たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『マイ・フェア・レディ』から『回転木馬』まで(6)

2022年11月28日 10時24分09秒 | ミュージカル・舞台・映画



『マイ・フェア・レディ』から『回転木馬』まで(5)
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/9304d55e10910324829fdb826c7f8cfd

(1995年『回転木馬』帝国劇場公演プログラムより)

「東宝のミュージカル上演史『マイ・フェア・レディ』から『回転木馬』まで-小藤田千栄子-

 では、どんな作品が再演されたのか。70年代に最初に再演されたのは前述したように『ラ・マンチャの男』だが、この作品は、70年のあと、73年(日生劇場)・77年(日生劇場)・79年(帝劇)と公演され、アルドンサ役は77年版から上月晃に替わっている。

 ついで登場したのは『マイ・フェア・レディ』だった。初年キャストのあと、70年・7月の帝劇で、7年ぶりの登場だった。このときのコンビは宝田明と那智わたる。ついで73年には帝劇で平幹二郎と上月晃のコンビ。76年には文化庁移動芸術祭の全国公演があり、これは宝田明と雪村いづみのコンビだった。つまり『マイ・フェア・レディ』のイライザ役は江利チエミ、那智わたる、上月晃、雪村いづみと続いてきたのだが、ここにもうひとり登場する。1978年・東京宝塚劇場公演からの栗原小巻である。この栗原小巻版は、その後、名古屋、大阪を回り、80年代前半にも公演があった。

 そして『王様と私』である。これは68年にもアンナ役を那智わたるに替えて再演されているが、70年代に入ってからは、まず73年に帝劇で上演された。このときのアンナ役は草笛光子で、パンフレットの表紙には「トニー賞国際特別賞受賞記念」と印刷されている。

 この年のトニー賞は〈ブロードウェイの世界への広がり〉がテーマで、フランス、イタリア、旧西ドイツ、旧ユーゴと共に、日本では東宝が受賞した。東宝の多年にわたるブロードウェイ・ミュージカル上演の業績に対して授与されたもので、授賞式のために東宝は、当時の市川染五郎と草笛光子が歌い踊る「シャル・ウイ・ダンス」のシーンをビデオに収録して送ったそうである。このころはまだ、トニー賞のテレビ中継がなかったので知らない人が多いのだが(もちろん私も知らない)、同パンフレットの記述によれば「約五分間、東宝がいままで上演した主なミュージカルの写真による紹介と、帝劇の外観から舞台へ移動し、染五郎と草笛のシャル・ウィ・ダンスになる」構成だったそうである

 この後、76年・帝劇、79年・日生と上演され、79年版からアンナ役は安奈淳に替わっている。

 70年代再演ものの最大のトピックは、やはり『屋根の上のヴァイオリン弾き』であろう。再演は1975年2月の日生劇場で、初演から8年ぶりの登場だった。そして『屋根の上のヴァイオリン弾き』は、この再演版から、新たな命を持ち始めたのである。このときは1か月公演だったが、翌年8月には帝劇に進出し、78年には同じく帝劇で、こんどは11月~12月の2ヶ月公演になる。これがさらなるロングランとなるのは80年代に入ってからだが、人気は公演ごとに上昇し、同時に内容的にも、初演のときとは、かなり異なる味わいを見せるようになった。

 もちろん脚本も音楽も振付も、基本的には同じものだ。安住の地を追われるユダヤ人一家の話である。だが再演以降、このミュージカルには親と子のホーム・ドラマの味つけがなされ、それがほとんど日本人のドラマのように見えてきたのである。このちょっとした工夫が、大いなる支持を受け、さらにはこのようなドラマに、主演の森繫久彌はピッタリだった。演劇の世界における森繫久彌の、生涯の代表作になったばかりでなく。日本の翻訳ミュージカルの〈顔〉にさえなったのである。

 ほかに1970年代には『サウンド・オブ・ミュージック』の再演もあった。これは1965年に芸術座で初演されたあと、68年には梅田コマ劇場で越路吹雪主演版もあったが、75年には帝劇でオリジナル・キャストの淀かおるが再び主演した。そして80年代以降は、安奈淳、大地真央に引き継がれていく。

 もう一本『南太平洋』も1979年に再演されている。これは1966年の越路吹雪主演以来、なんと13年ぶりに上演で、このときの主演は安奈淳だった。このようにレパートリーは永遠の命を持ち始め、1970年代は、再演で名作が磨かれた時代であった。」


                                    →続く


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