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●《戦争体験の継承はどうして必要》? 大矢英代さん《二度と同じ手段で国家に殺されないように、生活を奪われないように、知恵をつけること》

2020年08月14日 00時00分48秒 | Weblog


永田健記者による、西日本新聞のコラム【時代ななめ読み/「戦争体験」というバトン】(https://www.nishinippon.co.jp/item/n/625471/)。
志真秀弘氏による、レイバーネットの書評【〔週刊 本の発見〕三上智恵『証言 沖縄スパイ戦史』/過ちの記録こそ次の過ちを防ぐ地図になる】(http://www.labornetjp.org/news/2020/hon165

 《ジャーナリストの大矢英代(はなよ)さんが今年2月「沖縄『戦争マラリア』 強制疎開死3600人の真相に迫る」(あけび書房)を出版した。悲劇の裏に隠された軍隊の非人間性に切り込んだ労作で、優れた国際報道を顕彰する賞も受賞した。千葉県出身、1987年生まれの大矢さんはなぜ、この問題に取り組んだのか》。
 《映画『沖縄スパイ戦史』(2018年、三上智恵大矢英代共同監督)は埋もれていたこのもう一つの沖縄戦を証言によって描き、大きな衝撃をあたえた。本書は、これに新たな少年兵の証言、軍が全国に遊撃隊を展開しようとしていたことを明かす証言、さらにその後判明した住民虐殺の真相なども加わり、読むものの魂を揺さぶる》。

   『●「戦争マラリア」…いま再び自衛隊配備で先島諸島住民を分断し、
                「戦争や軍隊の本質」の記憶を蘇らせる…

 「戦争や軍隊の本質」の記憶。沖縄での番犬様の居座りや、嬉々として沖縄を差し出すアベ様や最低の官房長官ら。一方、島嶼部では自衛隊が〝防波堤〟や〝標的〟に。《軍隊は人を守らない大田昌秀さん)》、《軍隊は住民を守らない》《基地を置くから戦争が起こる島袋文子さん)》、《軍隊は同じことをするし、住民も協力するし、軍隊は住民をまた殺すことになる三上智恵さん)》…。
 《戦争体験の継承はどうして必要》なのか? 大矢英代さんは、《二度と同じ手段で国家に殺されないように、生活を奪われないように、知恵をつけること》。《「負の歴史こそが、本物の、騙されない強い未来を引き寄せてくれる力につながるということを、この人たちが私に信じさせてくれた」と著者三上智恵は書いている》。

   『●『沖縄スパイ戦史』(三上智恵・大矢英代共同監督): 
           「「スパイリスト」…歪んだ論理が生み出す殺人」
   『●三上智恵・大矢英代監督映画『沖縄スパイ戦史』…
       「戦争というシステムに巻き込まれていった人たちの姿」

   『●「改めて身に迫るのは、軍隊というものが持つ
      狂気性」(高野孟さん)と、いまも続く沖縄での不条理の連鎖
    《マガジン9連載コラム「沖縄〈辺野古・高江〉撮影日誌」でおなじみの
     三上智恵さんが、大矢英代さんとの共同監督で制作した
     映画『沖縄スパイ戦史』が7月下旬からいよいよ公開…
     「軍隊は住民を守らない」…「戦争や軍隊の本質を伝えたい」》。

   『●『沖縄スパイ戦史』と《記憶の澱》…
     「護郷隊…中高生の年頃の少年たち…スパイと疑われた仲間の処刑…」

    《▼日本軍第32軍の周辺で起きた本島中南部の激戦を「表の沖縄戦」と
     すれば、映画が描くのは北部の少年ゲリラ兵部隊護郷隊」や八重山
     戦争マラリアなどの「裏の沖縄戦」。綿密な取材による証言と資料映像で、
     6月23日以降も続いた遊撃戦の実相をつづる》

   『●自衛隊配備・ミサイル基地建設…『沖縄スパイ戦史』「自衛隊
              …昔と同じく住民を顧みない軍隊の本質」暴露
    「レイバーネット…のコラム【<木下昌明の映画の部屋 243回> 三上智恵
     大矢英代監督『沖縄スパイ戦史』/住民500人を死に追いやった犯罪】」

   『●沖縄デマによる市民の分断: 『沖縄スパイ戦史』の両監督…
               「反基地運動は中国のスパイ」デマも同根
   『●大矢英代さん「私たちは、過去の歴史からしか学べません…
               私たちが何を学ぶのかが今、問われている」①
   『●大矢英代さん「私たちは、過去の歴史からしか学べません…
               私たちが何を学ぶのかが今、問われている」②
   『●『沖縄スパイ戦史』: 「それまで『先生』と島の人たちに
           慕われていた山下が抜刀した」…「軍隊の本性」
   『●2019年度文化庁映画賞《文化記録映画部門の優秀賞》を受賞
               …三上智恵・大矢英代監督『沖縄スパイ戦史』
   『●《「遊撃戦遂行の為特に住民の懐柔利用は重要なる一手段にして
     我が手足の如く之を活用する」…住民同士を監視させ…批判している…》
   『●《「慰霊の日」を迎えた。…鉄血勤皇隊やひめゆり学徒隊の悲劇が
     伝わる一方、護郷隊の過酷な運命は長年ほとんど知られていなかった》

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https://www.nishinippon.co.jp/item/n/625471/

時代ななめ読み
「戦争体験」というバトン
2020/7/12 11:00
西日本新聞 オピニオン面 永田健


 「戦争マラリア」という言葉をご存じだろうか。

 先の大戦で沖縄戦中、八重山諸島波照間島石垣島などの住民が日本軍の命令でマラリアの蔓延(まんえん)する地域に移動させられ、感染して死亡した惨事のことだ。米軍上陸のなかった八重山諸島で、どれほど必要性があったかも不明な強制疎開により、人口の1割強に当たる3千人超がマラリアで亡くなったとされる。

 現在コロナ禍に見舞われている私たちなら「感染症で10人に1人が死ぬ」という状況のすさまじさが少しは想像できるだろうか。例えるなら東京で100万人が死ぬようなものなのだ。

 ジャーナリストの大矢英代(はなよ)さんが今年2月「沖縄『戦争マラリア』 強制疎開死3600人の真相に迫る」(あけび書房)を出版した。悲劇の裏に隠された軍隊の非人間性に切り込んだ労作で、優れた国際報道を顕彰する賞も受賞した。千葉県出身、1987年生まれの大矢さんはなぜ、この問題に取り組んだのか。

   ◇    ◇

 大矢さんは2009年、大学のインターンシップ(就業体験)で八重山の新聞社に行き、初めてこの問題の存在を知った。波照間島に移住して住民の家に下宿し、8カ月間農作業を手伝いながら戦争マラリアの体験談を集めた。その後も沖縄のテレビ局に就職するなどして、断続的にほぼ10年にわたり取材を続けた。

 現在、米カリフォルニア州を拠点に活動する大矢さんにメールで話を聞いた。

 -なぜこの問題を?

 「こんな重大な歴史をどうして22歳になるまで知らなかったのか、自分の無知を恥じました。学校で誰も教えてくれなかったのなら自分で調べたい。それがスタートでした」

 「実際に取材してみると、簡単に証言してくれる人はいませんでした。思い出したくもない体験なので、当たり前ですよね。家の前でチャイムが押せず30分ぐらいうろうろしたり…」

 「『自分が生きているこの時間は、体験者にとって最後の時かも知れない』という危機感がありました。今聞いて映像に残しておかないと遅れになってしまう。そんな思いでした」

   ◇    ◇

 私も記者として戦争体験者に話を聞くことがある。長年自問自答していることを大矢さんにも聞いた。

 -そもそも、戦争体験の継承はどうして必要なのでしょうか?

 「二度と同じ手段でだまされないように。これ以外にないと思います」

 「戦争の歴史は、国家と住民の関係性、軍隊の構造的暴力性、そして命令や集団に従う住民の弱さといった、いつの時代にも当てはまる普遍的問題を伝えています。負の歴史を学ぶことは、二度と同じ手段で国家に殺されないように、生活を奪われないように、知恵をつけることです

 「取材するたび、バトンを受け取る気持ちがします。相手から受け取ったバトンを持って、一生懸命走って書いて)、ゴール社会に伝える。私の記事や作品を見た人がまた誰かにバトンを渡す。そのリレーが続いていくことが継承なのかなと思っています」

 大矢さんが取材した住民のうち、すでに3人が亡くなり、3人が証言するのが困難になったという。

 日本の夏は、バトンの重みを感じる季節である。

 (特別論説委員・永田健
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http://www.labornetjp.org/news/2020/hon165

赤白抜き〔週刊 本の発見〕三上智恵『証言 沖縄スパイ戦史』

毎木曜掲載・第165回(2020/7/16)
過ちの記録こそ次の過ちを防ぐ地図になる
証言 沖縄スパイ戦史』(三上智恵、集英社新書、2020年2月刊、1700円)評者:志真秀弘

 1945年3月26日、米軍は慶良間諸島に、さらに4月1日沖縄本島に上陸し、陸軍第32軍との間で凄惨な地上戦が繰り返される。その結果民間人を含む20万人余りが亡くなり、6月23日牛島満司令官の自決によって沖縄を「本土決戦の捨て石」とする作戦は実際上終わる。が、本島北部にはすでに前年9月、スパイ養成を目的とする陸軍中野学校出身者が大本営より配属されていた。第32軍壊滅後も米軍を撹乱するために、徴兵前の15歳から17歳の地元の少年たちを主力に遊撃隊を組織する任務がかれらに与えられた。第一護郷隊(正式名称は第三遊撃隊、村上治夫隊長)は今帰仁村、名護町などの出身者610名、第二護郷隊(第四遊撃隊、岩波壽隊長)は国頭村、大宜味村などの出身者388名からなった。

 映画『沖縄スパイ戦史』(2018年、三上智恵大矢英代共同監督)は埋もれていたこのもう一つの沖縄戦を証言によって描き、大きな衝撃をあたえた。

 本書は、これに新たな少年兵の証言、軍が全国に遊撃隊を展開しようとしていたことを明かす証言、さらにその後判明した住民虐殺の真相なども加わり、読むものの魂を揺さぶる。

 本書は「少年ゲリラ兵たち」の証言から始まる。

 彼ら21人の証言のどれからも戦場となった村の空気、そこで生活する人たちの呼吸、そして一人ひとりの戦後の人生が伝わってくる。

     (*映画『沖縄スパイ戦史』より)

 たとえば1929年生まれの「リョーコー二等兵」こと端慶山良光(ずけやま・よしみつ)さんの証言。戦場で頬に手榴弾の破片を受け傷病兵になる。同じ傷病兵の友人は足手纏いになるからと軍医が射殺する。彼も逃げる途中殺して置いていくと仲間に言われるが、半死半生で生まれた村にたどり着く。が、村に帰ったあと戦争PTSDを発症。村内で暴れ回るために座敷牢に閉じ込められるなど「兵隊幽霊」と呼ばれ苦しむ。が、五十歳を超えてキリスト教の洗礼を受け、信仰に助けられPTSDを克服する。いま彼は一人で暮らす。「沖縄戦のこと忘れたら、また地獄がきますよって。僕は…桜の木を七十歳から植えはじめたんですよ。緋寒桜七十本あまり、…英霊ですね、沖縄戦でなくなった若い人たちの。…これを見てみんなに沖縄戦思い出してもらって。」が、かれに国による補償は何もない。護郷隊は秘密組織だから兵歴とみなさないという「理屈」のようだ。

 当時22、3歳だった村上、そして岩波二人の隊長への敬愛の念を隊員たちは異口同音に語っている。二人とも隊員には暴力を振るわず、生き延びることを指示した。それがゲリラ部隊の基本とも言えるが、それは二人がマニュアル通りに努めたというのとは違う。隊員の誰にとってもかれらは優しく、そして人格者であった。が、同時に戦闘のプロつまり敵を殺すプロだった。その両面が彼らにはあった。

 戦後、村上は沖縄へ家族共々慰霊のために毎年のように足を運んだ。そして最後は車椅子に乗って参列し、「もうわんわん、子供のようにね、顔を崩して」人前も構わず泣きじゃくったという。かれが抱えた戦場の闇はそれほど深かったのだろうと著者は書いている。村上は勇猛なゲリラ隊長であって、91人もの部下を死なせた末に生き延びた。その罪を抱えてかれも戦後を生きなければならなかった。そこに浮かび上がるのは沖縄戦の、ひいては戦争そのものの罪深さだ。

 後半の「スパイ虐殺の証言」「虐殺者たちの肖像」の二つの章が、複雑極まりない過程を丹念に捉えて明らかにしているのも、沖縄の地上戦が強いた戦場犯罪の構造と言える。だからこそこれらのことは、不問に付していいことでは決してない。

 「負の歴史こそが、本物の、騙されない強い未来を引き寄せてくれる力につながるということを、この人たちが私に信じさせてくれた」と著者三上智恵は書いている。

 著者の執念がこの本の力を産んだ。本書こそ2020年ベストワンと言い切っておきたい。一人でも多くの人がぜひとも本書を手にとってほしい。

*「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美・根岸恵子、ほかです。
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●相も変わらず大量検査せず…《政府は人々を犠牲にして「国難」を乗り切る集団免疫路線をとっていると思わざるをえない》(小倉利丸さん)

2020年05月02日 00時00分50秒 | Weblog

[※ 「こんな人たち」 報道特集(2017年7月8日)↑]



レイバーネットの書評【〔週刊 本の発見〕軽々しく五輪に乗ってはいけない!~『反東京オリンピック宣言』】(http://www.labornetjp.org/news/2020/hon155)。
日刊ゲンダイの記事【新規感染者数より刮目 日本と東京が陥る“高”陽性率の恐怖】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/272435)。

 《4年前のブラジルリオ五輪開催時に狙いを定めて出版された17名の執筆者による編著。東京2020五輪の問題を考えるうえでとても参考になる。収束不能な原発事故を起こしたこの国の首相が、軽々しくアンダーコントロールを騙り復興五輪を看板に掲げる人災五輪。国が決めたことに「どうせやるなら」派が軽々しくノッてしまう社会の空気って、なに? 国が招致した複合災害オリンピックに「未必の故意」の共犯者として私たちが動員されないためのストッパーとして、この本が出版されたことに感謝》。
 《新型コロナウイルスの新規感染者数の推移に疑問の声が上がっている。国内は11日の743人、累計感染者数が最大の東京都は17日の201人をピークに漸減傾向。感染拡大が抑制されているかのようだが、陽性率は高止まりしている。欧州が7%未満、韓国が3%ほどなのに対し、日本は約8・7%東京は約12・3%。市中感染が広がり、無症状感染者が増加している可能性が高い》。

 金(カネ)色の五つの輪なんて要らない。1年後に開催なんて無理でしょ? 今すぐに、中止し、COVID19対策に人員・資材・金銭を集中すべき。いまや、味をしめたアベ様や小池百合子「ト」知事らは、COVID19にも《アンダーコントロール》演出で時間を空費。《非常に多くの陽性者を見逃している可能性が高い》…大量検査・追跡・隔離していないわけですから、市中は恐ろしいことになっているはずです。
 日刊スポーツのコラム【政界地獄耳/WHO事務局長に踊らされた東京五輪】(https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202004250000138.html)によると、《結論は出たのではないか。IOC、WHO、東京五輪組織委員会、東京都、日本政府は早急に中止を宣言し、五輪予算を組み替え、コロナ禍に使うべきだ。終息後の経済復興の予算計上ばかりに気を使う政府だが、今そこにある危機を乗り越えてからの話を今する必要はない》。

   『●《WHOは「検査、検査、検査、疑わしければすべて検査。そして、
      隔離」と強調》…以降、ニッポンは何をやっていたか? 《賭け》?
   『●大量検査・隔離・追跡、さらに、地域のサンプリング検査が必要…
     アベ様や小池「ト」知事は、この数カ月、一体何をやってきたのか?

 週刊朝日のコラム【室井佑月の「嗚呼、仰ってますが。」/もう中止すれば…大勢の命より大切な祭りなんてあるかいっ】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/272345)によると、《「安倍晋三首相が…日本が負担することに同意した」(…IOC)…今はコロナ禍で大変で、前線に立つ医療従事者に特別報酬を与えないと可哀想。てか、永遠の2週間、終わりのない自粛期間で、生活ができなくなっている人もいるのではないか? お金が底をつき、死を身近に感じている人もいるだろう。みんな、そういうところに税金を使って欲しいよな。アレはどうしてこういう勝手なことをするんでしょうかね? …自分たちの夢が五輪招致であるのなら、自分たちの金を使えばいいだろ。大勢の命より大切な、祭りなんてあるかいっ。》

 日刊スポーツのコラム【政界地獄耳/問われるのは5月6日以降の戦略だ】(https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202004240000038.html)によると、《★官邸のそれと違い、先手先手で明確に「命を守る行動」を訴えた都知事・小池百合子の評価が高い…そこに選挙を目前に控えた選挙モードの顔がちらつくことも承知で小池百合子ここにありを強くアピールしている》。
 このコラムは頂けない…。酷い。「ト」知事の《評価が高い》!? どこ見てんだ?? 院内感染ひた隠しの小池「ト」知事が見えていない! 小池「ト」知事による院内感染人災、その責任をとるべきだ。大量検査もしない…。

   『●<それにつけてもアベ様の無能さよ>…大量検査・隔離・追跡、
        さらに、地域のサンプリング検査…どれ一つ出来ないアベ様ら

 レイバーネットの記事【政府は人々を犠牲にして「集団免疫路線」をとっているのか?~小倉利丸ブログ】(http://www.labornetjp.org/news/2020/1587793189355staff01)によると、《日本政府は人々を犠牲にして「国難」を乗り切る集団免疫路線をとっていると思わざるをえない日本の検査数の少なさをどう判断するか―低コスト高リスクの集団免疫路線としか思えない。文字通りの野放しではなく、調整しつつ感染を拡大させるという綱渡りをしようとしているのではないか。この2週間ほどは引き締めへと向っているようにみえる一方で、政府は網羅的な検査へと転換しようとはしていないことの意味を見過すことはできない。なぜ検査しないのか? 自分の身体がどのような状態にあるのかを知りたいというときに、知るために必要な検査を拒否する権限がなぜ保健所にあるのか。日本政府がとっている対応は、口では感染拡大防止を強調して、そのための外出自粛をなかば道徳的に脅かしながら、実際の対応は、感染拡大を事実上容認しているとしか思えない。その理由は・最も感染リスクの高い医療関係者への検査が実施されていない》。
 《文字通りの野放しではなく、調整しつつ感染を拡大させるという綱渡りをしようとしているのではないか》…いや、そんな高度な発想ではない。《野放し》に近い。クルーズ船対応の際も、無為無策でした。アベ様らが恣意的だとしたら、恐ろしい無能な「集団免疫路線」…異常で、過剰な被害が弱者へと…。そして、《最も感染リスクの高い医療関係者への検査が実施されていない》ことなどから、既に大量の院内感染人災が発生。それに口をつぐむ小池「ト」知事。《評価が高い》なんて、冗談ではない。

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http://www.labornetjp.org/news/2020/hon155

〔週刊 本の発見〕『反東京オリンピック宣言』

週刊 本の発見 毎木曜掲載・第155回(2020/4/23)
軽々しく五輪に乗ってはいけない!
『反東京オリンピック宣言』(航思社、2016年、小笠原博毅・山本敦久 編、2200円+税)評者:柏原康晴

 4年前のブラジルリオ五輪開催時に狙いを定めて出版された17名の執筆者による編著。東京2020五輪の問題を考えるうえでとても参考になる。

 収束不能な原発事故を起こしたこの国の首相が、軽々しくアンダーコントロールを騙り復興五輪を看板に掲げる人災五輪。国が決めたことに「どうせやるなら」派が軽々しくノッてしまう社会の空気って、なに? 国が招致した複合災害オリンピックに「未必の故意」の共犯者として私たちが動員されないためのストッパーとして、この本が出版されたことに感謝。

 第三部「運動の継承」では、これまで各国で開催された国際博覧会や五輪イベントで起きたむき出しの暴力について、それぞれ著者の視点で通底するものが語られている。「人類館事件」(注)で有名な1903年第五回内国勧業博覧会が、大阪日本橋周辺の木賃宿を解体して人々が「釜ヶ崎」へと叩き出された場所で行われた事には驚いた。(↓「人類館」の展示)

 時に五輪開催国は、メキシコ五輪前夜のような銃弾での大量虐殺さえ起こす。東京の都立公園の野宿者追い出しと霞ヶ丘アパートの解体も、一見ソフトな対応を装いながら真綿で首を絞める執行者の手口が、ずっと立ち会っていたふたりの若い語り部から痛々しく伝わる。

 わずか数日の祭りのために数百年単位で作られた自然環境を破壊、巨大な都市再開発の口実として企業へ土地超大安売り、建築規制の法令無視が常態化する様子も伝わる。

 この時点では近未来だった東京2020に向けて、第二部「レガシー」では石川義正が「リップサービスとしてのナショナリズム」を書いている。このポップな文体で締めくくりは単なる皮肉とも思えない。すでに私たちはポンコツで有害過ぎるテーマパークの共犯者だ。言い逃れなど出来ない。

 一部紹介しよう。
…もちろん「土人」に人権は不要である。私たちひとりひとりが「ディズニーランド」日本の「キャスト」として、「アニメランド」(小池百合子)日本のコスプレイヤーとして生きるのだ。(中略)2020年の東京オリンピック、さらにその後にやってくる日本の壊滅的な社会・経済状況にむけて、おそらくコールハースがいうように「歴史は茶番劇ではなく、サービスとして蘇る」はずだ。享楽の口実として再生する「日本らしさ」ーー天皇制、八紘一宇、七生報国、民族差別等々である。…

 第四部「アスリート」では、山本敦久が「アスリートたちの反オリンピック」と題して、ローマ五輪でモハメド・アリの選手としての苦悩と晩年の懐柔について書いている。メキシコ五輪陸上男子200m表彰台で見せたブラック・パワーの抗議(写真)。その後日談は日本で知られているのだろうか。3人のアスリートは最後まで身体で訴えたのだ。

(注)「人類館事件」=1903年に大阪・天王寺で開かれた第5回内国勧業博覧会の「学術人類館」において、アイヌ台湾高砂族(生蕃)・沖縄県(琉球人)・朝鮮(大韓帝国)・清国・インド・ジャワ・バルガリー(ベンガル)・トルコ・アフリカなど合計32名の人々が、民族衣装姿で一定の区域内に住みながら日常生活を見せる展示を行ったところ、沖縄県と清国が自分たちの展示に抗議し、問題となった事件である。


〔付記〕この本の筆者の多く、集団的に作られています。それによって内容が多角的に論じられています。そのため、あえて以下に目次と筆者を紹介します。

●巻頭言
イメージとフレーム―五輪ファシズムを迎え撃つために(鵜飼哲)

●第一部 科学者/科学論
私のオリンピック反対論―スポーツはもはやオリンピックを必要としない(池内了)
災害資本主義の只中での忘却への圧力―非常事態政治と平常性バイアス(塚原東吾)

●第二部 レガシー
先取りされた未来の憂鬱―東京二〇二〇年オリンピックとレガシープラン(阿部潔)
「リップサービス」としてのナショナリズム(石川義正)

●第三部 運動の継承
メガ・イヴェントはメディアの祝福をうけながら空転する(酒井隆史)
貧富の戦争がはじまる―オリンピックとジェントリフィケーションをめぐって(原口剛)
オリンピックと生活の闘い(小川てつオ)
反オリンピック(ジュールズ・ボイコフ)
祝賀資本主義に対抗する市民の力(鈴木直文)
ありがとう、でももう結構―オリンピック協約の贈与と負債(フィル・コーエン)
トラックの裏側―オリンピックの生政治とレガシー・ビジネス、そして効果研究(友常勉)

●第四部 アスリート
競技場に闘技が入場するとき(小泉義之)
アスリートたちの反オリンピック(山本敦久)
なぜ僕がいまだにオリンピックを憎んでいるのか(テリエ・ハーコンセン)

●反東京オリンピック宣言―あとがきにかえて(小笠原博毅)


*「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美、根岸恵子、杜海樹、ほかです。
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https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/272435

新規感染者数より刮目 日本と東京が陥る“高”陽性率の恐怖
2020/04/26 06:00

     (発信はお手盛り(C)日刊ゲンダイ)

 新型コロナウイルスの新規感染者数の推移に疑問の声が上がっている。国内は11日の743人、累計感染者数が最大の東京都は17日の201人をピークに漸減傾向。感染拡大が抑制されているかのようだが、陽性率は高止まりしている。欧州が7%未満、韓国が3%ほどなのに対し、日本は約8・7%東京は約12・3%。市中感染が広がり、無症状感染者が増加している可能性が高い。パンデミックとなった欧州では、陽性率が7%を超えると死者数が増えたとの分析があり、むしろ状況は危うい。

 都のデータをめぐり、京大iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授がホームページで〈注目すべきは検査件数に対する陽性者の割合(陽性率)〉と指摘。こう続けていた。

〈2月は3%、3月になって4%、7%と増加し、3月末には18%に急増、4月は中旬まで19%を維持しています。検査件数には、同じ人に複数検査した件数も含まれているという事ですので、実際の陽性率はさらに高いと考えられます。これは危険領域です。非常に多くの陽性者を見逃している可能性が高いと推定されます〉

 都の検査件数は16日の1498件をピークに減少傾向。日本全体では安倍首相が6日に「1日当たりの実施可能数を2万件に増やす」と胸を張ったものの、いまだ数千件水準にとどまっている

 山野美容芸術短大客員教授の中原英臣氏(感染症学)はこう言う。

「日本は一貫してPCR検査件数が少なく、新型コロナの統計データは議論の叩き台としては不十分ですし、信用もできない。岡江久美子さんの急逝は気の毒でなりません。昨年末に初期の乳がんで手術し、今年1月末から2月半ばまで放射線治療を受けていたとなると、免疫力も体力も相当落ちている。そうした中で発熱し、医師の指示に従って自宅待機したところ、容体が急変して緊急入院し、ようやく受けたPCR検査で陽性と判明したといいます。明らかに感染を疑う事例なのに、しゃくし定規に待たせる日本のシステムは訳が分からない。医療事故と言っていいと思います。こうしたデタラメが感染を拡大し、実態を見えなくする要因になっている。都内の特定地域で無作為に1000人ずつ選び、PCR検査と免疫検査を速やかに実施し、実態把握に努めるべきです」


■7%超で死者2割増

 千葉大大学院の樋坂章博教授(病態検査学)らの研究グループが初期の感染拡大の程度が近い欧米各国の検査状況と死者数の関係を比較したところ、陽性率7%未満の国はそれ以上の国に比べ、死者数を1~2割に抑えられていることが分かったという。早く手を打たなければ、救命の機会をみすみす逃すことになる。
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●《「なぜこんな世の中になってしまったのか」とあって、その文字に重なるようにして「今だけ 自分だけ 金だけ」》

2019年09月06日 00時00分08秒 | Weblog

[※ 「こんな人たち」 報道特集(2017年7月8日)↑]



志真秀弘氏による、レーバーネットの書評【〔週刊 本の発見〕「成長している」という嘘を暴く〜金子勝『平成経済 衰退の本質』】(http://www.labornetjp.org/news/2019/0815hon)。
日刊スポーツのコラム【政界地獄耳/北に鈍感…今は韓国が敵!?】(https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201908260000109.html)。
日刊ゲンダイのコラム【斎藤貴男 二極化・格差社会の真相/安倍政権がやりたいのはただひとつ「差別」ではないのか】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/260895/3)。

 《過去30年の日本経済を分析・総括して、「成長している」というこのを暴いている。たとえばGDPひとつとっても1995年をピークに日本は停滞、アメリカは95年に日本の1.4倍だったのが17年には約4倍、中国は95年に日本の7分の1だったのが17年には日本の2.5倍である。日本企業は1989年に世界50社ランキング中32社(yahooファイナンス)であったのが、2019年ではトヨタ1社のみ(ダイヤモンド社)である》。
 《★約2年前の9月25日、首相・安倍晋三は官邸で会見し、臨時国会の冒頭に衆議院の解散に踏み切ることを表明。北朝鮮が連日のようにミサイル実験を続け緊張が続く中、首相はこの解散を「国難突破解散」と位置付け、「国民の皆様は北朝鮮の度重なる挑発に関しまして大きな不安を持っておられることと思います。…北朝鮮問題への対応について国民に問いたい」とまで語った。…今は韓国が敵で北朝鮮は友好国か》。
 《見ていて目を覆いたくなるのは、この問題を語る時の政権首脳らの面相が、どうにも卑しくてならないことだ。…こんなものは外交でも何でもない。それをまたマスコミ、特にテレビのワイドショーがはやし立てる。過去の過ちなど何もなかったと開き直る、いわゆる“歴史戦”の毒が、官民一体のコラボで日本中に回ってしまった。安倍政権がやりたいのはただひとつ、「差別」ではないのか。…安倍政権における“国家安全保障”とは、どこまでも「戦争ごっこ」であるらしい》。

   『●《経済の素人》ても分かる《無理筋な政策》…
      バ「ズ」ーカたちによるドアホノミクスの《虚像と実像》

 「ズ」抜けたバ「ズ」ーカたちのドアホノミクス(©浜矩子さん)…永遠の道半ば。《「成長している」というこの》。
 2017年10月衆院選に際し、アベ様は「国難突破解散」を宣託。《「国民の皆様は北朝鮮の度重なる挑発に関しまして大きな不安を持っておられることと思います。政府として、いついかなるときであろうとも危機管理に全力を尽くし、国民の生命と財産を守り抜く。むしろ私は、こういう時期にこそ選挙を行うことによって、北朝鮮問題への対応について国民に問いたい」とまで語った》…。《安倍首相という「国難」を突破》するはずが…キトのおかげで…。それら積み重なった「ツケ」が、いま現在のこの無残な有様。日韓関係の、振り上げた拳をお互いが下げられない無残な姿。《今は韓国が敵で北朝鮮は友好国か》。

 《日本は差別を外交に優先》《安倍政権がやりたいのはただひとつ、「差別」ではないのか。…安倍政権における“国家安全保障”とは、どこまでも「戦争ごっこ」であるらしい》。ひたすら醜悪だ…。

   『●《平和なアジアという井戸…先人の掘った井戸の水を
     濁らせている》人々…企画展「表現の不自由展・その後」を破壊
   『●《KKK…20世紀になり移民全体を敵視する組織として復活》
              …《偏狭な世界のその先に何を見るのか。》
   『●中曽根康弘元首相や「産経のドン」故・鹿内信隆氏らは、
      あの時、何をしていたのか? …《検閲国家》へと一歩一歩
   『●外交音痴な害遊・害交のアベ様ら…《互いの利益を
      考えながら、全身全霊で相手に対峙》したことなんてあるの?
   『●青木理さん《ちょっと冷静になって、
     ちょっと中長期的に考えたら、日韓共に得なことがひとつもない》
   『●《テレビマンも新聞記者も…あなた方が近年、
     国民を政権の意向通りに操ることしかしていないことの罪深さを…》


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http://www.labornetjp.org/news/2019/0815hon

〔週刊 本の発見〕金子勝『平成経済 衰退の本質』
毎木曜掲載・第122回(2019/8/15)

「成長している」という嘘を暴く
『平成経済 衰退の本質』(金子勝、岩波新書、820円、2019年4月刊)/評者:志真秀弘

 8月15日は終戦の日ではなく、やはり敗戦の日である。政府やマスコミが「終戦」と言い慣わしている間に、日本が侵略戦争を起こし連合国に敗北した歴史まで消されかねない。正確に認識することは、歴史であれ、現状であれ大切なことだ。今も日本経済はデフレを脱却して成長軌道に乗りつつあるなどという言説が、まことしやかに流されている。本書は、過去30年の日本経済を分析・総括して、「成長している」というこの嘘を暴いている。

 たとえばGDPひとつとっても1995年をピークに日本は停滞、アメリカは95年に日本の1.4倍だったのが17年には約4倍、中国は95年に日本の7分の1だったのが17年には日本の2.5倍である。日本企業は1989年に世界50社ランキング中32社(yahooファイナンス)であったのが、2019年ではトヨタ1社のみ(ダイヤモンド社)である(手持ち資料による)。産業の衰退はこの数字からもうなずける。他方農業をみても販売農家は05年の265万から15年の132万に半減し、農業従事者は60歳以上が77パーセントで10年後の見通しが立たない。労働者の4割は非正規であり、世帯の平均所得も90年代半ばをピークに下がったままである。「成長」どころかやはり「衰退」だろう。本書は日本経済のこの現状を、世界的な視野からも捉えようとしている。

 この30年間、資本主義は大きく変わった。その特徴はグローバリゼーションと「金融革新」である。グローバリゼーションを著者は「情報通信技術と結びついた金融自由化を軸に展開されたもの」と定義している。実体経済以上に金融が肥大化して、過剰ドルが世界をめぐり、投機対象となった国々を金融危機に陥れる。変質した資本主義はバブルを作り出し、それの破綻を繰り返す「バブル循環」をもたらしている。その結果2008年に「100年に一度」(グリーンスパン)と言われるリーマンショックが引き起こされ、資本主義は長期にわたる停滞の時代に入りつつある。それがトランプに代表される極右・ナショナリズムを登場させている。日本の現状はこの資本主義の変容の産物でもある。

    (*「安倍やめろ!」国会前集会で訴える著者(2018年4月))

 では、日本の政治はどう対応してきたか。1991年に始まるバブル崩壊後の過程を覆ったのは「新自由主義」イデオロギーで、市場原理任せの無責任政治が横行したと著者は厳しく批判する。小泉・竹中の政策が今日の「格差」の源であることは付け加えるまでもない。そして新自由主義イデオロギーと自己責任論によって人々を縛り、無力感に追い込んだのが第二次安倍政権だった。アベノミクスはデフレ脱却どころか、むしろ危機を広げている。超低金利政策によって、日銀の保有する資産が異常に膨らみ、国債市場、株式市場は麻痺しかねない。といってこの異常な政策に企業も依存している状態でやめることができない。もし金融危機が来たら日銀の抱える国債やETFなどの資産は巨大な損失と化す。現在の日本が抱える問題を解き明かそうとした本書は、コンパクトであって、しかも、読み応えのある力作評論である。


 二点付け加えておきたい。タイトルだが経済情勢が「平成」で区切られるとは思わない。が、バブル崩壊後あるいは社会主義崩壊後30年という意味ではひとつの区切りだろう。帯にインパクトがある。シャッター通りと化した商店街の写真の脇に「なぜこんな世の中になってしまったのか」とあって、その文字に重なるようにして「今だけ 自分だけ 金だけ」とある。

*「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美、根岸恵子ほかです。
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https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201908260000109.html

コラム
政界地獄耳
2019年8月26日7時33分
北に鈍感…今は韓国が敵!?

★22日、韓国政府が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を発表すると、北朝鮮は間髪入れず24日に弾道ミサイル発射実験を実施。翌25日には北朝鮮の国営朝鮮中央通信社(KCNA)が金正恩朝鮮労働党委員長が「超大型多連装ロケット砲」の実験を指揮したと伝えた。まさにGSOMIA破棄は北朝鮮に利すると言えそうだ。

★約2年前の9月25日、首相・安倍晋三は官邸で会見し、臨時国会の冒頭に衆議院の解散に踏み切ることを表明。北朝鮮が連日のようにミサイル実験を続け緊張が続く中、首相はこの解散を「国難突破解散」と位置付け、「国民の皆様は北朝鮮の度重なる挑発に関しまして大きな不安を持っておられることと思います。政府として、いついかなるときであろうとも危機管理に全力を尽くし、国民の生命と財産を守り抜く。むしろ私は、こういう時期にこそ選挙を行うことによって、北朝鮮問題への対応について国民に問いたい」とまで語った。

★首相は今ではミサイルが発射されてもゴルフに興じているが当時、学校などではミサイル攻撃に避難訓練が行われ、その会見直前の15日には北朝鮮によるミサイル発射でJアラートなる全国瞬時警報システムが発動された。その対応のために購入するとしたイージス・アショアの設置が計画されている秋田の自民党衆院議員、冨樫博之(秋田1区)までもが「防衛省の説明が誠意を欠いた。もうダメだとはっきり言ってある。前に進めることはできない」とインタビューに答えているという。一方、25日、日本政府は韓国軍が島根県の竹島で軍事訓練を始めたことに対して、「極めて遺憾であり訓練の中止を求める」と抗議した。今は韓国が敵で北朝鮮は友好国か。(K)※敬称略
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https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/260895/3

斎藤貴男 ジャーナリスト
1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「戦争経済大国」(河出書房新社)、「日本が壊れていく」(ちくま新書)、「『明治礼賛』の正体」(岩波ブックレット)など著書多数。

二極化・格差社会の真相
安倍政権がやりたいのはただひとつ「差別」ではないのか
2019/08/28 06:00

     (GSOMIAの破棄とほぼ同時に「竹島」で防衛訓練を始めた
       韓国海軍の特殊部隊/(韓国海軍提供・共同))

 いよいよ末期症状である。日本は差別を外交に優先し、その報いで手痛いしっぺ返しを食らった。

 韓国にGSOMIA(軍事情報包括保護協定)を一方的に破棄された。大変なことである……はずなのだ。北朝鮮の軍事情報が、彼らを最もよく知る国から直接には入ってこなくなるのだから。

 もともと韓国では日本とのGSOMIAに反対の世論が強い。一度は署名寸前で延期され、2016年に朴槿恵前大統領が締結を強行した経緯もある。当時は野党だった文在寅政権が今回の措置に踏み切る流れは、自然の成り行きでもあった。

 最近の対立の契機は、昨秋の韓国最高裁判決だった。戦時中の徴用工をめぐる裁判で、新日鉄住金(現日本製鉄)と三菱重工業が相次いで賠償を命じられた。1965年の「日韓請求権協定」が個人の請求権まで消滅させたとは言えず、91年8月27日の参院予算委員会でも外務省の柳井俊二条約局長(後に外務事務次官)がそう答弁しているのに、日本政府は「解決済みだ」の一点張り。

 騒動を商取引の領域にまで拡大したやり方は、“どっちもどっち”ではあった。見ていて目を覆いたくなるのは、この問題を語る時の政権首脳らの面相が、どうにも卑しくてならないことだ。

 頭ごなしに相手の責任だけをあげつらうことさらに冷笑してみせ、かと思えば恫喝じみた態度を取る

 「よりよい解決策を」と切り出した駐日大使を「無礼だ!」と怒鳴りつけた7月の河野太郎外相など、弱いくせにほえたがるチンピラ以外の何物でもなかった。こんなものは外交でも何でもない。それをまたマスコミ、特にテレビのワイドショーがはやし立てる過去の過ちなど何もなかったと開き直る、いわゆる“歴史戦”の毒が、官民一体のコラボで日本中に回ってしまった。

 安倍政権がやりたいのはただひとつ、「差別」ではないのか。さすがは“明治150年”。朝鮮半島や中国の人々を蔑むことイコール愛国心とされ、帝国主義への原動力とした近代史を、彼らはまたしても繰り返そうとして、肝心の情報ルートを絶たれてしまうというド醜態。

 困った政府やマスコミが、救いの手を米国に求めているのも恥ずかしく、おぞましい。ポンペオ国務長官が「失望した」と言ったの、ワシントン・ポスト紙が「最大の勝者は北朝鮮」と書いたのと、こんな時まで植民地根性丸出しとは。安倍政権における“国家安全保障”とは、どこまでも「戦争ごっこ」であるらしい。
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●『ダンダリン 労働基準監督官』…「世界中の人間が「白」だと言っても、カラスはやっぱり「黒い」です」!

2019年08月08日 00時00分40秒 | Weblog

[※ 「こんな人たち」 報道特集(2017年7月8日)↑]

 

レイバーネットの志真秀弘氏によるコラム【〔週刊 本の発見〕行動こそ「呪い」を解く〜上西充子『呪いの言葉の解きかた』】(http://www.labornetjp.org/news/2019/0711hon)。

 《「嫌なら辞めれば」は、お定まりの「呪いの言葉」。『ダンダリン 労働基準監督官』(脚本・秦建日子、日本テレビ2013年)は、名ばかり管理職、内定切り、外国人労働者の劣悪な待遇などを一話一テーマで描いたドラマ。本書で紹介されるのは主人公の監督官・段田凛が、ブラック企業のファミレスチェーンで自発的と言う名目で残業代逃れの強制研修が行われていたことを突き止め、若い社員と店長とが協力して改善させるストーリー。(志真秀弘)》。

   『●「私の妻や友人が関わってきた」と自ら暴露… 
       「2017年2月17日はアベ様のタンカ記念日」実行せよ!
    「GIGI[ギギ。グッド・イメージ・ゴルフ委員会]も大喜びだろう。それにしても、
     ご飯論法としても、あまりの支離滅裂ぶり」

   『●行政府の長の滅茶苦茶話法が取巻き連中や官僚に波及
             …《言葉がまともに通用しない政治が、国民に…》
    《言葉の海へ 第35回:「安倍話法」は「安倍内閣共通話法」になった鈴木耕
     … 「ご飯論法」というのが話題になっている。こういうこと。
       「朝ご飯は食べたでしょ?」と聞かれると「いいえ、ご飯は食べていません
     と答える。つまり「“ご飯”は食べていませんパンは食べたのですが)」と、
     平然と言う官僚たちの論法のことだ。この「ご飯論法」は、上西充子法政大学
     教授が、厚労省の労働調査のデタラメデータを批判して使ったことで、
     一躍有名になった》

   『●映画『新聞記者』はMotive Forceに…
     参院選、「2/4」の眠り猫な皆さんを投票所へ〝駆動〟させる力へと
    《「選挙に行っても仕方ない」「どうせ、何も変わらない」なんて言っている
     場合ではないです。そんな「呪いの言葉」(上西充子さん)から解き放たれて
     ほしい。選挙に行かなければ変わらない。眠り猫な「2/4」の皆さんの
     半分とは言いません(投票率25%アップ)、せめて1/4の方
     (投票率12.5%アップ)、今度こそ、投票所へ足を運びませんか。
     もちろん投票先は野党へ…与党自公・癒着党お維なんて以ての外》

 《「嫌なら辞めれば」は、お定まりの「呪いの言葉」》。「ご飯論法」につづく、上西充子さんの御言葉が「呪いの言葉」。騙されてはいけない。

 コラムの中に出てくる『ダンダリン 労働基準監督官』、大好きでした。「世界中の人間が「白」だと言っても、カラスはやっぱり「黒い」です」! 

   『●カラスはやっぱり「黒い」: 「アベ様のNHK」的
       「政府が白というものを黒とは言えない」で良いのか?
    「NHK籾井会長の「迷言」、「政府が右というものを左とは言えない」に続き、
     「正式な政府のスタンス、政府のきちっとした方針の下での報道をしましょう
     とのこと。情けなき「牙無き」メディア。でも、ダンダリンさん曰く
     「世界中の人間が「白」だと言っても、カラスはやっぱり「黒い」です」!!
     (『ダンダリン 労働基準監督官第8話』14年11月20日)。 
     「アベ様のNHK」的な「政府が白というものを黒とは言えない」で良いとは
     思えません、ジャーナリストには「カラスはやっぱり「黒い」」と言ってほしい」

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http://www.labornetjp.org/news/2019/0711hon

〔週刊 本の発見〕『呪いの言葉の解きかた
毎木曜掲載・第117回(2019/7/11)

行動こそ「呪い」を解く
呪いの言葉の解きかた
上西充子、晶文社、1600円、2019年5月刊)/評者:志真秀弘

 言葉は大きな力を持つ。どこの誰がいつどこでどんな意図でその言葉を使っているのか、が問題なのだ。悪意があれば「呪いの言葉」と化す。「呪いの言葉」がどんな背景から出てきたのか、著者はそれと同じ土俵に登るな私たちの思考と行動をもっと伸びやかにしようと語り出す。著者自身も困難に直面し、一緒に考えているような臨場感に富む語りに思わず引き込まれる。労働、ジェンダー、政治の各章で「呪いの言葉」の解きかたが描かれ、伸びやかな生き方の可能性が示唆される。

 「嫌なら辞めれば」は、お定まりの「呪いの言葉」。『ダンダリン 労働基準監督官』(脚本・秦建日子、日本テレビ2013年)は、名ばかり管理職、内定切り、外国人労働者の劣悪な待遇などを一話一テーマで描いたドラマ。本書で紹介されるのは主人公の監督官・段田凛が、ブラック企業のファミレスチェーンで自発的と言う名目で残業代逃れの強制研修が行われていたことを突き止め、若い社員と店長とが協力して改善させるストーリー。「やれ、休む権利だとか、それでも時給を上げてほしいだとか そんなことばっかり言ってるバカを、あなたがたお役所が甘やかすから 日本はこんなにもバカばっかりの国になったんです」と嘯く社長。いかにもいそうで、しかもありそうな話。若い社員と店長はどうやってこの呪縛を解き、職場を変えるか。その過程がストーリーの平板な要約ではなく、緊迫感溢れる新しい物語のように描かれる。当事者が声を上げること、それが大切と著者は強調する。

 著者はこの『ダンダリン 労働基準監督官』に始まり、ドラマ、コミック、映画などから、セリフを取り出して、その意味を際立たせる術を心得ている。コミック『逃げるは恥だが役にたつ』(海野つなみ)、『しんきらり』(やまだ紫)、映画『サンドラの週末』(ダルデンヌ兄弟)、『わたしはダニエル・ブレイク』(ケン・ローチ)などいくつもの作品から、労働をめぐる言葉だけでなく、ジェンダー、さらに政治をめぐる「呪いの言葉」の所在を指摘し、著者はそれを解いていく。しかも呪いに閉じ込められない「湧き水の言葉」も見つけ出してくれる。読んでいくうちに「あっ、そんな言葉があったのか」と新しい発見がある。読むものを励まし、解き放ってくれる言葉に出会うことができる

 それができるのは著者が行動のひとだからだ。街頭で国会中継を見せる〈国会パブリックビューイング/写真〉の提唱者なのはすでに知られている。それを実現する経過も本書で詳しく知ることができる。公共空間は私たちのもの、街頭行動は言論の自由表現の自由を路上で実現することだと道路使用許可などとらない。車道や私有地の許可は必要だが公共空間は不要と。その通りだが勇気はいる。そうして著者は組合活動家や市民運動家はじめ多くの人たちと協力して活動する。大学の研究室とみんなの広場の往復から、本書の生き生きとした言葉は生まれた。呪いの言葉を解くことは、みんなで生きること、そのためには行動こそ欠かせない


(付記:今回は渡辺照子さんの担当ですが、いま渡辺さんは参議院選挙に立候補し、活動中です。彼女推薦の本書は、7月6日のレイバーブッククラブで取り上げられました。そこでの討論をもとに今回は志真秀弘が代わって執筆しました。)

*「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美、根岸恵子ほかです。
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●構造調整という名の奈落: 「エコノミック・ヒットマン…巨額の貸付金によって途上国を債務漬けにし…」

2018年07月13日 00時00分17秒 | Weblog


レイバーネット(http://www.labornetjp.org/)のコラム【〔週刊 本の発見〕『エコノミック・ヒットマン ― 途上国を食い物にするアメリカ』/なぜ世界はかくも怒りに満ちているのか?】(http://www.labornetjp.org/news/2018/0628hon)。書評者は、菊池恵介氏。

 《巨額の貸付金によって途上国を債務漬けにし、アメリカが思いのままに操れる状況を作り出すことだ》。

 不勉強にも、《エコノミック・ヒットマン》(an Economic Hit Man)という言葉を初めて知りました。
 以下は、【「水」戦争の世紀 (“Blue Gold”) 、集英社新書、p.149】よりのメモ。

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 
  “構造調整” = 新規融資のための行政改革要求 [ニカラグア・タンザニアなど]
    ・公務員の削減と公共サービスの民営化
    ・貿易・投資・金融の自由化
    ・輸出換金作物の栽培奨励や天然資源輸出制限の撤廃など

                     [自由化・民営化・規制
                           緩和・輸出志向型経済]

     負債解消のための輸出依拠型経済 
       →  輸出の増加 (限定された種類の産品になりがち)
         →  価格下落 + 借金返済による収入減少 
           →  未払い + 利子増大 → 負債の増大
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

 《ほぼ例外なく債務不履行に陥る。そうなると、著者が「コーポレートクラシー」と呼ぶ一群のアクター(大企業、政府、世界銀行、IMFなど)が登場し、「マフィアと同じく、厳しい代償を求める》…。《コーポレートクラシー》とは、「企業独占主義 (corporatocracy: コーポレートクラシー)」(http://kaleido11.blog111.fc2.com/blog-entry-2356.html)、あるいは、「コーポレートクラシーとは、上の旗に掲げられているようなアメリカの多国籍企業が実質的にアメリカの政治を支配し、ひいては世界を支配していることを説明する言葉」(http://bougainvillea330.blog.fc2.com/blog-entry-356.html)だそうです。
 「構造調整」という名の奈落。民営化私企業化)・規制緩和市場原理…泥沼。

   『●IMFと世界銀行: ワシントンコンセンサス、
               ブレトンウッズ体制を支えるもの達
    「消費税増税を促すような口出しまでされて(口出しするよう外圧を
     加えさせて?)、何も感じない? 消費税増税で我が国も不幸の
     どん底になり、IMFや世銀のおかげで不幸になった国の一例になる
     のかもしれない。
       「小さな政府」という幻想を振りまく竹中平蔵氏が
     元・大阪〝ト〟知事のバックに、ブレインに。と~ってもお似合いだ。
     彼らが、大阪市民・府民や日本の国民のことなど何も考えていないこと
     がよく分かるよ」

   『●世界の潮流に周回遅れで水道私企業化の亡国…
       「15年までに再公営化を決断した自治体は世界で180」


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http://www.labornetjp.org/news/2018/0628hon

〔週刊 本の発見〕『エコノミック・ヒットマン途上国を食い物にするアメリカ
毎木曜掲載・第63回(2018/6/28)

なぜ世界はかくも怒りに満ちているのか?
●ジョン・パーキンス『エコノミック・ヒットマン ― 途上国を食い物にするアメリカ』(古草秀子訳、東洋経済、2007)/評者:菊池恵介

 本書は、長年、国際開発のエキスパートとして現代史の裏舞台で活躍してきた人物の告白の書である(原題:Confessions of an Economic Hit Man)。著者のジョン・パーキンスは、表向きにはコンサルティング会社のエコノミストとして途上国の開発計画に携わってきたが、裏では「エコノミック・ヒットマンEHM」と呼ばれる秘密の任務に従事してきた。それは、巨額の貸付金によって途上国を債務漬けにし、アメリカが思いのままに操れる状況を作り出すことだ

 1971年に、アメリカ国家安全保障局(NSA)の試験を26歳で合格したパーキンスは、メイン社という大手コンサルティング会社に入社する。そこで「エコノミック・ヒットマン(EHM)」としての手ほどきを、クローディンと名乗る女性工作員から受けた後、インドネシア、パナマ、エクアドル、コロンビア、サウジアラビア、イランといった国々に送り込まれていく。いずれもアメリカの世界戦略において重要な地政学的位置を占める国々ばかりだ。現地での彼の任務は、巨大な開発プロジェクトを策定し、世界銀行やアメリカ国際開発庁(USAIDS)の融資を取り付けることだった。

 「マフィア組織のヒットマンと同じく、EHMもまずは恩恵を施す。それは発電プラントや高速道路、港湾施設、空港、工業団地などのインフラ整備を建設するための融資という形をとる融資の条件は、そうしたプロジェクトの建設をアメリカの企業に請け負わせることだ。要するに、資金の大半はアメリカから流出しない。単にワシントンの銀行のオフィスから、ニューヨークやヒューストンやサンフランシスコのエンジニアリング会社に送金されるだけの話だ」(18-19頁)。

 エコノミック・ヒットマンとしての任務が成功すると、巨額な対外債務を負った途上国はまもなく利払いに行き詰まり、数年後にはほぼ例外なく債務不履行に陥る。そうなると、著者が「コーポレートクラシー」と呼ぶ一群のアクター(大企業、政府、世界銀行IMFなど)が登場し、「マフィアと同じく、厳しい代償を求める。代償はさまざまな形をとる。たとえば、国連での投票権の操作、軍事基地の設置、石油やパナマ運河などの貴重な資源へのアクセス」などだ。こうして債務の罠に陥った途上国は政治的・経済的にコントロールできるようになるというのである。

 その典型的な国の一つが、南米のエクアドルである。1960年代末に、アマゾン川流域で石油が発見され、その採掘事業が開始されると、現地の有力者はまんまと国際金融機関の術中にはまった。彼らは石油から得られると約束された収入をあてに、巨額の貸付金を受け取り、道路、工業団地、水力発電のダム、通信システム、送電線などを全国に建設した。その結果、石油採掘の利権を握る少数のエリートが潤う一方、莫大な対外債務の利払いにより、先住民をはじめとする国民の大半は困窮していった

 「この美しい国を破壊するのに自分が果たした役割をあらためて考えれば、いくら悔やんでも悔やみきれない。私や仲間のEHMのせいで、今日のエクアドルは、現代的な経済構造や銀行やエンジニアリング技術がもたらす数々の「奇跡」が導入される以前よりも、はるかに悪い状況に陥っている。1970年代以降、「石油ブーム」と婉曲的に呼ばれる期間に、生活困窮者の割合を示す公式な貧困線は50パーセントから70パーセントへと、不完全就業者および失業者の割合は15パーセントから70パーセントへと大きく上昇し、国家の負債は2億4000万ドルから160億ドルに増加した。その一方で、最貧層のために配分される国家予算の割合は20パーセントから6パーセントへと減少した。今日では、エクアドルは負債の支払いのためだけに国家予算のほぼ半分をつぎ込まなければならなくなっている

 残念ながら、エクアドルはほんの一例である。私たちEHMが世界帝国の傘下に引き入れた国々は、ほぼ例外なく同じような運命に苦しんでいる。第三世界の債務は2兆5000億ドル以上にも膨れ上がり、利息だけでも2004年の時点で年間3750億ドル以上にものぼる。この数字は第三世界の国々が公衆衛生や教育に支出する金額の増額を超えており、発展途上国への対外援助の年額の20倍にものぼる(21頁)」。

 「エクアドルの雨林か算出する原油100ドル当たり、石油会社の取り分は75ドルだ。残りの25ドルのうち、4分の3は対外債務の返済にあてられる。4分の1の大半は軍備をはじめとする政府支出に使われ、公衆衛生や教育や貧しい人々を援助するための計画に使われる資金は2.5ドルほどしか残らない。つまり、アマゾンから100ドル分の石油が奪い取られるたびに、もっとも金を必要としている人々、ダム建設や石油掘削やパイプラインで居住地を破壊され、食料や飲料水の欠乏から死に瀕している人々のところへ届くのは、わずか3ドル以下なのだ。そうした人々はすべて――エクアドルだけで数百万人、全世界では数十億人にものぼる――テロリストと化す可能性を秘めている。それは彼らが共産主義や無政府主義を信奉しているからでも本質的に悪人であるからでもなくひたすら現状に絶望しているからである(23-24頁)」。

     (*「デモクラシー・ナウ!」に出演するジョン・パーキンス氏。番組はこちら


https://youtu.be/v8Xsz62O-fU

 それでは、有能なエコノミック・ヒットマンとして成り上がった著者が、なぜ開発政策の舞台裏について告白するにいたったのか。そこには、大きく二つの要因が見て取れる。一つは、現地の人々と交流するなかで、年々罪悪感が膨らんできたことだ。もともとエクアドルでのボランティアをきっかけに国際開発の世界に足を踏み入れた著者は、EHMとなって途上国を「債務の罠」に陥れる一方、現地の人々の言葉を覚え、友情関係を育んでしまう「どっちつかずの人間」であった。それゆえ、アメリカの偽善に対する民衆の本音に戸惑い、しばしば弁明を強いられる状況に置かれてきた。だがどんなに言い訳を重ねたところで、自己嫌悪の念は払拭できず、その感情は年々高まるばかりだった。

 もう一つは、出世のために「魂を売った」自分とは対極的な生き方を選択し、暗殺された二人の政治指導者との出会いだ。その一人は、パナマのオマール・トリホス将軍。もう一人は、エクアドルのハイメ・ロルドス大統領である。「両者ともに、世界の巨大勢力に勇敢に立ち向かった。トリホスはパナマ運河を取り戻したいと願い、ロルドスは世界有数の石油企業から自国の天然資源を守るため強固な愛国主義の立場を貫いた。ロルドスもトリホスも共産主義者ではなかったが、自国の運命を決める権利は自分たちの手にあると考えていた」(235頁)。だが、まさにそれゆえに大企業やアメリカ政府にとっては脅威であり、取り除くべき存在だった。コンゴのルムンバ、チリのアジェンデ、ブルキナファソのサンカラなど、コーポレートクラシーとの癒着や汚職を拒んだ第三世界の指導者大半は短命に終わったが、それは偶然ではない。もしエコノミック・ヒットマンが失敗すれば、ジャッカルと呼ばれる刺客が放たれ、さらにジャッカルが失敗すれば、軍事介入という古いモデルが復活するからである。

 これらの経験を経て、著者は1980年にメイン社を辞職するが、その後も開発コンサルティング業からなかなか足を洗えなかった。マイアミに豪邸を構え、フロリダ湾をヨットで周遊し、顧問として高給を受け取る暮らしは、容易に手放せるものではなかった。そんな彼にとって最終的な引導となったのが、2001年9月のニューヨーク同時多発テロである。事件の二か月後、焼け焦げた残骸が散乱し、人肉の腐臭が漂うグラウンド・ゼロに立ったパーキンスは、アメリカ帝国の偽善に対する世界の激しい怒りに震撼する。一般の多くのアメリカ人にとって、テロは平和な日常を脅かす理不尽な出来事かもしれないが、毎日2万4000人の人々が飢餓のために死んでいる世界帝国の建設に従事してきた著者には、あまりにも多くの心当たりがあった。「アメリカの平和」こそ、南北間における構造的暴力の産物なのである。

 2004年に刊行された本書は、アメリカで巨大な反響を呼び、オルター・グローバリゼーション運動を背景に世界的ベストセラーとなった。それと前後するように、ラテンアメリカでは左派政権が次々に誕生し、アメリカとの対決姿勢を鮮明にしていった。とりわけエクアドルでは、2006年にラファエル・コレアが大統領に当選し、「不当債務」の帳消しを求めるなど、画期的な変化が見られた。一方、アメリカの軍事介入を被った中東では、戦争の廃墟の中から「イスラム国」が台頭し、シャルリー・エブド事件パリ同時多発テロなど、世界を絶えざるテロリズムの脅威にさらすようになった。なぜ世界はかくも激しい怒りに満ちているのか。「テロとの戦い」などを語る前に、もう一度、その原因について考えてみる必要があるだろう。ここに、その重要な手がかりがある。

*「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美・佐藤灯・金塚荒夫ほかです。
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●ガジュマル:瀬長亀次郎さん「不屈」の精神…「忖度政治を危ぶむ全国の多くの人々の心に響くに違いない」

2017年09月08日 00時00分15秒 | Weblog


レイバーネットのコラム【〔週刊 本の発見〕 『ペンとカメラ――時代と生きる』】(http://www.labornetjp.org/news/2017/0720hon)と、
【<木下昌明の映画の部屋>●佐古忠彦監督『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』 瀬長亀次郎にみる沖縄の戦後史】(http://www.labornetjp.org/news/2017/0822eiga)。
琉球新報のコラム【<金口木舌>全国に響くカメジローの生きざま】(https://ryukyushimpo.jp/column/entry-565720.html)。

 《本書は木下昌明の7冊目の批評集…文字通り、身を挺して書く。その仕事のとりあえずの集大成が、本書である。これを読まずに、3・11以後の今を語ることはできない》。
 《以前に「筑紫哲也NEWS23」のキャスターを務めた佐古忠彦が監督し、TBSテレビが制作…瀬長は戦後一貫して米国の沖縄支配とたたかった人物》。
 《映画はガジュマルの映像から始まった。その木のように倒れない男の話だ。彼は、選挙で倒した“敵”を「ガジュマルの木陰で休ませ、同じガジュマルになれと説得し、民主主義を嵐から守る態勢を取ろう」と呼び掛けた…瀬長亀次郎…▼瀬長氏にとってガジュマルは民主主義のとりでであり、分断を克服する場でもあった。「敵/味方」「右/左」「沖縄/本土」などの分断や溝に「不屈」の精神で挑んだ生きざまは、“忖度政治”を危ぶむ全国の多くの人々の心に響くに違いない》。


   『●多分、アベ様は沖縄で三度敗れる・・・・・・
                踏みにじられる沖縄の民意
    《全てを失った沖縄戦から70年のできごと。伊江島で土地を
     守るために戦った阿波根昌鴻さんから、米軍の統治の横暴さに
     抵抗して投獄された瀬長亀次郎さんから、脈々とこの島で
     生きるものたちが受け継いできたもの

   『●「不屈」…「瀬長の口、耳、目を封じることはできても、
        八十万県民の五官の機能をとめることは不可能だ」

 琉球新報の記事【「カメジロー」盛況 東京上映、初日立ち見も】(https://ryukyushimpo.jp/news/entry-563683.html)によると、《米統治下の圧政に不屈の精神で抗議する姿勢を貫いた瀬長亀次郎さんのドキュメンタリー「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー」(佐古忠彦監督)…佐古監督は「瀬長さんの生きざまを通して沖縄の戦後史を知っていただくだけでなく、今の日本の在り方と照らしていろんなことに気付いてほしい」…。舞台には瀬長さんの次女・内村千尋さんも登壇し「右の人、左の人関係なく、父の生きざまに感銘を受けたとおっしゃってくれる人が多いが、父が亡くなってから調べるうちにすごさが分かった。父が頑張れたのは祖母から受けた愛情の影響が大きい」と話した。名護市辺野古の新基地建設などについて触れ「沖縄は今、大変なことが起きている。学習会や討論会を開いて沖縄のことを知ってほしい」と求めた》。

 木下昌明さんの批評集について、《著者にとって、映画は絵空事ではない。なぐさみの対象でもない。映画館は、彼にとって、生き方を示唆してくれる場所なのだ》。木下昌明さん、《いまがふんばりどきなのだ》。その木下昌明さんの『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』についての映画評の結び、《映画は、瀬長の「不屈」の精神が、今でもガジュマルのように根をはっていることを教えてくれる》。

   『●「自由新聞(フライエ プレッセ)!」と「下足番」新聞:
                  主犯の「A」(A夫妻)が抜けている
    「レイバーネットの映画コラム【<木下昌明の映画の部屋>
     戦争の裏側を描く2本の映画~『空と風と星の詩人~尹東柱の生涯』
     『ヒトラーへの285枚の葉書』】…《夫妻に一人息子の戦死の報が
     届くところから始まる。二人はそっけない軍事郵便に騙された
     と絶望するものの後の祭り…。ヒトラー政権が台頭するとき、
     市民がみな反対していれば、誰もが一人一人捕らえられて
     死んでいくことはなかった。…ドイツの独狼さん…
     「黙るのは罪、行動するのは義務」…。いまがふんばりどきなのだ》」


 瀬長亀次郎さんから《受け継いできたもの》は《不屈》《一人のヒーローではなく人々の結集》。森を殺すこと、海を殺すこと、番犬様の基地の押し付け、《大規模な自衛隊とミサイル基地の配備》、《統合エアシーバトル構想》…人々は分断されることなく、《不屈》に《結集》するしかない、ガジュマルの様に。《沖縄に自生するガジュマルは何本もの細い幹を束ねたようにして一本の大木となっている。これを「どんな嵐にも倒れない、沖縄そのもの」…映画は、瀬長の「不屈」の精神が、今でもガジュマルのように根をはっていることを教えてくれる》。
 「本土」は見て見ぬ振りすることなく、この腐敗したアベ様政権を一日も早く倒さなければ、ニッポンは御終い。《瀬長氏にとってガジュマルは民主主義のとりでであり、分断を克服する場でもあった。「敵/味方」「右/左」「沖縄/本土」などの分断や溝に「不屈」の精神で挑んだ生きざまは、“忖度(そんたく)政治”を危ぶむ全国の多くの人々の心に響くに違いない》。

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http://www.labornetjp.org/news/2017/0720hon

〔週刊 本の発見〕 『ペンとカメラ――時代と生きる』
第1~第4木曜掲載・第14回(2017/7/20)

第14回 身を挺して書く
●『ペンとカメラ――時代と生きる』(木下昌明 績文堂 2017年6月刊 1800円)/評者=志真秀弘

 わたしは、信州の山家育ちだが、行きつけだった床屋のおじさんが、西部劇の話をしてくれたのを覚えている。ストーリーは忘れたが、ジョン・ウエイン、バート・ランカスター、アラン・ラッド、ゲーリー・クーパー、ヘンリー・フォンダなどなどの名演ぶりを想像した。田舎だったから映画館に気安くいくことはできない。そんな子供の私に、おじさんの話はわくわくする体験だった。

 本書は、そんな映画体験を文章によって味あわせてくれる。

 たとえば、「ジンネマン映画の魅力」を読もう。1934年、ナチス支配下のベルリンで反ファシズムと闘う幼なじみのユダヤ人富豪の娘ジュリアの要請に応じてアメリカ人作家リリアンが、パリから列車でベルリンに向かう。緊張感に耐えるリリアンの姿に、『真昼の決闘』の保安官や、『日曜日にはネズミを殺せ』の元ゲリラ隊長の緊張した内面が重なる。「逃げたくとも逃げずに耐えていく」生き方に、ファシズムに立ち向かう時代の精神のあり様を著者はみる。リリアン・ヘルマンは、赤狩りの時代に非米活動委員会議長宛てに良心を流行に合わせて裁断することはできないと手紙を送った。彼女の精神のありかは、映画の「へっぴり腰ではあれ、臆病をきらった」リリアンのそれとおなじだった。「私もリリアンのように生きたい」と著者は結ぶ。

 著者にとって、映画は絵空事ではない。なぐさみの対象でもない。映画館は、彼にとって、生き方を示唆してくれる場所なのだ。

 「南京事件 誰が虐殺を命じたか?」は、『ジョン・ラーベ――南京のシンドラー』をとりあげる。これは、「娯楽大作」だが、日本では右翼を恐れて劇場公開できなかった。この映画を木下は、ラーベの日記、当時の記録映画『南京』、中国映画『南京1937』、武藤章中将の遺著、日本テレビのドキュメント『南京事件 兵士たちの遺言』、レイバーネットTVの小野賢二の証言などによりながら、緊迫感に充ちた語りで、虐殺の責任者が誰かを明らかにする。一本の映画を、これだけ歴史的・実証的に解明し、問題の所在を摘出する映画批評を書くのは、もはや著者を置いてないのではないか。が、それだけではない。「私たちは、侵略戦争を克服できているのか」。みずからの生き方に結び付けて著者はそう問う。彼の本を読み、「深く生きよう」とフクシマ陽太郎が書く所以だろう。

 「親しいのになぜ憎しみ合うのか」は、映画『無頼無法の徒さぶ』のなかで、親しいからこそ憎しみが噴出する人間関係の不条理を、書いている。初め、わたしは、不条理を指摘するだけに留まっているのかと勘違いした。再読して、著者が、優劣や競争を越えた人間の関係を描こうとしていることに気づき、中野重治の詩「その人たち」をふと思い出した。「サヤ豆を育てたことについてかって風が誇らなかったように/また船を浮かべたことについてかって水が求めなかったように」の2行の思想に連なる著者の考えに感動した。

 本書は木下昌明の7冊目の批評集だが、前著『〈いのち〉を食う』と本書とで、彼の批評は、命と時代と世界をとらえて、それまでの仕事を超えた。彼の対象は、すでに映画に留まっていない。〈Ⅰ カメラは行動する〉で、ビデオカメラを手に、毎週金曜日国会前集会に赴く。〈Ⅳ 芸術運動――先駆者たちの仕事〉では、彼を育てた芸術運動の人と歴史とを再構成して自らの批評の生い立ちを証してみせた。文字通り、身を挺して書く。その仕事のとりあえずの集大成が、本書である。これを読まずに、3・11以後の今を語ることはできない。

*「週刊 本の発見」は毎週木曜日(第1~第4)に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美です。
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http://www.labornetjp.org/news/2017/0822eiga

木下昌明の映画の部屋>
●佐古忠彦監督『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』
瀬長亀次郎にみる沖縄の戦後史

 沖縄に自生するガジュマルは何本もの細い幹を束ねたようにして一本の大木となっている。これを「どんな嵐にも倒れない、沖縄そのもの」と愛した男がいた。その大木のシーンから『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』が始まる。

 男とは戦中、毎日新聞那覇支局の記者を務め、戦後はうるま新報(現・琉球新報)社長に就任、人民党結成に参加し、那覇市長となった瀬長亀次郎(1907~2001年)のこと。沖縄が日本に復帰する2年前から、初の衆院議員として国会でも活躍した。彼の波乱にとんだ生涯を、以前に「筑紫哲也 NEWS23」のキャスターを務めた佐古忠彦が監督し、TBSテレビが制作したのが本作。

 映画は、テレビ局ならではの豊富な資料映像が使われ、本人の生前の貴重なインタビューをはじめ、彼とかかわった人々の証言を重ねている。瀬長は戦後一貫して米国の沖縄支配とたたかった人物で、彼を介して沖縄の知られざる戦後史も浮かび上がってくる。

 なかでも、その人となりを表す一枚の写真が目に焼きつく。それは琉球政府創立式典時のもの。全員が脱帽して起立しているのに、彼は一番後ろで着帽したまま腰かけている。創立の署名欄にも一人だけ捺印(なついん)していない。瀬長によると「米軍に占領された」ままの政府でしかなかったからだ、と。これ以降、米軍は彼を敵視し、刑務所に送り込む。その折に起きた囚人暴動で瀬長のとった行動が面白い。

 また、彼が結成に参加した人民党は人権を高く掲げた「ポツダム宣言」を基にしたものというのにも驚かされる。

 彼の行くところ、何万人もの人々が押しかけ、「瀬長一人が叫んだなら50メートル先まで聞こえる。ここに集まった人たちが声をそろえて叫べば………」の有名な文句は人々の心をわしづかみしたという。

 映画は、瀬長の「不屈」の精神が、今でもガジュマルのように根をはっていることを教えてくれる。(『サンデー毎日』2017年8月20・27日号)

※8月26日より東京・ユーロスペース他全国順次公開
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https://ryukyushimpo.jp/column/entry-565720.html

<金口木舌>全国に響くカメジローの生きざま
2017年8月31日 06:00

 映画はガジュマルの映像から始まった。その木のように倒れない男の話だ。彼は、選挙で倒した“敵”を「ガジュマルの木陰で休ませ、同じガジュマルになれと説得し、民主主義を嵐から守る態勢を取ろう」と呼び掛けた

米統治下の圧政に抵抗した政治家瀬長亀次郎氏を描いた記録映画「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー」が好評だ。那覇市の桜坂劇場では長蛇の列ができ、東京でも連日満員だ

佐古忠彦監督は東京での舞台あいさつで沖縄と本土の「溝」に言及した。その大きな理由は、本土の人々の認識の中から「沖縄戦後史がすっぽり抜け落ちている」ことだと

▼本土のテレビのニュースで基地問題は瞬間の事象しか伝えない。このため、なぜ県民が声を上げているのかが伝わっていないと言う。「瀬長氏の生きざまを通して戦後史を知れば、その理由が分かる

▼「弾圧は抵抗を呼ぶ/抵抗は友を呼ぶ」。瀬長氏の言葉や行動に、沖縄における今の闘いの原点が凝縮されている。佐古氏はそれを知ることで、沖縄との溝が少しでも埋まるよう願った

▼瀬長氏にとってガジュマルは民主主義のとりでであり、分断を克服する場でもあった。「敵/味方」「右/左」「沖縄/本土」などの分断や溝に「不屈」の精神で挑んだ生きざまは、“忖度(そんたく)政治を危ぶむ全国の多くの人々の心に響くに違いない
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