「この物語の前半で、アンを引き取ることを決意したマリラは、しかしその最終的な決断を下す前にあることをします。それはアンの基本的な性質が、素直で真面目かどうかということを確認する作業です。マリラは半日間アンを働かせて、その様子を観察します。この辺の感覚は非常に実際的な人で、アンが置かれてきた境遇に共感する能力は持ちながらも、ただ単純に感情に流されたりはしない。自分が責任を持って育てていけるかどうか、というところも含めて、きちんと見極めようとする能力が備わっている人です。この感覚はマシューにはないものです。
その結果マリラは、この少女が「頭がよく、いうことを素直に受け入れ、進んで仕事をし、のみこみも早い」子であると判断する。ただし大きな欠点も持っていて、それは「仕事をしている最中に、うっとり夢見心地になってなにもかも忘れてしまい、お小言がとぶか、大失敗をやらかすかして初めて、はっとわれに返る」という点。しかし、肝心なのは前半のところで、後半の部分は一緒に生活して指導していけば大丈夫だと判断したのでしょう。アンに引き取ることに決めたことを告げます。そして責任を持ってアンを教育していこうと決心します。
しかしここからが大切なところですが、アンの教育に関して、マリラがもっとも重要でかつ緊急度が高いと判断したのは何かというと、実はそれはアンの宗教教育なのです。マリラがアンについて一番気にしていたこと、それは「この子の宗教がちゃんとしているかどうか」という点でした。
アンを正式に引き取ることに決めた夜、マリラはアンをベッドに連れて行き就寝のお祈りをするように指示します。ところがその応えに、マリラはまずあっけに取られる。アンが堂々と「お祈りはしないことにしているの」と言ったからです。
「毎晩お祈りをしないのはとても悪いことだということを、知らないのかい?お前は悪い子だと思うね、アン」
「赤毛だと、いい子になるより、どうしても悪い子になっちゃうの」アンは文句でもいうようにいった。「赤毛じゃない人には、それがどんなに大変なことかわからないと思うわ。わたしが赤毛なのは神さまがわざとそうしたからだって、トーマスのおばさんにいわれたから、それからは、神さまなんかどうでもよくなっちゃったの。それにどっちみち、夜になるともうくたくたで、お祈りなんかどうでもよくなっちゃったんですもの」
マリラはアンのこの言葉で、ただちに彼女の宗教教育を開始することを決心します。一刻も無駄にするわけにはいかない。それだけマリラにとっては緊急度が高い重要案件だったのです。
実際には、アンはそれまでの孤児院の生活でも日曜学校に通っていたし、賛美歌を歌い、教理問答も覚えていた。マリラに向かって「神は無限、永遠、不変なる精霊にして、知恵、力、神聖、正義、善、真実なる存在なり」とぺらぺら並べ立てることもできた。しかいその姿勢は決して自発的なものではなく、「まったくの異教徒っていうわけじゃないんだ」というレベル。下手したら「キリスト教徒じゃないといってもとおるくらい」とマシューにこぼすほどで、これはマリラにとっては見逃すことのできない、アンの最大の欠点であり、ただちに矯正しなくてはならないものでした。なぜなら、当時のカナダの社会にあっては、善きキリスト教者であるというのは人間であることの条件、というくらいの重みがあったからです。」
その結果マリラは、この少女が「頭がよく、いうことを素直に受け入れ、進んで仕事をし、のみこみも早い」子であると判断する。ただし大きな欠点も持っていて、それは「仕事をしている最中に、うっとり夢見心地になってなにもかも忘れてしまい、お小言がとぶか、大失敗をやらかすかして初めて、はっとわれに返る」という点。しかし、肝心なのは前半のところで、後半の部分は一緒に生活して指導していけば大丈夫だと判断したのでしょう。アンに引き取ることに決めたことを告げます。そして責任を持ってアンを教育していこうと決心します。
しかしここからが大切なところですが、アンの教育に関して、マリラがもっとも重要でかつ緊急度が高いと判断したのは何かというと、実はそれはアンの宗教教育なのです。マリラがアンについて一番気にしていたこと、それは「この子の宗教がちゃんとしているかどうか」という点でした。
アンを正式に引き取ることに決めた夜、マリラはアンをベッドに連れて行き就寝のお祈りをするように指示します。ところがその応えに、マリラはまずあっけに取られる。アンが堂々と「お祈りはしないことにしているの」と言ったからです。
「毎晩お祈りをしないのはとても悪いことだということを、知らないのかい?お前は悪い子だと思うね、アン」
「赤毛だと、いい子になるより、どうしても悪い子になっちゃうの」アンは文句でもいうようにいった。「赤毛じゃない人には、それがどんなに大変なことかわからないと思うわ。わたしが赤毛なのは神さまがわざとそうしたからだって、トーマスのおばさんにいわれたから、それからは、神さまなんかどうでもよくなっちゃったの。それにどっちみち、夜になるともうくたくたで、お祈りなんかどうでもよくなっちゃったんですもの」
マリラはアンのこの言葉で、ただちに彼女の宗教教育を開始することを決心します。一刻も無駄にするわけにはいかない。それだけマリラにとっては緊急度が高い重要案件だったのです。
実際には、アンはそれまでの孤児院の生活でも日曜学校に通っていたし、賛美歌を歌い、教理問答も覚えていた。マリラに向かって「神は無限、永遠、不変なる精霊にして、知恵、力、神聖、正義、善、真実なる存在なり」とぺらぺら並べ立てることもできた。しかいその姿勢は決して自発的なものではなく、「まったくの異教徒っていうわけじゃないんだ」というレベル。下手したら「キリスト教徒じゃないといってもとおるくらい」とマシューにこぼすほどで、これはマリラにとっては見逃すことのできない、アンの最大の欠点であり、ただちに矯正しなくてはならないものでした。なぜなら、当時のカナダの社会にあっては、善きキリスト教者であるというのは人間であることの条件、というくらいの重みがあったからです。」