映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、年に一度、メトロポリタン美術館で行われるファッションの祭典を追ったドキュメンタリー作品「メットガラ・ ドレスをまとった美術館 」です。
本作、毎年5月第一月曜日にニューヨークメトロポリタン美術館で行われるファッションの祭典とその後に開催されるアートとしてのファッション企画展を追ったドキュメンタリー作品で、アートファンにもファッションファンにもぜひ観てもらいたい作品です。
メットガラと題されたこの企画、ヴォーグ誌の敏腕編集長として、プラダを着た悪魔でもおなじみのアナ・ウインターとメトロポリタン美術館の服飾部門を指揮する気鋭のキューレター、アンドリュー・ボルトンがプロデュースするファッションイベントの全貌を記録したものです。
この作品の視点は、アナによるファッションをアートイベントして確立し商業的にも成功させる視点と中世貴族の衣装から有名デザイナーの作品を数多く所蔵するメトロポリタン美術館の服飾部門のキューレターのアンドリューが歴史的遺産とデザイナーの生み出すアイデアの関連性から展覧会を構成していく視点の二つの視点から装飾美術からアートへと昇華していく過程を描き、その華やかさの中にある苦労をも浮き彫りにしたダイナミックなドキュメンタリーです。
アナのアートに対する視点とアンドリューのファッションに対する探究心と使命感は、思考は違っても表現者としての情熱にあふれています。そしてイベントに集まったセレブ達さえも、アートの一部にしか過ぎず、アナが仕掛けたアートの罠に素直にはまってしまう。一流の表現者たちの才能に感服します。また、ゴルチエやラガーフェルトなどの一流のデザイナーでも自分たちの表現を単なるビジネスと語ってしまていることにも、ある種の信念を感じました。
メットガラが生まれたのが、アレキサンダー・マックイーンの突然の死による回顧展がきっかけだと言います。彼の前衛的な作品が機縁となっています。古今東西の古美術から近現代芸術を収蔵するメトロポリタン美術館により、ファッションとアートがコラボしながらファッション自体が、デザイナーの手を離れて芸術作品へと昇華していく歴史的イベントなっていることを知り、アートの世界が広がることに高揚を覚えます。
日本でもこうしたイベントが生まれ、美術博物館の門戸が大きく広がることを期待します。