セルアウト! - Sell Out!






2009年11月24日

セルアウト! - Sell Out!  
マレーシア/2008/110分
監督: ヨ・ジュンハン (YEO Joon-han)



系列企業で働いている女性TVレポーターと家電開発者、
職場に限界を感じる2人が出会い、波乱万丈の物語が繰り広げられる。
ポップなミュージカル・シーンを織り交ぜ、マレーシア社会を鋭く捉えたブラック・コメディ。

以上FILMeX公式サイトより





今年のフィルメックス期待のマレーシア作品。
各地の映画祭で話題の作品で期待大でしたが、思った以上に良かった。
アートか商業主義か?と悩む監督の想い(戸惑い?迷い?)をベースに作られている。
「アートと商業主義」とは「誠意と金」とも言い換えられる。


若い美人の新進キャスターに押されて、自分の番組の存続が危うい中
元恋人の詩人をインタビュー中に彼が死んだシーンを放送したことにより、
まさに死の淵にいる人にインタビューするという新しい企画で
視聴率を挽回したラフレシア(ジェリカ・ライJerrica Lai)
名前からして印象が強烈。




一方、家電会社で商品開発担当のエリック(ピーター・デイヴィスPeter Davis)は、
大豆製品(豆乳や豆腐など)が手軽に家庭で作られるマシンを開発。
プレゼンでCEOや上司に、試作品は壊れないので(笑)
「もっと壊れやすい製品にしろ!しかも保証期間終了直後に壊れないといけない」
などと無理な条件を出され、ダメだしをされる。
しかもイギリス人とのハーフのエリックのクィーンズイングリッシュは
強いマレーなまりの英語スピーカーのCEOに最初から最後まで
こてんぱんに嫌味を言われる。




ラフレシアの放送局とエリックの家電会社はある多国籍企業傘下で同じ系列会社。
やがてラフレシアの番組にエリックと邪悪な心のエリックの分身が出演することになる。

映画はミュージカルシーンを挟みながらブラックな笑いと共に
二人の心の葛藤を描いていく。


大豆製品作成マシンがとってもかわいい。
もし本当にあったら買ってしまいそうなくらい。
もちろん保証期間終了直後に壊れることのないようなマシンだったら、であるが。

そして誰もが歌うミュージカルシーンで流れる曲が良かったので
エンドロールを必死で見ていたら、音楽は監督のヨ・ジュンハンが担当!
曲はすべて監督が作詞作曲しているという。
音楽の才能もある多彩な人だった。

↓TRAILER





公式サイトより

SELL OUT!
Year: 2008
Country: Malaysia
Length: 110 mins
Language: Manglish, English, Mandarin, Cantonese
World Premiere: Venice Film Festival

Director/Producer/Editor: Yeo Joon Han
Starring: Jerrica Lai, Peter Davis, Kee Thuan-chye, Lim Teik-long,
Wong Wai-hoong, Lee Szu-hung, Hannah Lo.
Website: http://www.amokfilms.com
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ギャング







2009年11月22日

ギャング   
「コードネームはメルヴィル」特集上映より 1966年 150分 モノクロ



監督;ジャン=ピエール・メルヴィル
出演:リノ・ヴァンチュラ


脱獄したギュことギュスターヴ・マンダ(リノ・ヴァンチュラ)は
パリの恋人マヌーシュの家でギュを殺そうとする組織の一味と出会い、
彼らを逆に殺す。
マルセイユのポールに、プラチナ強奪を持ちかけられたギュは、
国外脱出のために仕事を承諾する。
プラチナ輸送車強奪は成功するが、ギュはブロ刑事の罠にはまり
黒幕がポールであると警察に知られる。
ポールとギュは警察に捕まり過酷な拷問を受ける。
ギュが警察に密告したのではないかという噂が広まり、
汚名を晴らすためギュは警察から脱走する。

以上 FILMeX公式プログラムより少々アレンジ 




モノクロの画面は暗く、冒頭の脱走シーンなどストーリーを把握できていないと
何のシーンなのか理解できなかったかもしれない。
セリフもとても少ない。
フランス黒社会の人間は必要最小限の会話で成り立っているようだ。
そして身だしなみにもとても気を使っている。

チンピラから中年にさしかかった男まで
4人のプラチナ強奪メンバーを集めるところなどは、
メルヴィル作品に影響を受けたといわれる、杜峰監督の
《ザ・ミッション 非情の掟》を思い起こさせる。
またプラチナ塊輸送車を襲って強奪する、というシチュエーションは
《エグザイル/絆》の金塊輸送車の強奪シーンにつながる。
強奪に成功して、海岸を眺める崖で服を着替えスーツ姿の4人が佇むショットは
《エグザイル/絆》での崖にたたずむ4人のシーンそのままの、
時代の古さを感じさせないスタイリッシュなショットだった。

仁義に熱い主役のキャラクターも
上の2本の杜峰監督作品に影響を与えているのだろう。
裏切り者の汚名を晴らすためなら、自分の身の危険をも顧みない。

40年以上前の作品で150分という長尺ではあるが、
最後まで退屈することもなく観てしまった。
ただ、字幕には大変不満が残った。
1行目の意味がわからなくて読み返していたら2行目が読めなかったり、
意味の通じないところがあったり、、同じ人物の呼び名が変わったり、
途中のセリフが訳されていなかったりで、
これほど日本語字幕を読むのに苦労したことは初めて。
MATVとかの字幕に文句を言っていたが、日本も変わらない。
あとで映画祭公式カタログを読んだら
「1988年の〈フィルムノワール映画祭〉上映版の日本語字幕プリントにて上映」と
記されていた。
映画の最後に字幕翻訳者の名前が出ていなかったところをみると、
この字幕、1988年より前に着けられていたものではないだろうか。
もしDVDが出るとしたら(特集をやったので出る可能性はあるだろう)
字幕はぜひ新しくつけ直してほしい。そうしたらぜひまた見たい。


ところで、「コードネームはメルヴィル」特集の作品ラインナップは
フィルメックスでの上映は、《この手紙を読むときは》《モラン神父》
《フェルショー家の長男》《ギャング》の4本。
《この手紙を読むときは》《モラン神父》と他のメルヴィル監督作9本と合わせて
11月30日から日仏学院で「コードネームはメルヴィル」特集が開催されている。
このラインナップの中で、管理人が観ていたのは
《リスボン特急》《仁義》のみ。
あとは《サムライ》を見ているはずなのだが、おまりよく覚えていない。
《リスボン特急》はカトリーヌ・ドヌーブ出演作品は必ず観ていたので
たしか映画館で観ている。アラン・ドロンも出ていたし…。
って日本公開はいつだったのか?72年制作だからすぐではないにしても…
ずいぶん昔だ(^_^;)
また《サムライ》は権利の関係で現在は上映できないらしい。
映画も権利関係が複雑でアジア映画に限らず上映できない作品が存在するのは残念。

また日仏学院でのプログラムでは
《コードネームはメルヴィル》というドキュメンタリー作品も併せて上映される。
これには杜峰監督など映画人が出演し、メルヴィル作品への思いを語っているという。


洋画は最近はあまり観る機会がないのだが、フランスやイタリアなど
ヨーロッパの作品は元々好きだったのでこれからはもう少し観る時間を増やしたい。
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