岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

7月6日、弥生登山道から登り百沢に降りた/「岩木山・花の山旅」出版について語る(9)

2008-07-12 05:15:19 | Weblog
(今日の花は6日に百沢登山道で出会ったイチヤクソウ科ウメガサソウ属の多年草で、「一途に貧土が育む鈴振りの精」とでも形容される「ウメガサソウ(梅笠草)」だ。
 花名の由来は花の形が梅に似ていること、しかも笠のように下向きに咲くことによるのである。
…最初の出会いはこうであった。
七月上旬、標高五百数十メートルまで押し上げられた登山口を出発した。古い林道から入るこの登山道は、途中に神社を二カ所持っていて、最初の神社まではミズナラ林の中を進む。
 登山道は年々広くなっていた。神社に来る者が自動車を使うために、登山道は参道になってしまった。昔は登山者も参詣者も狭い一本道を歩き、不便や不自由を感じなかったし、道端の花も共有していた。
 車で来る人には花は見えない。私たちの世界を認識する窓の形が違えば、見える範囲や性質は違ってくるからだ。また、歩かなければ花には会えない。見えないのである。また咲いていても適当な言葉を持っていない場合、その花が目に入らないこともある。
 道の繁みにはクルマユリの「車葉」が目立つ。その葉の下には丈の低い二種類の白い花がぽつりぽつりと咲いていた。
 コバノイチヤクソウともう一つ、乾いた貧土に咲く白い鈴振りの精、可愛いウメガサソウである。これもイチヤクソウの仲間で、根が貧弱なので菌類の助けで養分を取り入れていると言われている。
 だが、これですら目に入らない人もいる。世界を認識する多くの窓を持ち、それを表現するための感性と知識を、自分で育てる機会を持たねばならないのだ。

 …百沢登山道の七曲りに近づいた頃に、後ろのTさんが訊いた。「この白い花、なんですか。」そう言われてやっと気がついたのである。私は時間に追われていて「認識する窓」を持っていない状態だったのである。
 Tさんは体力的に余裕があった。それが「認識する多くの窓を持ち、それを表現するための感性と知識」を呼び起こしていたのである。健康な体と体力的な余裕は、あらゆるものに対する「感性と知識」を支える基本である。)

(承前)
 「昨日の続きはここから始まる」
…彼ら2人に対する「ねぎらいと感謝」の言葉を述べることが出来たのは、耳成岩下端を頂上に向けてトラバースしている時であった。あと30分もすれば頂上という場所である。
 先ずは、年配者が降りて来た。下草が生えて、しかも岩がごろごろしているので降りることが難儀のようだ。
 出会った時の開口一番は「足場」の不安定さに対する嘆きだった。登りは手で岩や草や枝をつかんで体の確保は出来るが、降りる時は登りのようにはいかない。これが登山の常識だ。「登山」は降りる時の方に危険が偏在する。
 「言われたとおりクマの糞が沢山ありました。」
 「そうですね。」
 「9月には故郷に帰るそうで。今日は岩木山に足を運んで下さって有り難うございます。」…と言いながら、私は名刺を出して「自分」をその人に対して明らかにした。
 「故郷に帰る前にまた、岩木山に来て下さい。」
 「そうしましょう。」
 「もし、花に興味がありましたら、実は来月の上旬に、岩木山の花の本を出すんですよ。438種の花の写真が載っています。」
 「そうですか。すごいですね。ぜひ購入したいと思います。書店で手に入りますか。」
 「もちろん、入りますよ。私から直接購入することも出来ます。その際は名刺に書かれてあるアドレスにお願いします。」
 「お気を付けて。」
 …このような会話を交わしながら彼は降りて行った。
 それから間もなくして、今度は若者が降りて来た。(この稿は明日にに続く)
 

 ☆☆「岩木山・花の山旅」を8月上旬ねぷたのころに出版します。その案内です(9)☆☆

 ●表記についてのおおまかなことは、本ホームページ左欄の「・新着更新Blog(RSS版):管理人葛西さん担当」をクリックして、あとは表記されてあるところをクリックしていくと見ることが出来ます。写真の大きさや枚数に制約があるので私のブログでは紹介出来ません。
 7月5日に葛西さんに掲載してある花438種の「総索引を送ってあるので、近々、それも掲載してくれるはずである。●

 300種の花に付けた私の印象を「キャプション」にしたものを紹介する。
承前(その3)

46)ウスバサイシン(薄葉細辛)・陽光に恥じらい身を伏す土の精霊
47)オオバクロモジ(大葉黒文字)・垂れる滴露に輝く黄色い早春の朝ぼらけ
48)ヒトリシズカ(一人静)・我が名を忘れ群落は木漏(こも)れ日の下の騒然
49)ミツバアケビ(三つ葉通草)・陽光に透(す)けて輝き行く手を遮る臙脂(えんじ)色の吊り棚
50)マイヅルソウ(舞鶴草)・鶴丸模様の葉を従えまばゆい光で群れる白い小花
51)ムシカリ(虫狩)・己の緑葉を褥(しとね)にして輝く白砂(はくしゃ)の群れ
52)ラショウモンカズラ(羅生門蔓)・藪中を照らす濃紫色の重ね灯籠
53)ミヤマキケマン(深山黄華蔓)・林中に頭を垂れ黄色に輝く仏の慈愛
54)シオデ(牛尾菜)・自己生命の緑葉と枯れ葉の生の線香花火
55)ミヤマスミレ(深山菫)・山道で微笑み語りかけてくれる一時の安堵
56)シロバナミヤマスミレ (白花深山菫)・登る意志を烈しく鼓舞する生々の気  
57)エゾノリュウキンカ (蝦夷の立金花)・湿地に坐し水芭蕉が背にする金屏風
58)ニリンソウ(二輪草)・林縁に双子ふたごで群れる相似形
59)トキワハゼ(常磐黄櫨)・藪中の海に煌(きら)めき踊る淡紫貝
60)ゴヨウイチゴ(五葉苺)・古来不変の此岸に咲く簡素な美