映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、キネマ旬報ベストテン外国映画で2位に輝いたジム・ジャームッシュ監督作品「パターソン」です。
インディペンデント界にこだわり続ける監督、ジム・ジャームッシュ。アメリカ人の彼が、現在のアメリカ映画界の動向に逆行するような作品を発表し続けてますが、今回の作品は、その典型的ともいえるものです。
今回の舞台はニュージャージー州の都市パターソン。町の名前を持つ市バスの運転手パターソンは妻と愛犬のマービンと暮らす詩を愛する男。彼の8日間の日常が描かれています。
朝愛用の時計と共に起き、妻の手弁当と詩を書くためにペンとノートを持って仕事へ。出発前のバスの中で詩をしたため、仕事中は乗客の会話に優しく耳を傾ける。帰宅後は、愛犬と夜の散歩に出かけ、途中バーによるビールを一杯呑みマスターと些細な会話を交わす。そんなありふれた日常なのに、自然に引きこまれるのは、たぶん誰もが少なからず同じように日常を経験して映画の中の一人となっているからに違いありません。そして、何より彼がしたためる一遍の詩が心地よいBGMとなっているからだと思います。
そんな彼に思いもしないハプニングが。そのハプニングに驚きの表情を見せず日常を過ごすのですが、それも、他人には理解できない事柄だからこそ、悲しみを共有できないことへのあきらめにも似ています。
そんな彼にラストで救いの手が。感情を表に出さないパターソンの詩人としてのスタイルを垣間見るようでした。
パターソンを演じたのは。アダム・ドライバー。詩人パターソンとして適役の存在でした。彼を取り巻く人々もステキな存在です。そして、何より、もう一人の主役と言うべきマービン役のイングリッシュブルドッグのネリーの名演がこの作品には欠かせない存在でした。