【社説①・04.07】:京都の国保料上げ 運営の安定へ府の責任重い
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・04.07】:京都の国保料上げ 運営の安定へ府の責任重い
京都府内の自治体で、国民健康保険料(国保料)を引き上げる動きが相次いでいる。
京都市は2025年度分から3年ぶりに引き上げた。40~64歳の1人当たり平均の増額幅は平成以降で最大の10・35%で、年額保険料は10万円を超える。
近年は据え置いていた福知山市や木津川市のほか、宇治市と綾部市も2年連続で引き上げた。24年度は13市町が値上げしている。
国保は74歳以下の自営業者や無職の人らが加入する公的医療保険で、企業健保などと比べて平均所得も低い。物価高で負担増の影響は大きく、加入者の窓口となる自治体には、不安へのきめ細かな対応が求められる。
引き上げの背景には国保財政の構造的な厳しさがある。加入者は減る一方、1人当たり医療費は増加が続く。22年度は全国で実質1千億円の赤字だった。多くの市町村が一般会計から国保会計への繰り入れや基金の取り崩しで保険料を抑えてきた。
運営を担う都道府県が保険給付費を推計し、市町村が払う納付金が決まる。保険料はこれを参考に市町村が決める。
京都では実際の給付費が見込みを上回る状態が続き、穴埋めしてきた府の基金も23年度末までの3年間で70億円近く減り、約6億円と底をつきかけた。そこで納付金の算定方法を見直したところ大幅増額となり、相次ぐ保険料引き上げに至った。
気がかりなのは、府と市町村が信頼関係の上に立ち、持続可能な制度運営に向けて意思疎通を図れているかである。
昨年は、納付金の大幅増額に対する説明が不十分だとして府市長会から不満が示された。府との会合では「互いに制度を保っていく気概が府に感じられない」との批判も上がった。
国は36年度までに都道府県単位での保険料水準の統一を求めており、大阪府と奈良県ではすでに実現した。滋賀県も目標を27年度と定めている。
京都府は統一の時期を明確にしていない。今年に入り初めて示した統一時の保険料試算では、16市町村で引き上げとなり、「衝撃的だ」との戸惑いの声が聞かれた。府は情報を小出しにせず、市町村と踏み込んだ論議に臨む必要がある。
来年度からは国が「異次元」少子化対策の財源確保として打ち出した「支援金」が、医療保険料に上乗せされる。国保加入者の大半は月額数百円の負担増となる。重度患者らの猛批判を受け、今国会では「凍結」となった高額療養費制度の見直し議論も予断を許さない。
政府のご都合主義的な負担増と医療費削減で、低所得層や自治体財政がしわ寄せを受ける事態は見過ごせない。地方は実情を踏まえ、国費の投入増などへ強く声を上げたい。国保の安定運営に責任を持つ府県の役割は、いっそう重みを増す。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年04月07日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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