今まで経験してきた領域を考えてみると、すべてが非常に似ていると感じます。M&A、コンサル、医学、法律について考えてみました。その他経験してきた広告、営業にも当てはまるところが多いので、異なる点を中心に少しだけ触れてみます。
ビジネス全般に通じる「仕事学」というものがあったとしたらそれは以下のようなモデルになるのではないでしょうか。
① 商品・サービスを作る
② 相手(クライアント)を知る
③ ①と②のあてはめ
④ 商品・サービスを提供する
⑤ 次に活かす
ビジネスのバリューチェーンにも見えるし、PDCAにも見えるし、3段論法にも見えるモデルですが、結局はすべて類似するものだと思います。今回提唱したいモデルが他のモデルと違う点は、幅広く通じるメタモデルであることです。
まず、M&A、コンサル、医学、法律を考えてみます。①は知識(学問・プロセス)と過去(事例・判例・症例)を学ぶことです。アドバイザー・医師・弁護士からすれば知識=サービスのようなものです。そして②を非常に詳しく行います(後述)。次に②についてどうするべきかという理論・プロセスと、過去にどうしてきてどうなったかを検討します。ここで交渉で提示する価格を考えたり、戦略を選んだり、薬を選んだりします。
次に④、これを提供します。提出資料を作ったりアドバイスを提供したり手術をしたり。最後に⑤、この件自体が「過去」となり、事例・判例・症例(実績)となります。
広告では①と②が逆になります。クライアントを知ってからクライアントに合わせた広告を作ります。そして①と③が同時に行えます。クリエイティブな仕事はこの2点で異なります。商品がまだ存在しないからです。サービス業は「作る」のではなく、あるものから「選ぶ」ケースがほとんどですから、上記の順番となります。
製造業も(ある程度の情報収集を事前に行いますが)商品を先に作り、これを売ります。売る担当である営業マンには、上記のモデルがそのまま当てはまるといえると思います。
さて、根本ではこんなに似ているのであれば、似たスキルが要求されるのでしょうか。思うに、似たスキルではあるのですが、注力する点が異なります。そして、当然ですがそれぞれの取得に時間がかかるため直ぐに異なった職種に転職することはできません。
① 商品・サービスを作る
勉強時間でいえば医学・法律は時間がかかるので、「開発期間」が長いといえます。コンサルでは、基礎知識はありますが、基本はOJTで学べるものです。医学でOJTのみだったら恐ろしいですね。また、広告ではここが醍醐味です。作るのが楽しいのです。
② 相手(クライアント)を知る
これはどの業種でも必要です。非常に細かく相手のことを聞いたり調べたりする点が製造業等と異なる点。マスが相手だからといえばそうなのですが、医療では1日に何人も診るのに全員について詳しくなければなりません。M&Aやコンサルでは会社が相手であるため、完全な情報を得ることが難しく、人間関係についても配慮しなくてはなりません。その意味では非効率的で、人数×一人当たりの情報量が減りますが、それはB2Bの性と言えましょう。
③ ①と②のあてはめ
とくに法律や医学で重要なステップです。そして医学が異なる点は、検査を行い除外診断を行うこと。内科では、ここが醍醐味だと思います。
個人的には「あてはめ力」に非常に魅力を感じますが、なぜ小学校の頃から教育に組み込まれていないのかが不思議です。これは世界的に言えることです。OR, information managementなどと学問はありますが、それはそれでとっつきにくいものになっています。理論的すぎて面白さが埋もれてしまうからです。
ここで問題です。おばあちゃんが住んでいる家の近くに狼がいます。なぜおばあちゃんは家にいないのでしょう?ここで「食べられた」と思って終わらせるべきでしょうか。狼と因果関係があるかないか、2ケースにわけて考えるべきですね。狼と言っても赤ちゃん狼かもしれませんし、動物園の檻に入っているかもしれません。このように可能性を幅広く考えるのも重要です。仮に狼に食べられていた場合でも、実はおばあちゃんが先に狼に攻撃したのかもしれません。そして狼は証拠隠滅ができないので明らかなエビデンスが残っているはずです。このように、逆に細かく考えることも必要です。
この視野のズームイン・ズームアウトできる能力が、実はあてはめ力の重要な要素だと思います。戦略コンサルタントは、MECEが流行ったりしたことでズームアウトが比較的得意です。弁護士は細かいところまで詰める必要があるのでズームインが比較的得意です。もちろん両方身につけるに越したことはありません。
このような、情報に基づく判断力こそが大きな差別化要因となります。実際はこんなに簡単なことなのに。
④ 商品・サービスを提供する
頭を使うのも面白いのですが、やはりエグゼキューションが面白い。裁判が面白い。手術が面白い。ここが醍醐味という点でもサービス業の多くは共通していると思います。どこでもペーパーワークが多いのはつらいのですが。
⑤ 次に活かす
どの業界でも非常に大事です。考えた案件ストラクチャーが1回成功したら、同じことをいろんな会社に提案するものです。ケーススタディや症例報告を書いたりもします。判例は1回でも非常に強い意味を持ちますが、逆に症例は数がないと説得力がありません。EBMという概念が、この点において医学と他の領域の差だと思います。
最後に、仕事のやりがいについて。器用または体育会系なら外科系に進み、頭脳波なら内科に進むべきなのでしょうか。私は、そう思いません。上記のメタモデルはどちらにも当てはまるもので、職種を超えてもあまり差がありません。どのステップが一番楽しく感じるのか、それを念頭に選ぶのも良いのではないでしょうか。
創造で達成感を感じるのか、あてはめで達成感を感じるのか、エグエキューションで達成感を感じるのか。もちろんすべての領域ですべての達成感がありますが、その比率が異なるのだと思います。逆に、達成感を感じるところがメインとなる仕事を選ばないと数年で飽きてしまうかもしれません。
転職・再就職を考えている人が多い今日この頃ですが、少しでも今後の参考になればと思います。
ビジネス全般に通じる「仕事学」というものがあったとしたらそれは以下のようなモデルになるのではないでしょうか。
① 商品・サービスを作る
② 相手(クライアント)を知る
③ ①と②のあてはめ
④ 商品・サービスを提供する
⑤ 次に活かす
ビジネスのバリューチェーンにも見えるし、PDCAにも見えるし、3段論法にも見えるモデルですが、結局はすべて類似するものだと思います。今回提唱したいモデルが他のモデルと違う点は、幅広く通じるメタモデルであることです。
まず、M&A、コンサル、医学、法律を考えてみます。①は知識(学問・プロセス)と過去(事例・判例・症例)を学ぶことです。アドバイザー・医師・弁護士からすれば知識=サービスのようなものです。そして②を非常に詳しく行います(後述)。次に②についてどうするべきかという理論・プロセスと、過去にどうしてきてどうなったかを検討します。ここで交渉で提示する価格を考えたり、戦略を選んだり、薬を選んだりします。
次に④、これを提供します。提出資料を作ったりアドバイスを提供したり手術をしたり。最後に⑤、この件自体が「過去」となり、事例・判例・症例(実績)となります。
広告では①と②が逆になります。クライアントを知ってからクライアントに合わせた広告を作ります。そして①と③が同時に行えます。クリエイティブな仕事はこの2点で異なります。商品がまだ存在しないからです。サービス業は「作る」のではなく、あるものから「選ぶ」ケースがほとんどですから、上記の順番となります。
製造業も(ある程度の情報収集を事前に行いますが)商品を先に作り、これを売ります。売る担当である営業マンには、上記のモデルがそのまま当てはまるといえると思います。
さて、根本ではこんなに似ているのであれば、似たスキルが要求されるのでしょうか。思うに、似たスキルではあるのですが、注力する点が異なります。そして、当然ですがそれぞれの取得に時間がかかるため直ぐに異なった職種に転職することはできません。
① 商品・サービスを作る
勉強時間でいえば医学・法律は時間がかかるので、「開発期間」が長いといえます。コンサルでは、基礎知識はありますが、基本はOJTで学べるものです。医学でOJTのみだったら恐ろしいですね。また、広告ではここが醍醐味です。作るのが楽しいのです。
② 相手(クライアント)を知る
これはどの業種でも必要です。非常に細かく相手のことを聞いたり調べたりする点が製造業等と異なる点。マスが相手だからといえばそうなのですが、医療では1日に何人も診るのに全員について詳しくなければなりません。M&Aやコンサルでは会社が相手であるため、完全な情報を得ることが難しく、人間関係についても配慮しなくてはなりません。その意味では非効率的で、人数×一人当たりの情報量が減りますが、それはB2Bの性と言えましょう。
③ ①と②のあてはめ
とくに法律や医学で重要なステップです。そして医学が異なる点は、検査を行い除外診断を行うこと。内科では、ここが醍醐味だと思います。
個人的には「あてはめ力」に非常に魅力を感じますが、なぜ小学校の頃から教育に組み込まれていないのかが不思議です。これは世界的に言えることです。OR, information managementなどと学問はありますが、それはそれでとっつきにくいものになっています。理論的すぎて面白さが埋もれてしまうからです。
ここで問題です。おばあちゃんが住んでいる家の近くに狼がいます。なぜおばあちゃんは家にいないのでしょう?ここで「食べられた」と思って終わらせるべきでしょうか。狼と因果関係があるかないか、2ケースにわけて考えるべきですね。狼と言っても赤ちゃん狼かもしれませんし、動物園の檻に入っているかもしれません。このように可能性を幅広く考えるのも重要です。仮に狼に食べられていた場合でも、実はおばあちゃんが先に狼に攻撃したのかもしれません。そして狼は証拠隠滅ができないので明らかなエビデンスが残っているはずです。このように、逆に細かく考えることも必要です。
この視野のズームイン・ズームアウトできる能力が、実はあてはめ力の重要な要素だと思います。戦略コンサルタントは、MECEが流行ったりしたことでズームアウトが比較的得意です。弁護士は細かいところまで詰める必要があるのでズームインが比較的得意です。もちろん両方身につけるに越したことはありません。
このような、情報に基づく判断力こそが大きな差別化要因となります。実際はこんなに簡単なことなのに。
④ 商品・サービスを提供する
頭を使うのも面白いのですが、やはりエグゼキューションが面白い。裁判が面白い。手術が面白い。ここが醍醐味という点でもサービス業の多くは共通していると思います。どこでもペーパーワークが多いのはつらいのですが。
⑤ 次に活かす
どの業界でも非常に大事です。考えた案件ストラクチャーが1回成功したら、同じことをいろんな会社に提案するものです。ケーススタディや症例報告を書いたりもします。判例は1回でも非常に強い意味を持ちますが、逆に症例は数がないと説得力がありません。EBMという概念が、この点において医学と他の領域の差だと思います。
最後に、仕事のやりがいについて。器用または体育会系なら外科系に進み、頭脳波なら内科に進むべきなのでしょうか。私は、そう思いません。上記のメタモデルはどちらにも当てはまるもので、職種を超えてもあまり差がありません。どのステップが一番楽しく感じるのか、それを念頭に選ぶのも良いのではないでしょうか。
創造で達成感を感じるのか、あてはめで達成感を感じるのか、エグエキューションで達成感を感じるのか。もちろんすべての領域ですべての達成感がありますが、その比率が異なるのだと思います。逆に、達成感を感じるところがメインとなる仕事を選ばないと数年で飽きてしまうかもしれません。
転職・再就職を考えている人が多い今日この頃ですが、少しでも今後の参考になればと思います。