【社説①・04.08】:コロナ禍5年 感染症担う人材の育成急務
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・04.08】:コロナ禍5年 感染症担う人材の育成急務
新型コロナウイルス感染の拡大を受け、政府が最初の緊急事態宣言を発出して、きのうで5年となった。
大流行の波は沈静化したが、新たなウイルスのパンデミック(世界的大流行)はいつ来ても不思議ではない。コロナ禍の多大な犠牲と混乱を繰り返さぬよう、次の備えが問われている。
中国が原因不明の肺炎患者発生を発表したのは、2019年末。半月後、日本国内で初の感染者が確認された。
感染規模を広げながら大流行が次々と襲い、医療態勢が逼迫(ひっぱく)。検査・ワクチン接種の遅れ、マスクや医薬品の不足、病院にかかれぬ自宅死など、社会・経済を止める大きな打撃をもたらした。
5年間で感染者は国民の6割近い7千万人、死者は13万人に達した。京都府は2500人以上、滋賀県も千人を超える人が亡くなった。
この冬は「第12波」を免れ、関心が遠のきつつあるが、一昨年5月に感染症法上で季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行後もコロナで4万人が命を落としている。長引く後遺症に苦しむ人も少なくない。
コロナの再流行への警戒が引き続き求められる。
一連の教訓を踏まえ、重大な感染症対策の科学的裏付けを担う専門家組織「国立健康危機管理研究機構(JIHS)」が今月発足した。
国立国際医療研究センター(NCGM)と、国立感染症研究所を統合し、対応能力の強化を目指す。米国で感染症対策や国民の健康問題に強力に取り組む疾病対策センター(CDC)がモデルである。
基礎的な研究だけでなく、臨床試験と連携。政府に科学的知見を提供するという。
感染者の隔離や待機期間に必要な調査分析、リスク評価を速やかに示し、初期からの対応につなげる必要がある。
コロナ禍では、流行対策の知見の迅速な収集と分かりやすい発信が十分ではなく、感染防止と経済活動の両立を巡り、政府と専門家会議の意見相違が混乱を招いた。
旧感染研には疫学や公衆衛生の専門家が足らず、対応が後手に回った。
研究や対応を担う人材育成は急務だ。ふさわしい予算確保と環境整備は欠かせない。
政府では一昨年9月、感染症対策の司令塔となる「内閣感染症危機管理統括庁」を創設した。JIHSと密に連携し、省庁の「縦割り行政」を排した対応と備えへ、具体策を求めたい。
京都府は、新たな感染症に対して「京都版CDC」の来年度設置に向け、健康対策課を増員した。国は各自治体と意思疎通を強めてほしい。
コロナ禍の検証は、不十分なままである。国会が調査権を振るい、踏み込むべきだ。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年04月08日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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