埼玉県高校・障害児学校教職員「九条の会」

教え子をふたたび戦場に送らないために

新たな教科書攻撃の特徴について

2021-11-16 15:53:37 | 意見交流

 前菅内閣は2021年4月27日に教科書の歴史用語について次のような閣議決定を行った。「従軍慰安婦」という用語は、軍により「強制連行」されたという「誤解を招くおそれ」があるので、単に「慰安婦」とする。また、戦時中に朝鮮半島から日本本土に動員された徴用工については「強制的に連行された」などとするのは、「募集」、「官斡旋」など様々な経緯があり不適切、「徴用」という用語がふさわしい。

 文科省は、この閣議決定の内容を各教科書会社に説明し、「訂正申請」を促した結果、教科書会社7社が高校の地歴・公民39点と中学社会2点の記述を閣議決定の趣旨に応じて訂正を申請し、文科省がこれを承認するという結果になった。

 この「従軍慰安婦」と朝鮮人強制連行については、90年代以来「新しい歴史教科書をつくる会」など右派勢力が繰り返し攻撃してきた問題だが、すでに学問的に決着がついている事柄である。

 今回の教科書攻撃の特徴の一つは、2014年安倍政権のもとで一部改定された検定基準「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例が存在する場合」それに基づいて記述するという項目を利用して、特定の歴史用語の使用を制限するという政治介入を行ったという点である。

 また、今回の閣議決定が日本維新の会の議員の質問に対する答弁として行われている点にも注目したい。今回の衆議院選挙で大幅に議席を伸ばした「維新」は、来年の参議院選挙の際に憲法改正の国民投票をするべきだと主張している。この改憲煽動勢力「維新」が自民党と結託して教科書攻撃に乗り出してきたのである。教科書攻撃で「実績」を積んだ「維新」が日本会議など右派勢力と結んで自民党とともに憲法を攻撃してくる危険性は十分にある。

 日本軍「慰安婦」と徴用工の問題は、現在の日韓関係対立の焦点になっている歴史問題である。その根底には日本の朝鮮植民地支配に対する歴史認識の隔たりがある。今、韓国では文在寅大統領の次の大統領選挙が始まっている。日本のマスコミは、次の大統領の対日批判の強弱(根本は歴史認識なのだが)が今後の日韓関係を左右するといった面ばかりに注目し、日本政府の歴史認識については触れようとしない。

 自民党と「維新」による今回の教科書攻撃は、日韓関係の焦点になっている歴史認識について、日本は解決に向けて韓国に譲歩しない、話し合うつもりもない、韓国側が折れなければ関係改善はないというメッセージであることも見逃すべきではない。

                   (現日朝協会埼玉県連会長 関原正裕)


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