今回は名都美術館で階差中の「上村松園と伊藤小坡ー二人のハンサムウーマン」展の美術展レビューをお届けします。
ここのところ、福富太郎氏のコレクション展や現在没後50年を記念する鏑木清方展が東京で開催され明治から大正期の美人画を代表する日本画家の展覧会が注目を浴びています。
今回の展覧会は女流日本画家として文化勲章を受章するなど、美人画の世界で最も人気の高い上村松園と三重県出身で京都画壇で活躍した伊藤小坡の二人の女流画家にスポットをあて、日本画のコレクションで知られる名都美術館所蔵の作品を中心に展示されています。
上村松園は代表作「序の舞」で知られ美人画を描くことに生涯をささげた画家で、鈴木松年に師事、その後幸野楳嶺に師事し、楳嶺死後は竹内栖鳳に師事しています。伊藤小坡も後に栖鳳に師事していますが、二人の人生はまったく異なるものでした。松園は花鳥画の大家である上村松篁の一児をもうけますが、今で言う未婚の母(一説では松年が父)として生涯画業に専念します。小坡は、画塾の同門だった伊藤鷺城と結婚し三女をもうけます。今回の展覧会を観て、美人画の中にその人生が現れているように感じました。
今回の展覧会には松園4点、小坡3点の新収蔵品が展示されていますが、特に三十数年ぶりに存在が確認された松園の「汐公くみ」や小坡の「山内一豊」に二人が画風の特徴が表れています。松園の美人画は華麗さの中に色香が漂う格調高い美人画で人生を美人画に捧げた覚悟が感じられます。一方で小坡は日本画としての夫と共に画業に励み、家族にも恵まれたどこか優し気で穏やかな美人画に感じます。
まさに女性として美人画の世界に身を投じながらも、好対照な画風の共演でした。副題にもある二人のハンサムウーマン。会期は5月29日まで、ハンサムという言葉をなかにある異なる女性像がうかがわれる展覧会をぜひ鑑賞してみてください。