岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

「大沢の雪渓、4人連れで登り、2人は岳へ、もう2人は私と赤倉登山道を降りる」(その2)

2009-07-06 05:18:53 | Weblog
 (今日の写真はミチノクコザクラである。白花も咲いている。私と一緒に登った4人のとって、「シロバナミチノクコザクラ」は初めての「出会い」となった。
 詳しくは次項「」を読むと分かるのだが、この4人はすべて初めて「百沢登山道」を登るのである。
 その中の1人は名古屋から来た人であり、岩木山は「初めて」なのだ。そして、その相棒である1人は別のルートですでに岩木山には登っているらしいのだが、女性2人組にとって「ミチノクコザクラ」との出会いは初体験なのである。
ご夫婦2人は2週間前に「赤倉登山道」を登ってはいるが悪天のため、「赤倉御殿」付近まで登り、普通の「ミチノクコザクラ」に出会って下山している。「赤倉登山道」沿いでは「シロバナミチノクコザクラ」と出会えない。少なくともこの数十年間、私はまだ出会ってはいない。
 この4人は「ラッキー」だったと思う。「初めての岩木山」、「初めての百沢登山道登り」、そして、長い大沢の「雪渓登り」の果てに、出会った「白花」のミチノクコザクラ…いつまでも記憶の底に残るだろう。案内した私もすごく嬉しい。
 白花の「ミチノクコザクラ」の出現率は「時々見かける」程度である。これは変異種であり、一見、八甲田山に咲く「ヒナザクラ」に似ている。
 この出現率は「普通種1.000本に対して1本」程度という確率であるとされている。大体その程度だとは思うが、場所によって偏在していて、ある場所ではまったく「シロバナミチノクコザクラ」が見られないこともある。
 「一般的なシロバナミチノクコザクラ」は茎頂に1輪か2輪の花をつけているのが普通だ。だが、中には一本の茎頂に20個以上の花を総状につけるものもある。これは非常に珍しい。その発生頻度は5~7年に1度程度であり、出現確率は普通種5.000本に対して1本という確率程度でないかと考えられる。
 今日の写真の「シロバナミチノクコザクラ」は一応、花を総状につけて、7輪ほどの花が見える。
 白花の背後に見えるものは「茎」がやたらに長い。この姿は「花簪(はなかんざし)」に見えないこともない。
 可愛い女性がいたら、思わず折り採って、そっと髪に挿したくなるような衝動に駆られる。若い時に「そのような女性」と一緒に登山をしていたなら、恐らく私はそうしたであろう。だが、そのような機会はただの一度も訪れることはなかった。
 だからといって「自分の髪」に挿したところで、意が適うわけでもない。「単独行の三浦」と人から呼ばれていたのだから、無理もない話しなのだ。)

           ◇◇大沢の雪渓、4人連れで登る◇◇
(承前)
 パーティの組み方としては実に唐突であり、行き当たりばったりで計画性のないものであることは否めない。登山でパーティを組む場合は事前に綿密な打ち合わせや了解事項の確認がリーダーを中心にメンバー1人1人が、納得いく形で行わなければいけない。
 この山行で私を入れて「5人のパーティ」が即製されたことは、決して尋常なことではない。このような形で「安易に」に「パーティ」を組むことは「異常」なことであり、慎まなければいけないことではあるのだ。
 もし、まったく岩木山に不案内な2組が、急遽、合同して1つの「パーティ」として、行動したとしたらどうなるのか。
 それは、まるで、「地図や磁石」を持たず、道なき密林や泥濘、険しく荒々しい岩稜帯に迷い込むことに等しい。
 だが、今回は、私が「地図や磁石」であり、「密林や泥濘、荒々しい岩稜帯に迷い込むこと」をさせずに「危険」を回避させるためのリーダーであった。また、楽しく、疲れない山登りをするための「ノウハウ」を示しながら登る者でもあり、加えて「花や樹木」、「岩木山の生い立ち」、「昆虫、野鳥や小動物」などについて「訊ねられる」と答えることが出来る者でもあったのだ。
少なくとも、初対面の2人の女性を含めた全員がそう思っていたであろう。だから、「パーティ」結成は唐突ではあったが、その質的な形成プロセスはきわめて自然であり、違和感はまったくなかったのである。ただ、私の責任は非常に大きく強いものになったことは事実であった。
…という訳で、この「奇妙な編成」の5人組登山が始まったのだ。

 百沢スキー場の縁には「オカトラノオ」が白い蕾をつけていた。季節はすでに夏だ。春の花々は影形もない。特に、「スプリング・エフェラルズ」と呼ばれるものは、その茎や葉をもどこかに「消して」しまっていた。一ヶ月半ばにしてミズナラ林の林床は一変していた。七曲がりを登り切るまでは「花」の影はない。
 七曲がりの途中でIさんが目敏く「白い花」のようなものを見つけた。早速、「これ何ですか」という質問だ。
 しかし、私はそれに答えない。「何なのか知らない」のではない。それは「カタクリ」の花の名残、詳しくは「果実が熟して裂開し、種子を落とした抜け殻」なのだ。
 5月上旬に花を咲かせて、受粉して5月の下旬には茎頂に「3面の軍配を貼り合わせた」ような淡い緑色の果実をつけるのだ。やがて、4、5日すると黄色に変色して「果実」は裂開し、そこから黄褐色の種子が顔をのぞかせる。そして、次第に「殻」は裂けて種子を地上にこぼすことになる。Iさんが目敏く見つけた「花」のようなものは、その「殻」の枯れたものなのである。
 こぼれた種子は長さが2mmほどの小さなものだ。肉眼ではなかなか見えない。一応目で追ってはみるのだが、見えない。
 種子はアリによって運ばれてしまったからだ。黄褐色の種子の端には、少し透明感のある物質「エライオソーム」と呼ばれるものが付いている。
 それには「アリの好む物質」が含まれているので、アリが種子を巣へ運び込んでしまったのだろう。このようにして「種子」は分散されるのである。
 カタクリは「アリ散布植物」の1種なのだ。

 私は、それが何であるのか、少なくとも「葉の残存」を示して、もっと具体的に説明出来る場所までは「答えない」と考えていたからである。(明日に続く)