たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

茂木健一郎『「赤毛のアン」に学ぶ幸福になる方法』より_仮想が新たな価値を生む

2020年07月21日 09時57分47秒 | 本あれこれ
2020年6月13日;茂木健一郎『「赤毛のアン」に学ぶ幸福になる方法』より_仮想と現実のずれ
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/968aaa390e9f552b599ca5433455ebd2

「しかしここに、その「ずれ」こそが、新たな価値を生み出すケースがあります。
『ウェブ進化論』の著者である梅田望夫氏から聞いた話なのですが、アメリカのITの進歩を支えてきたのは、「怒り」なのだそうです。

 梅田さんのメンター(指導者)で、アメリカのイノベーションを推し進めてきたある企業家がいます。彼は、まだ世の中がフロッピーディスクが主流だったころに、あるソフトウェアを注文したそうです。そして、そのソフトウェアが自宅に届いたときのこと、中身はフロッピーディスク一枚のはずなのに、とても分厚く何重にも梱包されていた。それを見た彼は、梅田さんの見ている前で、その箱をナイフでズタズタにしたそうです。そして、フロッピーディスクを取り出して、「本当に必要なのはこの中のデータだけなのに、なんで、こんな箱に包装してこんな無駄なことをしているのか」と、止められないほど怒ったと言います。

 ここには、自分が想像している「仮想」の世界と、今ある「現実」の世界との「ずれ」に対する、「怒り」があります。本来なら、こうあるべきだという理想の世界があるのに、それにたいして「現実」の世界は追いついていない。まだこんなところで留まっている、そういうまどろっこしい思い、「ずれ」に対する「怒り」が、シリコンバレーのITイノベーションの動機となっている。そう梅田さんは仰いました。

 つまり、「想像力」には功罪二つの面があるのです。

 あるときには「想像力」が行き過ぎて、困った状況に陥ることもある。それはアンのように、お菓子に薬を混ぜてしまうとか、物語のヒロインになったつもりでボートに横たわって流れていったところ、水が入ってきて溺れそうになったりとか、時が経てば笑い話になるようなものから、場合によってはひとつの宗教の体系すらも変革、揺るがしかねない力を持つこともある。それが「想像力」の持つ力の恐い面でもあります。

 しかし一方では、孤児院暮らしにあってもつらい現実に押しつぶされないための逃避の力、あるいはよりよい境遇にあっては、さらなる未来を待ち望むための力としての「想像力」がある。しかしそれは、たったひとりの未来を変える力だけではなく、ときには社会そのものを変革・改革する力を持つ場合があるのです。

 モンゴメリーは、アン・シャーリーというひとりの少女を描くことによって、見事にこの二つの「想像力」の、功罪合わせた二面性を描き出したのです。」





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