一枚の写真

　こういうの出しちゃうの、どうかと思うんだけど。
　自分が写っている写真では、かなり好きな一枚。
　この写真は、去年の３月１１日、父が撮ってくれました。
　ニュージーランドの地震をすり抜けて、無事に帰って来た両親を迎えに行って、元気な姿を確認してホッとしたからこんな笑顔。
　無邪気に手なんか振ってます。

　まさかこの５時間後に、あんな事になるなんて夢にも思わなかった。

　あの瞬間まで、脳天気だった私がそこにいます。
　これはＧＷに帰った時に、父が見せてくれた旅行中の写真に混ざっていたもの。
　見つけた瞬間、「これちょうだいっ！」
　父は本当はあげたくなかったかも知れないなあ。
　有無を言わせぬ私の雰囲気に負けた感じ？
　だったらごめんね。ありがとう。
　この日着ていた服は、自宅に戻るまで丸２日間着てました。
　帰ってきて脱いだ時、皮を剥ぐような妙な気がした。すでに自分の一部みたいな。
　その後しばらくは、この服、着られませんでした。
　また大きな地震が来るかも、と思って。
　今は、この服を着て、北へ行っています。
　一時は、捨てようか、とさえ思った。
　でもこの服のおかげで、寒さに震えることもなかったわけで、一緒に乗り越えてきた相方を着なくなってもいいけど、手放しちゃダメなんじゃ、と思い直して現在に至る。

　この日は本当にすぐ帰るつもりだったので、いつもなら持っている、予備のコンタクトも充電器もマグライトも乾電池も何も無かった。
　妹たちへのお土産のお菓子ばっかり。
　あとカメラ。
　だめだめだなあ～、私。

　一年経って、何かが変わったかといえば、そうでもない。
　あの日何もできなかったように、今も何もできてない。
　相変わらず、周りの人に助けられて生きている。
　だったら何もできないなりに、笑って生きてくのもいいかもしれない。