墨攻プレミア試写会

丸の内ピカデリーで行われた『墨攻』のプレミア上映に行ってきました。
今年の初映画です。
プレミアということでゲストが豪華でした。
張之亮(ジェイコブ・チャン)監督、阪本善尚撮影監督、
出演の劉徳華(アンディ・ラウ)、アン・ソンギ、 范冰冰(ファン・ビンビン)。
最近のプレミアでは『ウィンター・ソング』も
開催場所やスター性では負けなかったかもしれませんが
『墨攻』はゲストの挨拶の後、映画本編が観る事が出来る、というのが
私達観客やファンには気分を高揚させる効果がありますよね、やっぱり。

開場は午後7時、プレミア開始が午後7時30分予定でしたが
平日なのでわりと遅めの時間設定で、遅れてくる方も少なく、
ほどなく場内は満席。プレスも左右だけでなく後ろにもスタンバイ。
司会は襟川クロさん、少し遅れての開始でしたが
かなりゆっくりの進行で30分以上挨拶や質問が続きました。
それに何より張之亮監督は広東語、アンディと范冰冰は普通語、
アン・ソンギは韓国語、阪本善尚撮影監督は日本語と
4カ国の言葉がクロスしているのでやっぱり少し時間がかかる。
アンディは黒のダッフルコートにジーンズというカジュアルな服装。
アン・ソンギさんはおちついたジャケットにネクタイ姿。
そして范冰冰ちゃんがすばらしいプロポーションで黒のミニドレスを
披露して目立っていました。
彼女日本で初めて映画が公開されるのでよろしくお願いしますと挨拶。
切りそろえた前髪とヘアスタイルがプリンセステンコーさんを
連想させましたがとにかくかわいかったです。

さて映画ですがこれが2時間13分という長さを感じない、良い映画でした。
映画自体は小学館発行の漫画『墨攻』(森秀樹・作画、酒見賢一・原作)を
元にしたもので、つまり原作の小説『墨攻』、それを基にしたコミック『墨攻』、
そしてコミックを基にした映画『墨攻』という2段階のアレンジで
私が最初に読んだ小説とは改編された部分があります。
以下簡単にストーリーを紹介。
映画を観ていない方で知りたくない方は読まないで下さいね。

【STORY】
物語は紀元前370年頃の戦国時代、趙と燕にはさまれた梁城が舞台。
趙が燕を攻撃する手始めに梁城を攻撃しようと画策。
梁では墨家という集団に城を護るように依頼。
墨家から革離(劉徳華)という男がひとり梁城に現れる。
革離はわずか4千の民衆を率いて、10万の趙軍に対してあらゆる智で対抗する。
非攻を説く墨家はけして戦いを仕掛けない。
向ってきた敵から守るための戦闘のプロなのだ。
趙軍に痛手を負わせて梁の民衆の心を次第にひとつにしていく革離。
しかし梁王(王志文)や役人たちは力を持ち始めた革離を疎ましく思い始める。
そして趙軍の将軍・巷淹中(アン・ソンギ)は革離の戦術を高く評価し認めるが
戦いの中では勝利することが最上との思いから
戦闘は次第に激しさを増し、死に行く者が敵味方なく増えてゆく。


      
      ※     ※     ※     ※     ※

≪墨家十論≫
兼愛:自分を愛するように他人を愛せ
非攻:侵略と併合は人類への犯罪
天志:天帝は侵略と併合を禁止する
明鬼:鬼神は善人に味方して犯罪者を処罰する
尚賢:能力主義で人材を登用せよ
尚同:指導者に従って価値基準を統一せよ
節用:贅沢を止めて国家財政を再建せよ
節葬:贅沢な葬儀を止めて富を蓄えよ
非楽:音楽に溺れず勤労と節約に励め
非命:宿命論を信ぜず勤勉に労働せよ

墨家の創始者、墨子の十論を読むと現代と通じる感覚があります。
思想としての墨家は極めて宗教的な思想集団と言われているそうです。
しかし墨家には伝承されている事柄が極めて少なく
史実は今後の解明が待たれます。


こういった歴史的な戦争映画はスケール感が重要視されることが多いのですが
それよりも監督の意思はこの墨家の思想に傾倒されて、どちらかというと
非戦、反戦に重点を置いたストーリーになっています。

戦いに負けても兵士や民が死に、それは勝った方にも同じような結果をもたらす。
死体が累々と重なる大地を眺めるにつけ、革離と同じように
矛盾に悩み戦いのむなしさを感じてしまう。

監督はレスリーの『流星』でも貧しい人々や恵まれない子供達やお年寄り、
社会の弱者に焦点を当てていましたが、
この作品でも支配者ではなく底辺の民衆や奴隷、子供の視点でのストーリーを
重視しているようにみえました。
これはやはり監督の気質の現われだと思いますし
10年ほど前からこの原作コミックの映画化を考えていた所以のひとつは
弱者に視点をおいた思想に共鳴できたからではないでしょうか?

◆そしてレスリーつながりを少し
張之亮監督はもちろん『流星』の監督
編集の鄺志良(エリック・コン)は『色情男女』
動作指導の董瑋(スティーブ・トン・ワイ)は『男たちの挽歌』
そしてエンドロールには施南生(ツイ・ハークの奥さんでありプロデューサー、
レスリーの良き理解者で友人)の名前がありました。


墨攻 (1)

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コミックは8巻まで出ています

墨攻

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こちらはノベライズでしょうか?

TOP画像はプレミアで配られた特典の冊子と墨攻新聞。
16日は午後4時から渋谷109前でのイベントも行われたそうです。
中華迷がたくさん集まったそうです。

★レスリーも中華圏映画の発展を望んでいたと思います。
 私は今年もできるだけ中国・香港映画に足を運びます。
 こうしてレスリーの映画のスタッフを務めた方たちの仕事を
 丹念に見ていくことも必要かな、と考えるからです。
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