映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、中国で起こった幼児誘拐事件を基にしたヒューマンミステリー作品「最愛の子」です。
本作は、中国を代表する名匠、ピーターチャンが、年間20万人もの子供が行方不明になっていると言われる中国の現状を実際の誘拐事件をもとに描かれた人間ドラマです。
物語は、シングルファーザーのティエンと暮らす3才の男の子ポンポンが、別れた妻ジュアンとあった日に何者かに連れ去られてしまう。捜索から3年後に農村の女性ホンチンの元で暮らしていることがわかります。ホンチンは、亡くなった夫がポンポンを誘拐したことを知らず、捨てられた娘と共に実の子として育てていた。
誘拐犯の妻として、ポンポンと娘まで引き離されたホンチン。娘が捨てられたことを証明するために弁護士を依頼し、ポンポンの生みの親であるジュアンは、ポンポンを気遣い妹である娘の里親となることを決め、ホンチンとの仲裁にのぞみます。
都市と農村との格差社会、誘拐事件による報奨金狙いの詐欺、一人っ子政策が生んだ不条理など、中国の抱える問題を踏まえながら、実の親と育ての親の無上の愛や行方不明となった子供を待つ人々の苦悩や連帯など、家族の絆を様々な視点で描ききった内容に、誰もが深い感動を抱くに違いないと思います。
ピーターチャンの描く世界は、実話による誘拐事件を見事に脚色しています。その手法は、人間ドラマのみならず、ミステリーとしてのラストを迎えます。そのラストで育ての親ホンチンは、愛の代償として招いた事実に涙します。その涙の理由を観る人に問いかけているようでした。