今回は、岐阜シネックスにてキネマ旬報ベストテン7位に輝いたアキ・カウリスマキ監督によるヒューマンドラマ「希望のかなた」を鑑賞。
舞台はフィンランドのヘルシンキ。シリア難民のカーリドは、内戦の中で妹と生き別れフィンランドに辿りつき難民申請をするが却下されてしまい、不法難民として隠れていたが、レストランオーナーのヴィクストロムに助けられてレストランで働き始めます。そんな中で、妹と再会を果たしますが、彼の身の上に再び災難が起こります。
カウリスマキ監督は、ルアーヴルの靴磨きなど難民をテーマにした作品を制作していますが、今回の作品も、自らの身の上にも問題を抱えながら、国を追われ安住の地を求めてきた難民に救いの手を差し伸べます。カーリドと妹の別れと出会い、ヴィクストロムと妻と別れと再会など人情味あふれる情景が淡々と描かれます。また、映画の中で使われる音楽も、そうした人々の出会いと別れの劇にうまくつながっています。
カウリスマキ監督は、日本映画とりわけ小津安二郎の世界に影響を受けているそうで、その手法や演出も、どこそこかに日本的な雰囲気を醸し出していて、僕も共感を抱くのかもしれません。
また民族問題や人種問題を軸に難民をテーマにしながらも、大上段に構えることなく、じわりじわりと心に刺さる演出が記憶の奥底に残ります。