13日夜、ゼンパーオパーでティーレマン指揮の「ラインの黄金」を鑑賞し、翌14日の午前11時からは新装なったクルトゥーア・パラスト(芸術の宮殿)にて、ヤノフスキのブルックナー9番を聴く。さらに同じ日の16時からは再びゼンパーオパーで「ワルキューレ」を鑑賞する、というようなことは日常ではあまりないが、ドレスデンではあり得る。実に濃厚な2日間。
プログラム前半は、バルトーク: ピアノ協奏曲第3番。ピアノ独奏: フランチェスコ・ピエモンテージ
ヤノフスキの抑制された情感によるアプローチはバルトークの厳しさに似合っている。一方、ピエモンテージはやや過多とも思われる情感をバルトークの音に乗せる。両者のバランスは悪くなく、特に第2楽章の張り詰めた透明な抒情が美しかった。
後半はブルックナー「9番」。ヤノフスキのブルックナーでは、2015年にベルリン放響との「8番」をサントリーホールで聴いたが、今回はその何倍も素晴らしかった。
極めて小さなアインザッツによる指揮のため、オーケストラのアンサンブルはたびたび乱れるのだが、そんなことを超越した究極の美への想いがひしひしと伝わってきた。
いつまでも余韻に浸っていたいブルックナーであり、この想いを文字にできない、というよりは、したくない、といった類の感動であった。
新装されたクルトゥーア・パラストは写真で見るほどの高級感はなかったものの、音響は見事。独奏ピアノがあんなにクリアに聴こえるホールを日本で探すのは難しかろう。
ただし、空間は大きくないので、シカゴ響やフィラデルフィア管がバリバリ鳴らすためのホールではない。ヤノフスキも心得ていて、ブルックナーの最大音量も理性的にコントロールされていたように思う。