勇ましい言葉を吐くだけでは解決しないのは実証済みだ!
今日の段階で、日朝協議に関する社説を掲載しておきます。いずれも言葉は勇ましいが、これでは問題の解決を遅らせることは明らかです。貝が扉をあけたのに、ちょっかいを出したばっかりに、再び貝の扉が閉じられてしまうことは明らかです。これらの社説に書かれている論調はすでに破たんしているのです。すなわち「対話と圧力」論が破たんしたこと、また「先軍政治」路線が破たんしたからこそ、人道主義を前面にして両者が一致したのではなかったのか、そのことを一切無視して感情をぶつけているのが、以下の社説です。
再度日朝協議の合意を確認し、対話と交流を密にすべきだ!
今回一致した人道主義を尊重する路線は、侵略戦争と植民地主義まで遡っていること、だからこそ、侵略戦争を反省して制定された日本国憲法の平和主義と国際協調主義に基づく外交路線を具体化することが大事なのです。今回の協議は、戦後の拉致問題、拉致の疑いのある失踪者、そして植民地支配と関係のある帰国した日本人妻の安否、そして植民地朝鮮に「移住」していた日本人、あるいは満州国に「移住」していた人たちの遺骨収集問題など、まさに人道問題を含んでいることは周知の事実です。北朝鮮にとっても、戦後賠償問題と日本の経済支援をリンクとさせて「人道問題」として議論していることは周知の事実です。
北朝鮮との「合意」は対等平等に確認されたことを忘れるな!
北朝鮮国内政治の問題を言うのであれば、日本にとっても同じです。拉致問題が、核兵器の問題と絡めて「対話と圧力」路線を採用してきた結果、解決を観ることなく、今日に至ったことは、自民党政権、とりわけ安倍政権にとっても、政権の安定を左右する問題であることは明らかです。その点では金政権と安倍政権は五分五分なのです。だからこそ、「対話」路線に転換したのです。このことは憲法の平和主義と国際協調主義こそが、隣国との交流の最大の原則であることを、身を持って証明したのです。
拉致被害者・失踪者の帰国を最優先すべきだ!さもなければ永遠に解決しないぞ!
ところが、以下の社説を読むと、古い、冷戦時代の、また戦前の傲慢外交路線と基本的には変わらない見解、鬱憤をはらす感情をぶつけるだけの論調としか言えません。これらの論調をそのまま使って北朝鮮にぶつけたらどのようなことになるか、この新聞社は責任をとれるのでしょうか?拉致被害者や失踪者を帰国させるためには、何が必要か、北朝鮮政府に「なめられた」としても、とにかく疑惑のある日本人の帰国を最優先することに専念すべきです。さもなければ、帰国の実現は極めて困難になることを自覚すべきです。
人道主義の範囲は明治以降の日朝関係の総括を象徴しているのだ!
日本は1910年から1945年の35年間にわたる植民地支配の謝罪と補償を、戦後70年経過しても、具体化していないのです。北朝鮮に、あれこれ言う前に、まずこの事実について、北朝鮮にクレームをつけるのであれば、確認する必要があることを肝に銘じるべきです。正確には、1875年の江華島事件によって結ばれた日朝就航条規(1876年)=不平等条約による不正常な日朝関係を含めて一世紀以上ににわたる不正常な隣国との関係を清算するためには何が必要か、主客転倒をする論調はやめるべきです。日本人が拉致問題などに怒る気持ちは、そのまま植民地支配で苦しめられた朝鮮人にも当てはめていくのがスジというものではないでしょうか!?
再度強調します。拉致被害者・失踪者の帰国を最優先させるために、北朝鮮政府の調査について、一つ一つ丁寧な論争をしながら、詰めていくこと、このことそが今やるべきことです。そのためには、平壌に来いというのであれば、またどこどこに来いというのであれば、政府は責任をもって行くべきです。そもそも、このようなことを投げかけてくることそのものが、大きな変化であることを確認すべきなのです。自ら対話と扉を閉めて閉まっては解決を遅らせるばかりか、解決ができないまま、高齢化してしまった拉致被害者とその家族を不幸にするだけです。
舵取りは難しいが、安易な妥協は新たな要求を呼び、全面解決を遠のかせるのであれば何を?
産經新聞 拉致被害者/全員帰国へ妥協はするな 2014/10/1 20:00http://www.sankei.com/column/newslist/../../column/news/141001/clm1410010003-n1.html
北朝鮮は、何か勘違いをしていないか。日本側が最優先に求めているのは、北朝鮮の国家テロによって拉致・誘拐された被害者についての再調査であり、その速やかな報告である。北朝鮮側から、制裁の追加解除など、何ら交換条件を突きつけられるいわれはない。拉致被害者の全員帰国に向け、一切の妥協はすべきではない。
日朝外務省局長級協議が9月29日、中国・瀋陽で行われたが、拉致被害者らの再調査の報告時期について合意はなかった。協議は、当初「夏の終わりから秋の初め」とされた初回報告の時期を北朝鮮側が先送りにしたため、日本側が経緯の説明を求めたものだ。席上、宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使は日本側に対し、調査の詳細については平壌に来て特別調査委員会から直接報告を受けるよう提案したという。到底、受け入れられる話ではない。
拉致被害者、横田めぐみさんの母、早紀江さんが「じれったい。どうしてそんなに動かないのか分からない」と話したのも当然だ。北朝鮮は本来、拉致被害者の現状について、再調査の必要もなく把握しているはずなのだ。
安倍晋三首相は臨時国会の所信表明演説で「今回の調査が、全ての拉致被害者の帰国という具体的な成果につながっていくよう、『対話と圧力』『行動対行動』の原則を貫く」と述べた。「行動」のボールは、北朝鮮側が握っている。拉致被害者の帰国に向けた具体的進展がない限り、制裁緩和や訪朝を検討する必要は全くない。北朝鮮は拉致事件をめぐり、嘘ばかりついてきた。日本政府認定の拉致被害者12人について「8人死亡、4人未入国」としながら、生存情報があると「死亡日時」を訂正し、他人の遺骨を送りつけてきたこともある。もうこれ以上、嘘や引き延ばし、情報の小出しは許されない。自らの犯罪行為を交渉の材料に果実を求める、やっかいで、したたかな相手だ。舵(かじ)取りは難しいが、安易な妥協は新たな要求を呼び、全面解決を遠のかせる。安倍首相は所信表明で「全ての拉致被害者のご家族がご自身の手で肉親を抱きしめるその日まで、私たちの使命は終わらない」とも述べた。取るべき進路は、決まっているはずだ。(引用ここまで)
北朝鮮の思惑を打破し交渉の主導権を握らなければ
拉致問題の解決は望めまいというのであれば何をどうするのか!
交渉カード・切り札の切り合い、いかにカードを使い主導権を握るか!というのであれば?
河北新報 拉致再調査/「北」の交渉戦略見極めたい 2014/10/2 8:00http://www.kahoku.co.jp/editorial/20141002_01.html
国家で拉致という罪を犯しながら、その被害者らを「人質」に、したたかに経済利益を求めてくる国である。この一手の目的は何か。真意を見定め、対処方針を固めねばなるまい。
日本人拉致被害者らの再調査をめぐる北朝鮮との交渉で政府は、調査に当たる特別調査委員会のメンバーから詳細な説明を受けるため、外務省担当者らを近く平壌に派遣する方向で調整に入った。中国で9月29日に開かれた日朝政府間協議で、北の代表が訪朝を促したという。だが、当の北の代表は協議の中で、特別調査委が設置からほぼ3カ月がたっているにもかかわらず、調査は「初期段階で、具体的な報告ができる段階ではない」とも語っている。
訪朝して拉致被害者の安否に関する新たな情報が得られるのかどうかは疑問だ。むしろ、交渉が北朝鮮ペースで進む恐れが強まるのではないか、そんな懸念を抱かざるを得ない。
だが派遣が決まれば、交渉前進を図る一里塚とし、可能な限り情報を収集したい。その上で北の交渉戦略を見極め、対北の交渉方針を見直す必要がある。北の戦略を探る上で見逃せないのは、今回の正式な政府間協議に至るまでに水面下で行われた日朝接触の経緯だ。
北朝鮮は、拉致の疑いが拭えない特定失踪者、日本人妻や残留日本人の安否情報に限って、9月中旬が見込まれた初回報告に盛り込む考えを伝えてきた。
日本は解決を最優先する認定拉致被害者12人に関する新たな情報がない限り受け入れられないとして、拒否したとされる。このことが「調査は初期段階」というゼロ回答につながった。
5月の日朝合意で、調査対象を全ての日本人に広げたことが交渉を複雑化したともいえる。この日朝の接触から言えるのは、北朝鮮は特定失踪者ら新たな「交渉カード」を手に入れ、それらを小出しにして駆け引き材料に使おうとしていること。
もう一つは、調査するまでもなく安否を含む情報を把握しているとみられる拉致被害者に関しては「切り札」として温存する腹ではないかということだ。こうした思惑を打破し交渉の主導権を握らなければ、拉致問題の解決は望めまい。
北も協議断絶を望んではいまい。中国から原油供給を断たれ孤立が深まる中、経済再建を図る上で日本の支援は必要だ。貨客船「万景峰92」の往来を含む独自制裁のさらなる解除や人道支援を期待しているとされる。
むろん、それらは日本にとっての交渉カードである。
特定失踪者の安否情報について受け入れ拒否を続けるわけにはいくまい。北の真意を慎重に探り、対北の交渉戦術を練り直すべきである。
政府が交渉原則として掲げる「行動対行動」は交渉カードの切り合いといえる。いかにカードを使い主導権を取って拉致被害者の安否情報、帰国につながる対応を早急に引き出すか。拉致解決を「使命」と言う安倍外交の手腕が問われている。(引用ここまで)
毅然と、そして粘り強い交渉が求められる!?
強硬姿勢に傾けば日朝合意が破棄されないとも限らない!?
混迷しているのは京都新聞だ!
京都新聞 拉致再調査報告/思惑見極め交渉に臨め 2014/10/2 10:05http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20141002_4.html
初回報告は「夏の終わりから秋の初め」という約束には知らん顔で、「くせ球」を投げてきた。拉致被害者らの再調査をめぐる日本と北朝鮮の外務省局長級協議で北朝鮮は、「調査は初期段階」とした上で、詳細は日本側が訪朝して、調査を担当している特別調査委員会から直接聞くよう求めた。 なぜ北朝鮮でなのか。意図は不明だが、駆け引きはもういい加減にやめたらどうか。 政府は外務省幹部らを平壌に派遣する方向で調整中という。 大事なのは拉致問題の解決に向け、調査を促し、正確な結果を引き出すことだ。北朝鮮にどんな思惑があるのか、まずは慎重に見極めることが肝要だ。
政府は、5月の日朝合意を受けて設置された北朝鮮の特別調査委員会が、実効性ある組織と判断。日本が独自に科していた経済制裁の一部を解除した。 見返りとなる初回報告の時期を迎えたが、北朝鮮は8月の極秘接触で横田めぐみさんら12人の拉致被害者の安否情報については「調査中」とする一方、戦後北朝鮮に渡った日本人妻の情報などなら盛り込めると伝えてきた。併せて、貨客船「万景峰92」の日本への入港再開などを求めた。 拉致被害者についての情報は小出しにし、制裁の追加緩和を求める狙いとみていい。拉致問題を最優先事項とする政府が報告を受け入れられないのは当然だろう。
だが北朝鮮が拉致問題で納得のいく回答をすれば、安倍晋三首相の訪朝による早期の問題解決も視野に入れていたとされる。読みが甘かったと言わざるを得ない。 北朝鮮の求めに応じ訪朝すれば拉致被害者に関する情報を得られるかもしれない。一方で日本人妻の消息などだけで終わり、拉致は置き去りにされる恐れもある。そもそも、拉致被害者は北朝鮮当局の監視下にあるはずだ。今更「調査中」は納得できない。調査開始から3カ月になるのに「初期段階」というのも理解しがたい。
駆け引き、揺さぶりは北朝鮮の常套(じょうとう)手段だ。相手ペースにはまってはならない。政府は「行動対行動」の原則で対応するというが、強硬姿勢に傾けば日朝合意が破棄されないとも限らない。毅然(きぜん)と、そして粘り強い交渉が求められる。
期待が高かった分だけ、拉致被害者家族の落胆は大きい。高齢化も進む。「元気な間に抱きしめたい」-横田めぐみさんの母、早紀江さんの願いを、願いのままに終わらせるわけにはいかない。(引用ここまで)
拉致は犯罪であり駆け引きの材料にすること自体言語道断であれば植民地支配も同じだ!
北朝鮮の不誠実な態度ばかりを強調するのではなくギブアンドテイクではないのか!
日朝協議の合意事項を誠実に具体化していくのは対等平等を、人道主義を貫いてこそ!
へんてこな筋書きを書くのではなく虚心坦懐に対話と交流を!
中國新聞 拉致再調査/北朝鮮は約束守るべき 2014/10/2 10:00http://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=93575&comment_sub_id=0&category_id=142&category_list=142&localfrom=column
日本人拉致被害者たちの安否の再調査をめぐる日朝交渉が後退している。9月に出すとみられていた初回の報告を北朝鮮が先送りし、おとといの政府間協議では、その報告の時期について決められなかった。説明を受けた拉致被害者の家族が「北朝鮮の思惑通りに動いているように感じる」と苦言を呈したのはもっともだ。報告の内容次第では、安倍晋三首相の訪朝が視野に入っていたようだが、当初の筋書きは崩れたといわざるを得ない。
日朝の公式な政府間協議は今春再開し、交渉は順調に進んでいるように見えた。家族はもとより世論の期待が高かっただけに、失望感は大きい。
初回報告の時期は日朝間で7月、「今夏の終わりから秋の初め」と確認したはずである。北朝鮮が金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の直轄下にある特別調査委員会で再調査を進めるとし、日本側もそれを認めて経済制裁の一部を解除した。交渉に基づく約束は守ってもらわなければ困る。
窓口となっている北朝鮮の宋日昊(ソン・イルホ)大使は共同通信に対し、日本への報告はいつでもできると述べていた。にもかかわらず、報告の期限を迎えた途端、「初期段階にある」として覆した。北朝鮮は拉致被害者を厳重に監視しているとされ、安否は把握済みとみる方が自然ではないだろうか。交渉の中では初回報告で特定失踪者の情報を示す考えを示したという。拉致は犯罪であり、駆け引きの材料にすること自体、言語道断だ。
再調査に懸ける日本と、万景峰(マンギョンボン)号の日本入港再開などさらなる経済制裁の解除を狙う北朝鮮の思惑のずれが、より鮮明になったといえよう。この点は5月に再調査の合意文書を交わした際にも指摘されていた。
これまでの調査で北朝鮮は国家間の信義を裏切り続けている。10年前には偽の遺骨まで持ち出して生存を否定する結果を伝えてきたという経緯もある。北朝鮮の不誠実な態度は、何も拉致問題だけではない。長距離弾道ミサイル発射や核実験など、新たな挑発行為に走らないとも限らない。粘り強く交渉を重ねる必要があろう。
ただ、北朝鮮が追い込まれた状況にあることに変わりはない。日朝協議に踏み込んだ背景には、後ろ盾とされる中国との関係悪化がある。中国はことしに入り、北朝鮮への原油の輸出を中断したという。韓国や米国との協議も進まず、経済や外交面での孤立は続いている。
金第1書記の体調についても、朝鮮中央テレビが「不自由な体」と伝えた。両足首を負傷したという話や、肥満による健康悪化との見方さえ流れる。再調査の進展に影響する可能性もあり、情報を精査すべきだ。
日本政府は再調査の現状について詳しい説明を受けるため、担当者を平壌に派遣することを検討している。これを聞いた拉致被害者の家族から「単に会いに行くだけではリスクが生じる」との意見が相次いだ。北朝鮮側の提案でなぜ、訪朝する必要があるのか。意図を見極めねばなるまい。安倍首相はきのう参院本会議で「全ての拉致被害者の帰国に全力を尽くす」と述べ、政権の姿勢は変わらないことを強調した。交渉戦略の練り直しをいとわず有言実行で臨んでほしい。(引用ここまで)