メナード美術館・開館30周年を記念して開催中の田渕俊夫展を鑑賞。開館30周年を記念して開催中の同展、メナード美術館の所蔵作品の中核をなす日本画家・田渕俊夫氏は、現在は日本美術院理事長、東京藝術大学名誉教授であり、日本美術界を牽引してきた画家のひとり。その静寂な壮大な世界は観る人をしばし時を忘れる魅力があります。
青や緑を基調にし、独特な透明感のある世界は、今は亡き東山魁夷氏の世界観と相通ずるところがあり、氏を知らぬとも日本画ファンなら惹かれるものがあると思いますが、そこに繊細で細密な描写力が加わり、身近にある風景や植物も、壮大な悠久の世界を感じることができます。
今回の全43点は、額装作品に加え、日本の伝統美の象徴でもある屏風絵数多く展示。さらに薬師寺食堂壁画の写生下図も特別出品され、氏の魅力を十二分に堪能できる展示となっています。
現代美術がもてはやされている現在、ともすれば日本画は、置き去りになっていますが、時にこうした展覧会に身を置き、静謐な時間に浸るのも、美術の魅力ではないかと思います。癒しや安らぎを感じたい人には、ぜひ鑑賞してほしい展覧会です。