした気遣いを励行すること」がベースにあったことをお話しました。しかし、こうしたベタな昭和の知恵では、どうやっても解決できないハードルにぶち当たることになります。

 

 まず昭和62年に施行された男女雇用機会均等法によって、優秀な女性総合職社員が、上場企業に大量に入社することになりました。それまでの日本社会は、女性社員を入社させても、男性社員の配偶者候補として入社させるだけで、結婚すれば寿退社が基本でしたし、仕事を続けるにしても出産時に退職するのが当たり前でした。いわゆる「腰掛け入社」という奴。

 しかし、この昭和62年以降は、本気でキャリアを積みたい優秀な女性社員が入ってきました。会社としてもお金をかけて育成対象にしますし、キャリアを積むための官庁への出向や、海外留学なども盛んに行われました。ところが、そんな優秀な人材が「出産」と「育児」のハードルを越えられずに、次々とキャリアを捨てて退職する事態が全国の企業内で発生したのです。

 

 このハードルは、昭和の基本動作である「密なコミュニケーションや先回りの気遣い」だけでは、どうしようもありません。まず国は、法律で「育児休職制度」の義務化などの手を打ちましたが、それだけでは不十分であり、各企業が国に法律を超える仕組みを次々取り入れて対応を強化しました。また、配偶者側の理解とサポートを補助するために、配偶者のための育児休暇制度や、配偶者側の理解を深めるための研修義務化なども行い、配偶者や職場における出産・育児への理解を深める活動を継続しました。今でも、まだまだ十分な状況ではありませんが、それでも30年前に比べて、働く女性が自らのキャリアを大事にできる環境は少しずつ整いつつあります。この分野も『Well-being』を推し進める上で重要な活動範囲となります。

 同じく、海外から就業してくれる他国籍の人材=グローバル人材についても同様であります。単なるコミュニケーションや気遣いだけでは、越えられないハードルが数多く存在しますから、ある時は外国人就労に関する法律から作り直し、またある時は、社員間にある、文化や社会風習に関する無意識な偏見や無理解を、積極的に取り除く努力が必要になります。もちろん、同じ問題がLGBTでも存在します。グローバル人材やLGBT人材のクリエイティブな才能を会社業績に活かしていくためには、当然ながら上記の努力を継続していかなければなりません。

 

 こうした活動も、今や『Well-being』にとっては、中心的な活動範囲となっているのです。それだけ、多様な才能を集めることの重要性が、企業経営には切実なテーマになっているということ。これが激化する競争の中で、個々の企業が生き残るための現実なのです。(来週の火曜日へ続く)


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【Well-being ⁉ ②】 もともとは「健康経営」 ベースは昭和の人事施策⁉

2023-01-12 05:37:02 | 人的資本

 Well-being とは「(社員が)身体的・精神的・社会的に良好な状態であること」と定義されております。

 ちなみに、一部の人たちに勘違いされているような「会社をユルくする活動」ではなく、むしろ、全ての社員が後顧の憂いなく、シャカリキに働ける状態にして、皆がバリバリ働く会社にするための活動と言った方が、現実に近いと思います。

 

 もともと昭和や平成の時代から、「健康経営」という概念がありました。昭和の時代には『ブラック企業』と呼ばれる存在があちらこちらで闊歩しており、『成長』の名のもとに「株主優先」「会社業績優先」で、社員の健康は二の次、社員が倒れたら人を採用して使い倒すというやり方。はっきり言って、昭和の四大証券は、その典型的な会社でした。

 そんな酷い企業とは距離を置き、社員の心身の健康を見守りながら、末永く、会社と社員が一緒に繁栄していこうという考え方が「健康経営」です。1995年に労働人口=生産年齢人口がピークを迎え、労働人口が減少するにつれて、個々の人間を大事にする傾向が強くなっていきました。

 「健康経営」の基本は、働く者同士がお互いの変化を見逃さないように、「密なコミュニケーションと先回りした気遣い」を励行することにあります。昭和の頃の座席表は、課長がコの字型の誕生席に居て、部下の様子をずっと見守れるようになっていましたが、あれはちょっとした表情の変化も見逃さない工夫の一つでした。

 激化する競争社会では、ライバル会社に負けないように、他にないサービスや商品を考えて、常に改良して、毎日毎日『改善』を継続しなければなりません。これが度を越したり、特定の人に負担が集中し過ぎたりすると、やがて社員の心身の健康が壊れてしまい、長期の離脱を発生させてしまうことになります。そうなる前に、お互いがお互いの変化に気づいたら、相手の負荷を引き取ったり、あるいは課長と相談しながら、少しペースを落としてもらったりすることが、健康経営の基本であります。実は、現在の『Well-being』でも、この「密なコミュニケーションと先回りした気遣い」こそがコア中のコアであり、その重要性は変わっていません。

 

 全ての社員が、そのパフォーマンスを最大限に発揮するためには、上司と部下間、あるいは社員間で、お互いのちょっとした変化でも見逃さないようにすることが最も重要であります。昭和の時代からのベタな方法ではありますが、これが無ければ『Well-being』も『人的資本経営』も成立致しません。(つづく)


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【Well-being⁉ ①】 最近よく耳に・・ けして会社をユルくする活動ではありません。

2023-01-11 05:10:31 | 人的資本

 最近よく耳にするのが、『人的資本経営』とか『Well-being』という言葉。

 新聞紙上でもよく紹介されていますし、上場企業が発行する「統合報告書」に出てくることが多くて、企業がいかに社員を大切にしているかをアピールするために使われる言葉、というイメージが強いと思います。

 

 ちなみに『Well-being』とは、「(社員が)身体的・精神的・社会的に良好な状態であること」と定義されています。あらためて、このような言葉にスポットが当たっているのは、日本の労働人口が減り続けていることから、企業にとって優秀な人材を集めることがますます難しくなっていることが背景にあります。「従業員満足度」を上げていかないと、優秀な人材を採用できなくなるからです。

 労働人口が豊富な時代=昭和の時代では、人間を使うだけ使って、役に立たなくなれば捨ててしまい、また新たな人材を雇うといった、ブラックな企業が後を絶たないことになっておりましたが、今の時代は、人材に多額の教育投資を施し育成して、しかも気持ちよく働いて貰わないと、すぐに転職されてしまいます。そうした時代背景は、実は日本だけではなく、欧州でも、北米でも同じであり、優秀な人材を集めることがどんどん難しくなっている状態。今の『Well-being』のブームは、「ESG」テーマのうち『S』の重要性が増していることと、同じ課題が根底には存在しているのです。

 いずれにしても、『Well-being』『人的資本経営』も、社員の能力やコンディションをより良い状態にすることで、「従業員満足度」を高め、それがすなわち企業価値向上に繋がる活動として、注目されている訳です。

 

 なお、企業の中には『Well-being 推進委員会』などという横断的な組織を立ち上げて、各部署から推進委員を選んで、Well-being活動を行っている事例が数多くあります。ときどき、その中には『Well-being 推進活動』=「会社をユルくする活動」だと勘違いして活動している若い社員が散見されます。また、Well-being 自体をよく理解せず、「なぜ、わざわざ会社をユルくしようとしているのだ! バカバカしい‼」不満を漏らす、ベテラン社員を見かけることもあります。

 

 勘違いしないで欲しいのですが、『Well-being』は「会社をユルくする活動」ではありません。ユルい会社にしてしまったら、ライバル会社との激しい競争には勝てなくなり、企業価値向上どころか、社員の生活すら守れなくなってしまいます。むしろ、全ての社員が後顧の憂いなく、シャカリキに働ける状態にして、バリバリ稼げる会社にするための活動と言った方が実態に近いと思います。(つづく)


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