無米樂(台湾) 東京国際映画祭セレクション#1


無米樂 The Last Rice Farmers 無米樂
監督/脚本/撮影監督/編集:顔蘭権(イェン・ランチュアン)
監督/脚本/撮影監督/録音/照明:荘益増(ジュアン・イーツェン)

台湾の稲作農家について、事前知識はほとんどなかったのですが
東京国際映画祭の公式H・Pでみた予告編がすごく気に入って
チケット購入を決めました。
15ヶ月間、台湾南部の有数の米作り地区の3人の年老いた農夫とその妻を、
米作りの暦にあわせた美しい景色とともに撮影したドキュメンタリーです。

始まってすぐに日本の古い歌謡曲を歌うおじいさん、
歌詞もメロディも正確で私たちは驚いてしまいます。
春先、農暦というのでしょうか、暦にあわせ田んぼの準備が始まります。
機械で耕す人もいれば、昔ながらの水牛での耕作を続ける人もいます。
季節を追うごとに、
米作りの大変さ、何十年も続けてきた仕事を大切にしているさま、
毎年の作業や天候やその他全て記録している人、などなど
ぐいぐい映像に引き込まれていきます。
田んぼに水を入れる音、台風の風雨の音、やっと実った稲の風に揺れる音、
乾燥させたもみがあんなにきれいな音がするなんて、自然は素晴らしい。

しかし現実は厳しく、台湾の米作り農家は長い間
政府の施策や経済の荒波にもまれてきました。
いまや海外からの低価格の輸入米に押されて
瀬戸際に追い込まれている状態だそうです。

そんな中でも米が収穫できたなら、それでよしとする農家の人々。
年老いた人々に先はそれほど長くないかもしれないが
明るくけなげに米作りを愛する人々。
センチメンタルでなく素朴で明るい会話に
過去を振り向くことなく前を見据えて達観する姿が見えてきます。

台湾では公開時に大ヒットしたそうです。
日本でもぜひぜひ公開してほしい作品の筆頭です。
同じアジアの稲作国家として非常に共感を呼ぶ作品だと思います。












タイトルの「無米樂」とは、古い台湾語で、
「米がなくても楽しく暮らせる」と、
不作のときの慰め、諦め、開き直りにも似た
きわめて深い意味のある言葉だそうです。
詳しくはこちらのブログに解説があります。
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