久しぶりに脳天に電気の走るプッチーニを聴いた。
終幕ラストの盛り上がり方は尋常でなく、「これぞイタリアの血!」を思わせた。
聴きながらいろいろ思うことはあったけど、最後のこの痺れる瞬間を体験できただけで今宵は満足。
バッティストーニは27歳という若さだけあって、ストレートな力業をみせる。
狂熱のカンタービレと破天荒な表現力。それが暴力的でないところに好感度の高さがある。
それにしても、オペラに百戦錬磨の東京フィルをもってしても、ついて行けないほどのエネルギー。
もっと弦が魂を焼き尽くすほどのエスプレッシーヴォを聴かせてくれたら・・・。否、これ以上言うまい。
今後、東京フィルとどのように関係が熟成されてゆくのか、楽しみである。
追記
わがLB席(LA寄り)では、舞台上の歌手の真横から聴く形になるため、オケがガンガン鳴っているときに声はよく聴こえなかった。
センターでどんなバランスで聴こえたのか興味のあるところである。
ヴェントレは見事な声でカラフを歌いきり、浜田理恵はリューのけなげさを見事に歌い演じていた(息絶えた後、客席に降りて消えてゆくという演出も秀逸)。
カルーソーのトゥーランドットは、出だしこそ高音がフラット気味に聴こえたが徐々に調子を出して、最後の二重唱は圧巻。
狂言回し役のピン、ポン、パンの3人も演技達者揃い。拍手(特に萩原潤の存在感は大きかった!)。
東京少年少女合唱隊の無垢な声もよかった。これにもう少しイタリア流のカンタービレが加われば申し分なし。
新国立歌劇場合唱団は安定の出来映え。
ハーモニーの立ち上り方やプッチーニ特有の転調の妙など、彼らならもっともっと出来たのでは? と思うところもあったが、ラストの盛り上がりは素晴らしかった。
また、なんといってもプッチーニの音楽が凄い。
全篇に美しいメロディがあるから気付きにくいけれど、ドビュッシーや新ウィーン楽派を研究した末のオーケストレーションの前衛性には唖然とするほど。
それをピットでなく、舞台上のオーケストラで生々しく聴く歓びは絶大であった。
咽頭癌を患っていたプッチーニが、当時の最先端治療ともいえる無理な手術など受けなければ、このオペラの最後がもっと違った形になっていたのではないか?
と思うと、それが惜しまれる。
第865回サントリー定期シリーズ
プッチーニ/歌劇『トゥーランドット』<演奏会形式・字幕付>
指揮:アンドレア・バッティストーニ
トゥーランドット(ソプラノ):ティツィアーナ・カルーソー
カラフ(テノール):カルロ・ヴェントレ
リュー(ソプラノ):浜田 理恵
ティムール(バス):斉木 健詞
アルトゥム皇帝(テノール):伊達 英二
ピン(バリトン):萩原 潤
パン(テノール):大川 信之
ポン(テノール):児玉 和弘
官使(バリトン):久保 和範
合唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:東京少年少女合唱隊 ほか