アブリコのCinema散策

のんびり映画でも観ませんか

譜めくりの女 2006年 フランス

2009-05-20 | ミステリー&サスペンス
復讐とは、仕返しをすること。
復讐といっても、本作品の主人公メラニーの恨みのはらし方は極めて陰湿。

少女メラニーは、翌日にピアノの試験を控えていた。
自信はそこそこ。
もし落ちたら、ピアノはもう弾かないと言う。
父はそれでも続けたらいい、と言ってくれてはいた。

試験当日。
滑らかに鍵盤をはじくメラニー。
ところが試験の最中に、審査員の一人が無断で入ってきた女性に平然とサインをしてやっていたのである。
さっきは「忙しい」と断っていたのに。
それに気づいたメラニーは、集中力が散漫となり、ミスが続いてしまう。
悲観した彼女は、自宅のピアノに鍵をかける。
永久にピアノを葬ってしまうかのように・・・

短大を卒業したメラニーは、弁護士事務所で研修生として働くことに。
そこの上司であるジャンの家では、しばらくシッターが休暇をとるらしく、その代わりを探していた。
メラニーは自ら、「わたしでよければ」と申し出る。

駅でジャンの妻と息子を待つメラニー。
やがて迎えに来た夫人は、メラニーのピアノの道を断たせた、あの時の審査員であった。
表情ひとつ変えないメラニー。
彼女はこのことを知っててこの家に入り込んだのか。
それとも単なる偶然か。

夫人は優しく、ピアニストである自分の譜めくりを依頼するほどメラニーを信頼した。
譜をめくる役というのは、シンプルそうでいて、実は大変重要な仕事である。
演奏者との呼吸が合わないと、演奏にも打撃を与えてしまうことになる。
それほどの役目をメラニーに、彼女はしたのである。

あたかも相手を思いやっているかのように見せかけ、反面じわじわと、夫人もその家庭も崩壊させていこうとするメラニーの執拗さにはヒヤリとする。
思い込みも頑固さも人一倍であるメラニーは、100%他人(ひと)のせいにしてしまう傾向が強すぎたのかもしれない。