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愛する人 2009年 アメリカ

2015-01-31 | ヒューマン・ドラマ
薄くはられた氷の表と裏にあるふたつの人生。
もろく、いつ割れてしまうか、そんな危うさを抱えながら生きているふたつの人生。
母と娘。
ふたりの人生は、永遠に平行線のままだった。
交わることのない、それぞれの人生。

37才のエリザベスは優秀な弁護士として自立していた。
その母カレンは、親を介護しながら働いていた。
母娘は一度も顔を合わせたことがない。
お互いの存在も、今どこでどうしているのかも知らない。
カレンは14才で娘を産み、直後、その子は養子に出された。
今のいままで、お互いを探そうとはしなかったが、カレンはずっと見ぬ娘に日記を書き続けていた。

気難しやのカレンも職場結婚し、愛する家族もできて柔和になった。
そうした環境の変化もあってか、娘の所在を知りたいと思うようになる。
一方、エリザベスも新しい命を宿し母となる自覚が芽生え、実の母を探そうと思い立つ。

アネット・ベニングとナオミ・ワッツ。
二人の演技が素晴らしい。
同様に、この作品の繊細さに心打たれる。
薄氷をかざして見るようである。
ロドリゴ・ガルシア監督は、なぜこんなにも巧いのか。
ワッツが美しかった。
妊婦姿は、実際に彼女自身が妊娠中に撮影されたそうで、前半の部分は産後に撮られたようである。
どうりで美しいはずだ。
女性は、産後美しくなるというが、それは本当だと思う。
上司との食事のシーンなんて輝いていたし。

作中の大事な要素ともなっている養子縁組については、日本も他人ごとではない。
先進国では里親が主流となっているが、日本では、乳児院や施設がほとんど。
司法が介入する規定がある米国と、児童相談所でまかなう日本との大差には驚く。